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あの夏、いちばん静かな海

だらだらしていたら夜が来てしまいました。
小学生からの幼馴染と東京駅までランニングして久しぶりにリフレッシュできた一日でした。

今日はビートたけし監督作品の「あの夏、いちばん静かな海」について書こうと思います。あらすじよりも映画から香る空気感がとても大好きでした。

頻繁に登場する青色と耳が聞こえない恋人同士の関係性は観る者に純粋な若かりし頃の気持ちを与えてくれる。映画冒頭で映し出される青い海には白い旗が二本立っている。この旗は、主人公である茂と恋人である貴子を彷彿させる。二人は、耳が聞こえない。後ろから話しかけられても、車が後ろからクラクションを鳴らしても、耳からの情報は一切遮断されているため気づくことができない。そして、二人は会話をすることができない。それでも、二人だけの世界の中でお互いの存在を確かめながら生きている。広い海の中で、二本の旗だけが倒れずに立っている画と不自由な生活でも支え合いながら強く生きている二人の姿がリンクしている。また、茂を追いかけるようにいつも後ろを歩いている貴子の姿がとても愛おしい。サーフボードを片手に、半袖と短パンで海に向かう茂を心配そうな表情で見つめる貴子であるが、最終的には茂の頑張りを認め、服を丁寧にたたみながら浜辺で待っている。この描写から貴子が茂を信頼していることが読み取れる。
サーフィンと出会い、熱中していくことで茂と貴子は少しずつ、人との関わりを見つけていく。サーフィンショップの店員さんがウエットスーツを貸してくれたり、大会に誘ってくれたり、優しさに触れることで二人の表情は少しずつ晴れやかになってくる。また、浜辺で二人きりだったが、サーフィンを通して仲間ができた。最後にサーフィンショップの店員が大会後の二人を、車に乗せるシーンは心を温めてくれる描写である。
 この映画において北野武監督は芸人としてのセンスを忘れていない。所々でクスっと笑えてしまう演出が加えられている。茂を真似てサーフィンを始めたサッカー少年が寒がりながら裸で海に繰り出したり、茂が大会のエントリーシートに冗談を記入したり、大それたことではないが日常の中で起こり得そうな描写が散りばめられている。