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読書記録 #11-#20

2022年に読んだ本(雑誌)の記録。200冊までの歩みを残しています。

#11 「世界で勝てない日本企業 壊れた同盟」

カルロス・ゴーン事件。
2018年11月。破産寸前だった日産をV字回復させた立役者が、金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。当日の逮捕劇の様子、レバノンへの逃走の裏側にとどまらず、民間企業と政治との癒着など「世界で勝てない日本企業」の本質に迫ったルポルタージュ。


#12 「インターネット的」

糸井重里さんが、2001年に上梓した新書「インターネット的」。それが、発刊から十年を経て、「まるで、予言の書!」と再評価の声が高まる。これを受けて、書き下ろしの「続・インターネット的」を加筆し、文庫化したものが本書である。

最近は「Web3」とか「メタバース」がバズワード的になっており、メディアは毎日のように、それに関連するコンテンツを発信する。「先が見えない時代」だと世間を煽る。

そんな状況で、ふと「昔にも、時代の転換期みたいなものはあったはずで、そのとき当時の人はどんなことを考え、どういうふうに振る舞ったのだろうか」ということが気になり、いまさらながら本書を拝読した。

「これまで」についての理解を深めるとともに、「これから」との向き合いかたにもヒントを与えてくれる。そんな一冊。

”人とつながれる” ”乱反射的につながる” ”ソフトや距離を無限に圧縮できる” ”考えたことを熟成させずに出せる” などなど、人の想いが楽々と自由に無限に開放されてゆく空間。こういった「情報社会」に生きているぼくたちの身体や考え方、生き方は、どんどん、このようなインターネット的なものになっていると思います。

(プロローグ「なぜいま、インターネット的なのか」より)


#13 「聞く技術」

インタビュアーとして活躍されている宮本恵理子さん。20年にわたって「聞く」仕事に携ってきた著者が、2万5000人へのインタビューを経験するなかで培ってきた技術を惜しみなくさらけ出してくれている。話を聞くときの姿勢から、メモの取り方まで。実践的なノウハウを学ぶことができる。

1回目は「ふむふむ、なるほど」となり、Webサイト等で実際のインタビュー記事を読んでから再読すると、「あぁ、こういうことかぁ。。」ってなる。そんな実践書。


#14 「情弱すら騙せなくなったメディアの沈没」

テレビ業界を主軸に、我が国のメディア業態の輪郭を理解するための書。

昨年11月から総務省では、「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」が実施されている(2022年2月23日現在までで、計5回の実施)。同会議について、表向きの目的は「放送の将来像や放送制度の在り方について、中長期的な視点から検討を行うこと」とされているが、端的に言ってしまえば、そのテーマは「地方局の統廃合」についてである。

近い将来、この業界に小さくない変化が起きることは間違いない。

放送業界の歴史や商業形態に関して、体系的に把握する入門書として。


#15 「20歳の自分に受けさせたい文章講義」

世界的にベストセラーにもなった『嫌われる勇気』の共著者で、株式会社バトンズの代表を務める古賀史健さん。まだライターという職に出会う前の20歳の自分へ、「書くこと」の講義をするために書き著した本書。自分の思いを言葉で伝えるための技術や考え方が体系的にまとめられている。

昨年出版された「取材・執筆・推敲 書く人の教科書」とあわせて、これから何度も読み直すであろう書籍。

個人的にぼくは、できれば高校を卒業するまでの間に、遅くとも20歳までの間に、しっかりとした ”書く技術” を教える環境が必要だと思っている。道徳でも生活指導でもない、自分の思いを「言葉だけ」で伝える技術だ。
なぜ、若いうちに ”書く技術” を身につけるべきなのか?
答えはひとつ、「書くこととは、考えること」だからである。
”書く技術” を身につけることは、そのまま ”考える技術” を身につけることにつながるからである

(「はじめに」 より)


#16 「左ききのエレン -19-」

『「フェイスブックポリス」で一躍話題になったかっぴーさんが挑戦する、初の長編ストーリーマンガ』(cakesより)で、舞台は大手広告代理店。2019年にはテレビドラマ化もされている。その第19巻。

光一たちはリブランディングの方向性を決め、共感を得やすいモデル起用のためにオーディションを行う事になった。その最中に陰で何か手を回すアラタを他所に、オーディションは無事に終わり、全員の意見はまとまりかけていた。しかし、追加で参加する事になったモデルによって、状況は一変して…!?

