見出し画像

古代緑地 Ancient Green Bert 第13話『蛙のなみだ』

お玉杓子

おさないゆきちゃんが お散歩していたら 小さな真っ黒なおたまじゃくしを見つけました 

おたまは芝の上に 飛び出してしまって 池に帰れないでいたのです

息ができなくて 今にも死んでしまいそうなところを

ゆきちゃんが救ってくれたのでした 

おたまは嬉しそうに 池に帰って行きました


数日後 おさないゆきちゃんが 池のそばを通ると

でかいおたまが飛び出てきて言いました

「この前は 助かったよ ありがとう!!」


お玉杓子 1

ゆきちゃんは大きなおたまにびっくり

でも すぐに仲良しになりました


きれいな池で スイスイ泳ぐおたまを見ながら お話をするのが毎日楽しくて仕方ありません 

お玉杓子 3

ある時なんて ゆきちゃんは 五月のいい匂いのする風に眠気を誘われ 

後ろ足の生えてきた おたまと一緒に空を飛ぶ夢を見たりしたものです

お玉杓子 2


二人はとっても仲良し

前足も後ろ足も生えたおたまは 陸へ上がれるようになったので 木陰の芝生で おままごとをしたり 楽しいおしゃべりを続けました 

親には内緒です だっておたまがお友達って言っても きっと信じてもらえないし 病院へ行きなさいなんて言われかねないですからね

お玉杓子 4


ところが しばらく経ったある日 池のほとりで待っていると 嬉しそうに池から出てきたのは 蛙でした

ぴょんぴょん ぴょんぴょん ゆきちゃんの方へ 跳ねてきます


ゆきちゃんは おびえました


「おたまじゃない!おたまはどこ?」

「ぼく おたまだよ!」

 っていくら言っても ゆきちゃんは ちがうちがう! ってわかってくれません

「おたまはどうしたの?」

「だから僕がおたまなんだよ」

「絶対違う おたまはもっと可愛いもん!! 」

お玉杓子 5

ゆきちゃんは 全く認めてくれません 

蛙くんになったおたまは 大粒の涙をこぼしながら 泣きわめく ゆきちゃんのそばにしばらくいましたが

「僕たちは そんなに長く 子どもでいられないんだ」

って 言い残して 後ろを振り返りながら 池へ帰って行きました

お玉杓子 6

よく聞くと 懐かしい声だって ゆきちゃんは気がつきました

ゆきちゃんが 「おたまちゃん!」って言ったのと

「ポチャン」と水に飛び込む音は同時でした


もう おたまちゃんは顔を出しませんでした

ゆきちゃんの前には 小さな水溜りができていました


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

ゑ本『古代緑地』第13話は『蛙のなみだ』です。

生きとし生けるものそれぞれ異なる時間を持って存在しています

幼心にヒリヒリと残る


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?