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Eugenの備忘録その33-7/23 英雄の苦悩と凋落!チョン・ミョンフン指揮東フィル《オテロ》

チョン・ミョンフン指揮東フィル定期
ヴェルディ:歌劇《オテロ》(演奏会形式)
(15時より、於Bunkamuraオーチャードホール)
オテロ:グレゴリー・クンデ
デズデーモナ:小林厚子
イアーゴ:ダリボール・イェニス
ロドヴィーコ:相沢 創
カッシオ:フランチェスコ・マルシーリア
エミーリア:中島郁子
ロデリーゴ:村上敏明
モンターノ:青山 貴
伝令:タン・ジュンボ
合唱:新国立劇場合唱団

 歌手陣は手堅い演技、オケは高水準の表現力で演奏会形式のオペラの長所がそのまま出た140分であった。
タイトルロールのクンデは第2幕以降の狼狽と苦悩の表情が色濃く、特に「私だけは自分から逃れられない」と言う悲嘆が突き刺さる。デズデーモナの小林は、第4幕の「柳の歌」の寂寞がハイライト。そして奸悪なイアーゴはイェニスが務め、こちらも第1幕の復讐の決意の苦々しさから第2幕のオテロへの唆し、第3幕の狡猾な立ち回りとこの劇の主役はイアーゴだ!と言わんばかりの存在感。他脇役ではエミーリアの中島が秀演。
 オケは第1幕の嵐での威力全開のトゥッティ(ピットに入っていない分、遺憾無く客席まで音を飛ばせる)から飛ばし、動機などを雄弁に語っており、「もうひとつの役」として、ストーリーを生き生きと進行させる。単にトゥッティが素晴らしいのみならず示唆に富むコーラングレや第1幕の後半のオテロとヒロインの二重唱のVc.の甘い導入や第3幕の出だしのVa.の不気味さ、など個々の楽器の好プレーも光る。弱音の緊張感にも長け、振幅の激しいドラマを繰り広げた。だが何と言っても合唱団も含めこれらを統率したチョンの素晴らしさにあるだろう。間合いを完全に体得しているため歌手もオケも不安なく音楽を展開できる。簡明で迷いのない指揮ぶりでこの欺瞞に呑み込まれる英雄のドラマを駆け抜けた。

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