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捨てられないもの探し、楽さんの表情の緩まり(片山達貴)

展覧会『blue vol.2 ― 捨てられないものが 物語ること』が終わって2日目。なんか書かずにはいられない感じがあって書いてみる。映像制作で展覧会に参加した。けど、インタビューもしたし逆にインタビューもされた。企画も、会場構成もみんなで決めていった。なんか今回の試みは、制作中よりもこの展示が終わった後の今ほうが、ずしんとくる。

「捨てられないもの」という個人的なテーマで、個人の歴史を聞いていく中で映像の中に映らなかったものもたくさんある。けれど今回は、映ったものがあまりにも多くて、大きかったという実感がある。
色々あるけど、まず映らなかったもので印象的なのは、自分がインタビューされた時の話し。というかインタビューの前の出来事。自分には捨てられないものがないと思っていたけど、家の中を探して見つけていったこと。あの時間は映像の中に映っていない。映像には映っていないけど、自分で見つけた捨てられないものが、成田さんの写真になり、スウィングメンバーのひーちゃんや西谷さんの描く絵になった。この絵を見ると、おそらく記憶からだんだん薄れていくであろう、あの捨てられないもの探しの時間が、ちょっと思い出されるんじゃないかという気がする。

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一方でカメラがしっかりと映したこと。個人的に印象的なのは、楽(らく)さんの表情の緩まり。楽さんも最初は「捨てられない人っているでしょ?自分は捨てられる人間なんで」と表情を変えずに固く話していた。けど話をしていくうちに、楽さんの捨てられないものも僕と同じように見つかっていった。
楽さんはジッと考え込んで、自分の記憶に潜りこんでいって。徐々に楽さんの表情は、じわじわと緩んでいった。カメラはしっかりとそれをとらえて、映像にはその緩まりが映った。そしてすぐに楽さんは、そのモノについての話をしはじめた。ああ、捨てられないものを見つけたら緩むんや、自分ももしかして、捨てられないもの探しの時こんな感じだったんかなあと考えた。

写真:成田舞

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