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マンションの保存行為、管理行為、軽微変更、重大変更【区分所有法】

民法による共有物の変更等はこちら

 マンションの共用部分は区分所有者全員の共有物であるが、建物であるため管理していかないと劣化していくだけである。共用部分を管理するために民法による管理を行うことにすると、スロープ設置など形状を変更するだけで全員の同意が必要となり、多数の区分所有者で構成されるマンションにおいては、その合意形成だけでかなり苦労する。

 共用部分の管理方法は民法の特則法としての区分所有法で定められている。具体的には区分所有法第17条、第18条に書かれている。

(共用部分の変更)
第17条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

(共用部分の管理)
第18条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

 第17条第1項の共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)とあるが、カッコ内の「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」とは難しい法律的言い回しである。その形状又は効用の著しい変更を伴わない変更はこの第17条第1項からは除かれる。この項で当てはまるのは「その形状又は効用の著しい変更」にあたる変更行為である。その形状又は効用の著しい変更を伴わない変更を一般的に『軽微変更』といい、軽微変更を除く変更行為を『重大変更』という。

 さて、その重大変更をするためには第17条第1項に書かれている通り、集会で区分所有者の4分の3以上かつ議決権の4分の3以上の賛成による決議によって決することになる。ちなみに、区分所有者及び議決権の4分の3以上を要件とする集会決議のことを特別多数決議と一般的に呼ばれる。重大変更は特別多数決議で行うことができる、ということである。

 第18条第1項により、軽微変更は集会の決議であるが、ここでの決議要件は区分所有者と議決権の過半数である(第39条)。集会の決議要件が過半数の決議を普通決議と呼ぶ。軽微変更は普通決議で行えるということ。保存行為は各区分所有者単独で行える。

 では、管理行為であるが、第18条第1項では、第17条の重大変更を除く管理となっており、これだと管理には重大変更が含まれる。しかし、第18条第4項で損害保険締結は管理に関する事項となっており、ここでの管理の決議要件が分かりづらいが、管理には変更行為を含む広義の管理と変更行為を含まない狭義の管理行為に分かれる。保険締結などは狭義の管理行為にも含まれ普通決議になる。

 まとめると
重大変更行為
→特別多数決議 規約で区分所有者数を過半数まで減らせる
軽微変更行為
→普通決議 規約で別段の定め可
狭義の管理行為
→普通決議 規約で別段の定め可
保存行為
→各区分所有者 規約で別段の定め可
※変更や管理に関する事項の決議が専有部分の使用に特別な影響を与える時は同意が必要。
となる。

 処分行為に関しては、区分所有法に規定がないため民法に従わなければならず、全員の同意が必要となる。

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