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はじめまして、株式会社Compathです

目の前で、登記書類の上を新品の実印がぽんぽんとリズミカルに走る。マスクしてフレッシュネスバーガーでアイスティを飲みながら法人登記。記念撮影も一応したけどマスクと自粛顔がムサくて決まらない。記念すべき設立日にはオンラインで焚火を囲んでこれからよろしくとスクショを撮った。

会社ができたよ

2020年4月22日、遠又香と安井早紀で株式会社Compathを設立しました。
大学時代の友人で1年に1回会う程度。THEそこそこの仲だった私たち。休みが合いそうだからという理由で3年前にデンマークに一緒に旅をして、ふたり同時にフォルケホイスコーレの不思議な魅力に惚れこんだ。あーだこーだと3年間探究し続けて、あとは作りながら考えよ、と7月から北海道東川町でフォルケホイスコーレをモデルにした"人生の学校"づくりをはじめます。
ホント、何が起こるかわからないもんだ。

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フォルケホイスコーレと民主主義の関係

フォルケホイスコーレはデンマーク発祥で「人生の学校」とも呼ばれる、17歳半以上ならだれでも通える教育機関。人生の中で立ち止まり、生徒と先生が共に暮らしながら共に対話しながら学ぶ場所。北欧に150校、デンマークに70校。人口比の単純計算で日本に1575校ある感覚なので(めっちゃあるな)、デンマークでの学びのインフラ。
人生の寄り道のような豊かな時間に触れたときに、この時間が社会で許される寛容さに感動した。迷ったときはまぶたの裏でこの情景を思い出すようにしてる。物語が対話を通して交差して学びが生まれていく空間。

そして"民主主義"のあり方を育む場所としてのフォルケホイスコーレ。

しかし、民主主義のほんとうの意味を知っている人がどれだけあるだろうか。多くの人々は、民主主義というのは政治のやり方であって、自分たちを代表して政治をする人をみんなで選挙することだと答えるであろう。それも、一つの表れであるには相違ない。しかし、民主主義の根本は、もっと深いところにある。すべての人間を個人として尊厳な価値を持つものとして取り扱おうとする心、それが民主主義の根本精神である。
(『民主主義』 文部省著)
人間が人間として自分自身を尊重し、互いに他人を尊重しあうということは政治の問題や議員の候補者について賛成や反対の投票をするよりも、はるかに大切な民主主義の心構えである。
(『生活形式の民主主義 デンマーク社会の哲学』 ハル・コック著)

まさに私も民主主義=政治・投票のイメージがこびりついていたから、フォルケと民主主義の深い関係性を理解するのに時間がかかった。自分の心に蓋をすることから始まる社会の違和感への蓋。自分をそのまま大事にすることと、社会を変えることへの意識はつながっている。どっちが課題というより、凝りとリンパみたいにうまく流れてないって感覚。

そんな私たちがやりたいのは、デンマークのフォルケホイスコーレをモデルに、日本の土壌に合った形で"人生の学校"をつくること。
「フォルケホイスコーレを日本につくります!」って表現は分かりやすくてつい使っちゃうけど、似てるようでちょっと違う。

フォルケホイスコーレの正解

これを言い切れるようになるまでが結構長かった。2019年1月に作ると決めてからたくさんの人たちに構想をひらいた。四方八方から問いが沢山ふってきた。私たちは、問いと闘った。 
「それってホントにできるの?」 シャキーン
「どんなプログラムが効果あるの?」 カンカンカン
「フォルケホイスコーレってなに?」 とりゃー

"もっと完璧にフォルケを説明できるようにならないと作れないのでは"
"長期間通わないと神髄はわからないのでは"
"もっと研究してからやったほうがいいのでは"

指摘や批評に対する盾として、デンマークの理想とフォルケの正解に無意識に縋っていた。

フォルケホイスコーレという"問い"

装備をガショガショ言わせて迷宮入りしつつあった2019年の6月ごろ、mother houseの山崎さんの起業家ゼミで一緒だった、IDEAS FOR GOOD編集長/ハーチの加藤さんとごはんをする機会があった。最近の試行錯誤と構想をひとしきり聞いていただいたあとに、パスタをくるくる巻き付けながら加藤さんが目を輝かせて言う。

「フォルケって"問い"なんだね」

フォルケって正解を教える学校じゃなくて、「?」を投げかける学校なんだね。そしてフォルケホイスコーレの存在自体も"問い"なんじゃないかな。
だから、あなたたちの事業は、あなたたちの"問い"でいいんじゃない?
さわやかに背中を押していただいて、盾は必要なくなっていた。

人はレゴのようにデコボコ、だからくっつくことができる

最後に自分たちの決意を磨く機会として、12月にもう一度デンマークに行くことにした。念願のニールセン北村朋子さんに会えて、視察も一緒にまわり、最後に事業の相談の時間をいただけた。彼女もデンマークのロラン島に食のフォルケホイスコーレを作るという。

もうなんだかすごくって(語彙の放棄)、いろいろ痺れるキーワードや示唆が沢山あったのだけれども、その帰りの電車の中で書きなぐった文章が残っている。

「わたしが最近思う上の世代と下の世代との違いは、"私が一番につくりたい""私がつくるものを一番にしたい"と思っている上の世代と、"同じ目的ならば協働・共生することに抵抗ない"という下の世代。もっと手を取り合って社会を変えていきたいよね。」
ニールセンさんに言われて、正直どきっとした。
うまくいっているフォルケを見ては嫉妬したり、私だったらこうするなと批評したりしていた自分がいる。不安。短期的な安心。共生への疑い。
同じ領域に共感した貴重な仲間なのに、仲間うちを出し抜こうとしてるなあ
あと、ニールセンさんに会って「人生の学校を北海道につくりたいんです」と、ドキドキしながら伝えたときに、にやりと笑って親指をぐーってしてくれた優しい笑顔が忘れられない。あんなあり方でいたい、と心から思った。

