「パックスモール・プレイビッグ」小さな道具で最大の効果を
vol.43/コンプレサー通信2019年5月号掲載
山の中にある桜の名所でのマジックショーへ。
あいにくの空模様。
雨が降ったりやんだりの微妙な天気。
あぁ、困ったなぁ。
屋根のない野外のビッグステージ、道具を濡らすわけにはいかないからね。
「傘のイリュージョンはピッタリだね!」
アシスタントのともやんが言った。
小さなダンボール箱にともやんが入って傘を数十本刺すというお得意のイリュージョンだ。
ホームセンターで手軽に材料が揃う使い捨てマジックだから濡れても平気。
ちなみに、このマジックのタイトルは『お箱イリュージョン』。
十八番(おはこ)とかけてあるのです。
ショータイムは三十分間。
お箱イリュージョンは十分の演目。
残りの二十分を、濡れてもいい道具だけで埋めなきゃならない。
「よ~し、トランプとコインだけで挑戦してみよう」
ポケットの道具だけでこの大きなステージに立つことに決めたのだ。
まるで、武器を持たずに戦場にいくような気分。
心細いけどいい経験ができそうだ。
憧れている海外マジシャンのショーを思い浮かべる。
小さなスポンジボール二つだけで、大劇場を長時間沸かせ続ける圧巻のステージ。
どんな小さなマジックでも、大勢の観客を引き付ける表現力と話術。
コンプさんの目指しているスタイルだけど、ついつい大きな道具に頼ってしまいがちなのです。
登場曲が流れてステージへ。
コンプさんの挑戦が始まった。
「雨の中お集まりいただきありがとうございます、感謝の気持ちを込めて、とっておき・・・ではないマジックを」
あえて、こんな口上でスタート、脱力した笑いが起こる。
なんだかんだで無事終了、挑戦してみてよかった!
マジックショーに『不思議』は必要不可欠だ。
だけど、もっと大切なのは『楽しさ』だと思う。
不思議なだけのマジックは退屈だもんね。
マジックに頼りすぎないショーの経験を積み重ねることで、楽しさを創りだすスキルを高めることができるに違いない。
実践あるのみだ!
創作活動に使わせていただきます!よろしくお願いいたします!