本作の誕生秘話にまつわるインタビューが『advanced by massmedian』に掲載されている。


#17 「△が降る街」

昨年「余命3,000文字」で小説家デビューした村崎羯諦さん。本書は、著者2作目となるショート・ショート集で、タイトルの「△が降る街」を含む、25作品を収録。

前作もそうだったが、視点というか世界観というかが独特で、ページをめくるたびに「よくこんな設定がポンポンと思いつくなぁ」と、ため息がもれる。
(ポンポンと、なんて言っちゃったらちょっと失礼だよね。。)

「満島さんの診断結果ですがね、健康面に問題はないものの、文化指数が3.5と大変低い数値となってます。四十代男性の平均は25.7なのでかなりまずい値です。ご存知の通り、この文化指数がマイナスとなった場合、『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む義務を有する』という日本国憲法第二十五条違反として強制入院の措置が取られる可能性があります」

(「文化的な最低限度の生活」冒頭 より)


#18 「民藝とは何か」

宗教哲学者であり、文筆活動を主体として民藝運動を推しすすめた柳宗悦。柳は、ともに民藝品の蒐集をおこなった濱田庄司、河井寬次郎らに向かって、何度も「直下じきげに見よ」と言った。これは、名人の手がけたものだから、立派の名のついたものだからと、そういった飾りをありがたがるのではなく、ただただそのものをまっすぐに見て、自分の目で美しきを感じよ、という意味だ。
ほんとうに美しいものとは何か。表面的なわかりやすさではなく、ただしく本質を感じ取りなさいと諭されているようで、自然と背筋が伸びた。

昭和の初頭に創始され、現在にまで受けつがれる「民藝運動」の精髄を知るための入門書。

誰も異常な世界から、異常なものが生れてくると考えています。だが民藝品は私達に何を告げているでしょうか。通常なものから異常な美が出ることを明示してくれるのです。あの普通とか平凡とか蔑まれるその世界に、かえって美が宿されていることを物語ってくれるのです。

(「第二篇 民藝から何を私が学び得たか」 より)


#19 「氷柱の声」

当時、盛岡の女子高生だった伊智花を主人公として、東日本大震災が起こってからの10年をたどった、著者初の小説。執筆にあたっては、岩手、宮城、福島にゆかりのある7名(いずれも、著者と同年代の20代)に、取材もおこなった。

震災が「創作のネタ」と受け取られないように、それの悲惨さを利用した「感動もの」とならないように、ていねいに、慎重に、そしてまっすぐに書く。ことばのひとつひとつから、著者の切実な想いを感じた。
もちろん、「軽い」ものではないんだけれど、リズムとか、著者独特の擬音表現が、物語をまるくしていて、強くもしている。

『指定靴のスニーカーの底の白いゴムが床につくたびに、きょ、きょ、きょ、と間抜けな音がした』
『エスカレーターの音だけがみょいみょいんみょいん、ってずっと聞こえて』

静かな場所で、ひとりでだまって読みたい作品。


#20 「つづくをつくる」

デザイン活動家で「60VISIONロクマルビジョン」を立ち上げたナガオカケンメイさんが、23のロングセラー商品・ブランドに取材し、ロングライフデザインの秘密に迫る。

※「60VISION」とは、1960年代にあった実直にものづくりを復刻しながら「企業原点」を見直し、販売しながら「新商品」を作るというものづくり型ブランディングとして、2000年にスタートしたプロジェクト。

長きにわたって、ユーザーから愛される商品づくり・企業づくりの裏側を、「つくる」「売る」「流行」「つづく」の4つのポイントで聞いていく。

本書を読みながら、「ぼくはやっぱり、変わっていくものよりも、変わらないもののほうが好きなんだなぁ」と感じた。雑誌のような本。

「長くつづいているデザインには、いわゆる表面的なデザイン以外の創意工夫がある」はずであり、それを特にデザイナーという職種のみんなが意識することは、これからの生活者と共有するデザイン感に大きく影響を与え合い、結果としてのこの国の生活の質を上げていくことにつながる。そういう思いで、ロングセラー商品を持つ企業を訪ね始めました。

(「intro」 より)


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