朋子さんが人をレゴに例えて話していた。人がデコボコなのには理由がある。凹凸があるから人とくっつける。表面がツルツルだと誰ともくっつけないし、くっつかなくてもいい。
ツルツル孤独かあ、そんな寂しいことってあるもんか。

「共に」に、気づく

朋子さんの問いは一番身近にあった「共に」を際立たせてくれた。
香と共にだから、挑戦できることの多いこと。
ひとりでやる方が楽だなと思うタイプだし、どんなにプリクラのネタに困ってもニコイチとか書くのは避けて通って来た人生。
でも、だからこそかもしれない。「共に」のありがたみを知っている、「共に」が面白いことを知っている、という軸においては、めちゃくちゃ自信がある。

手を繋げば自分が拡張してパワフルになれることを体感で知っていること。心からそう思っていること。
この感覚をコンパスにして進み、拡張していきたい。

4月に東川町でお世話になっている皆さんが、ささやかなオンライン歓迎会を開いてくださった。

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「共に」は香だけじゃない。そして、香の旦那に紹介されてファームレラの新田夫妻に出逢って感動してなかったら、そもそも東川町に行くこともなければ学校をつくろうと移住を決めることもなかっただろう。
写真家の飯塚さん北の住まい設計社の渡邉夫妻と一緒にツアーをつくることで、共に創ることでこんなにも世界観が広がることがわかった。小さな縁で世界が広がっていく。振り返ったら人から人づてでじんわり手をつないでいた。

共に実現したい世界を作りましょうって、CSVとか共同事業とか仰々しく捉えていたけど、もっと身近なんじゃないか。そっと伸ばしたら触れる距離にいるかもしれなかったり、実は手を既に繋いでいたり。

"Compath"

「私たち天才では!!」とやいやい騒ぎながら、3年前の旅の最終日にフォルケホイスコーレの一室で缶詰になってひねり出した、日本でフォルケホイスコーレ構想。現在は全く違う構想になっているが、思い付きのゴロ合わせが気に入った、屋号だけがこの時から変わらない。

ふたり

旅のお供の方位磁針コンパスの"人生の旅のお供"という響きに、綴りを文字って造語。com(共に)path(歩む小道)という語意を込めました。
本格的に起業することになったら、会社名はもっとカッコつけたやつ(?)に変えようか、なんて話していたけれども、後からコイツがどんどん意味を引き寄せてきた。

人生の寄り道、
共にはじめること、
境界を越えて共につくること、
手をつなぐこと。

時間をかけても、共に、つくる

始めてみると、結構いろんなひとたちが、同じような願いを持っていることに気づいた。既に探究されているいいものや人との出逢いにわくわくする。いろいろなことがやりたくなってくる。

食やクラフトやアートのプログラムはいろいろコラボをしながら作りたいし、東川の土地に流れるアイヌからの歴史や文化にじっくり向き合いたい。フォルケホイスコーレももっともっと探究したいし、U理論や心理学、ワークショップデザイン等の切り口でもフォルケを探究してみたい。民主主義。一周回って"日本"がよくわからなくなってきた。雇用や人事の観点もつながってくる気がする。私たちだけでやるとついマジメ過ぎちゃうから楽しいスパイスも入れたいし、これからの社会におけるフォルケのありかたとかも考えたい。コラボしながら、実験しながら、探究しながら。アジャイル式学校づくり。

たぶんめっちゃ時間がかかる。
輪郭が見えてくるのに10年はかかるかもしれないし、大きな軌道修正をするかもしれないし、生きてる間は見えない可能性もある。
でも、流れていくほうが簡単なこの世の中で、立ち止まり、感性と違和感をコンパスに、社会も自分もリフレーミングしたい仲間たちと共に、欲しい学びの形・場所をつくりたい。そのプロセスがきっと大事。

わたしは、自分の違和感に蓋をすることから始まる社会の違和感が許せない。あなたの好奇心や違和感は大事にしていいし、絶対にそれがのちのち社会をかたちづくる。

はじめの手つなぎ

「会社できたね。まずなにしようか?」「近くの大切な人たちへの報告も兼ねて会社設立パーティやりたいね。」
ということで6月6日にオンラインで設立記念パーティーを開くことにしました。

"Impulse"
私たちの活動の中心にある衝動はなんなのか?デンマークの旅でどんな衝動が芽生え、なぜ3年間探求を続けながら、いま起業するのか。
"People can change the social system"
デンマークで出逢った”Democracy” =民主主義はなんだか私たちが知っているものよりも楽しそう。そこに未来の可能性を感じたのはなぜか。
"Why don't we start new journey?"
これから何がスタートしようとしているのか。
みなさんが「参加したい!」と思えるような”余白”はどこにあるのか。

パーティも、共に。
父のように私たちを応援してくれている三木さんと「はじめましてcompathです」。フォルケへの向き合い方を変えてくれた加藤さん、もっと手を繋ごうと勇気をくれたニールセンさんと「民主主義の話と日本にフォルケが何故必要か」トーク。司会やグラフィックレコーディング、運営も一緒に創ってくれる仲間も。

ということで、はじまりはじまり。
(どんな場になったかは中編で!)

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