TOC研修の事例:京屋染物店
前回はTOC理論によってボトルネックを探し出し、ソフトウェアを導入したことで改革を果たしたという岩手県一関市の京屋染物店のお話をしました。
TOC理論はイスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラットの生み出したものです。
ものすご~く簡単に言うと
現状を把握して、問題を見える化して、その解決方法を考える。
これをチーム一丸となってやって行くというのがルール。
TOCを職場で活用することにより
・仕事の目的を共有することができる
・コミュニケーションが増える
・従業員が自発的に考え行動するようになる
・在庫が減少する
・残業が減少する
・利益が増える
良いことばかりですね^-^
それでは京屋染物店はどのように実践していったか、蜂谷社長のブログからまとめたものをご覧ください。
**************ここから
「2015年の2月からうちは変わりました。」
一関市にある京屋染物店の社長、蜂谷さんはそうおっしゃられました。
創業100年の和装染物店が挑んだ業務改善。徹底した業務課題の洗い出しと現場に合わせたシステム構築で創業以来最高の売上を達成しています。
そんな京屋染物店ですが改善前は社員に「仕事はきついし辛い。汚いし、先が見えないし、もうついていけません。」と言われていたそうです。ここからTOCの学びを生かしてサイボウズのkintoneで「全体最適」、つまり全体の視覚化をして業務の流れをよくすることから取り組みました。
良いモノは、豊かな人間性を持った職人が作り出す
半纏(法被)、浴衣、手拭、鯉口シャツ、股引などの祭衣装、和服のオーダーメイド、伝統芸能の衣装オリジナル製作、修理を通じ、日本の祭りを支える染物屋でありたい…京屋染物店の蜂谷悠介です。京屋染物店では、会社で働いているみんなの人生がより良く豊かになるための学びの場を定期的に開いています。
染物を通じて、お客様の幸せを実現するためには、作り手側も幸せでなければならないと考えているからです。
意志の強さ、思考の柔軟さ、視野の広さ
染物屋の仕事と言っても、半纏や浴衣を作る時と手拭を作る時では、仕事の流れは異なります。さらに、お客様からのご要望を実現させるオーダーメイドだからこそ柔軟性、多様性が求められます。そのため、京屋染物店の業務の中に「いつも通りの仕事をいつも通りにこなせば良い」という仕事は絶対に存在しません。毎日新たなチャレンジが待っている会社なのです。
そのため、仕事の流れ(半纏、法被、浴衣、手拭、暖簾などの製造工程)や他の部署の様子(デザイン、染め、縫製などの状況)を意識することは、とても大切なことだと思います。でも、それは分かっているけど、日々努めている目の前の仕事をしていると、全体の流れを意識するのは2の次3の次になりがちですよね。ましてや、他の部署の様子まで気にかけるなどそんな余裕は持てません。
ところが、TOC研修を全員で受けてからというもの、部署間の壁は無くなり、一人一人が日々「より良くあるため」の改善を行うようになりました。もちろん最初からうまくいったわけではありませんし、今も試行錯誤中ですが、明らかに変わったのは、部署を越えた協力体制が自然と出来上がり、全員で補い合える状態になっていることです。
1人の100歩より、100人の1歩
業務全体の流れを意識し、他部署との連携を密にしながら、自分の仕事に取り組んだ方が良いと分かっているのに、なぜそれができないのか。それは、目的の共有や真の協力による成功体験がないからだと思います。「自ら考え行動する」のと「誰かの指示で行動する」のでは、結果が違いますよね。自ら考え行動した結果、成功も失敗も自ら受け取ることが出来るのに対し、誰かの指示で行動してしまうと成功体験も失敗体験も他人事になってしまうことがあります。
「お客様に喜んで頂きたい!」という想いは、他人事思考の中には生まれません。お客様からお仕事を預かる全員が自分事思考だからこそ、「お客様に喜んで頂くためには」どうしたらよいか、チームで取り組み始めるのです。だから、京屋染物店では、「能力の高い人間が権限を持ち、会社を牽引するのではなく、全員の和で会社を底上げする」会社を目指しているのです。
チーム全員で会社を経営してみよう
京屋染物店では、TOC研修を2015年から取り入れ、一人1回以上(5回以上の経験者もいます)は必ず経験しています。それは、他人事思考ではいられない会社経営を業務フローへの意識とチームワークの観点も交えながら疑似体験できるからです。では、どんな事をやるのか。
みんなで楽しくゲームをします。
このゲームは全員で会社を経営するボードゲームみたいなものです。1卓6名が会社の仲間になり、各部署(工程1〜6)を任されます。企画担当、営業担当、製造担当、検品担当、出荷担当など。各部署や工程は、会社によって自由に想定できますよね。
工程1から6まで順番にチップ(材料、商品、受注案件など)を流して、お客様から頂いたご注文数量にお応えしていく。そして、最後に決算し、お客様に満足頂ける仕事ができたのか、会社は良くなったのかをチーム全員で検証します。(研修終了のときには全員が決算書の内容を理解できるようにもなります)
学び合う。助け合う。
私たちは、日本の誇りある文化を守り、お客様の笑顔を大切にするため、「日本の祭りを支える会社」になると決めました。お客様のご要望に丁寧にお応えしていくために、健全な経営のできる良い会社にする必要があります。そのためには、一人一人が自分で考え行動出来る判断基準や共通認識を持つことが大事です。
この研修では、講師は一切教えません。ゲームの中で、いろいろな会社の状況を想定しながら、みんなはどう考え、チームでどう行動するのかを実践して行きます。チーム内で教え合い、学び合う。すると、自分が任されている目の前の仕事ばかりを見て一人で頑張っていてもお客様のためにならないことに気付くのです。
私たちの仕事は総力によってしか成し得ることができません。全ての工程が繋がっているし、全ての工程がお客様の笑顔のために欠かせない工程です。だからこそ、誰であろうと分け隔てなく助け合う。では、何のために助け合うのか。それは、「お客様の幸せのため。自分たちの幸せのため。」そうするために、会社があり、仲間がいるのです。
2日間の研修の最後の〆は、私たちがフォーカス(集中)すべき業務を見つけ、改善するためにどう助け合ったら良いか話し合い、決めて行きます。この段階になると、みんなで活発に意見が交わされ、普段の仕事を整理して考えられるようになります。
そして、会社全体でお客様のご要望にお応えしているのだという事を自然と理解し、「協力し合うほうが、みんな幸せになれるね」と心の底から感じることができます。
全体の業務フローが完成すると、今やるべきことが浮き彫りになり、全員で意思決定できるので、社長が経営方針の演説をするより、よっぽど早く改善が進むし効果も出ます。だって、この場にいる全員が自分事思考なのですから。
京屋染物店で働いている仲間がより豊かで素敵な人生を過ごすために、人間性や価値観を磨くための環境を今後も作って行きたいと思っています。
日本の文化、祭りを支える職人集団は今日も切磋琢磨しています。
いかがでしたでしょうか?最後に改善の秘訣は
「最初に時間をかけること。」
「どんなにいいことを学んでも、どんなに夢があっても、目の前のことに追われていては何も進まない。だからTOCを最初にやって、捨てるものは捨てて、やめるものはやめて、時間を創れるようになった。これが大事なんですよ!」とおっしゃる蜂谷社長。
何かを学ぶ、全部足し算だからどんどん何もできなくなる。しかし引き算の手段を持つと、ジャンプするために一旦しゃがむように、ドーンと前へ飛び出せる。社内でTOCをしたことで、離れていた縫製と染めの現場が一緒になりすぐに話ができる体制になられました。以前は社長の指示がなくては動かなかったそうです。しかし今は現場が回るから営業に行けるようになったそうです。
京屋染物店はTOCを学び、TOCが共通言語になり、会社の流れを見える化でき、それにより業務改善が進み売上もアップすることができました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。みなさんの会社でも一度TOCを試してみることをお勧めします。売上を伸ばし、社員もいきいきと働ける職場を作ってみませんか?
京屋染物店は日々進化しています。社長のブログはこちら
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?