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古代緑地 Ancient Green Land 第16話 「星のマントル」


ずっと昔の 寒い寒い冬の森のできごとです

もの皆寝静まった夜 モミの木の穴に住むふくろう爺さんの目だけが光っています

星が夜空に瞬いて ゆっくりこの星はまわっています


そこへ

星のマント 10

ヒュー〜ー  ドッカーン!! 

 ギャン!

 ガラガラ  グサッ 

 

空から 「いってぇー 〜 〜 」

 キーンと 甲高い声 

星のマント 7

森にそびえる水晶山に星がぶつかって 飛び去っていったのです


なんだ なんだ

冬眠中のものも 寒くて丸まって寝ていたものも 目を覚まして 水晶山の麓にある湖のほとりに集まってきました 

湖の真ん中に かわいい星が突き刺さって チカチカ光っています


この子は星の子くんで

さっきのお父さん流れ星が 水晶山に ぶつかった拍子に 欠けたのでしょう 転がってこの湖に刺さってしまったのです

星のマント 4

星の子くんは ウンウン言って 動こうとしますが かなり深く氷に突き刺さっていますから もう泣きべそをかいています

集まってきた小さな亀さん 土竜さん 海豹さん 鼠さん達では どうしようもなく 誰からともなく 大モミの木のふくろう爺さんに聞いてみることになりました


星のマント 3

ふくろう爺さんは

「ふむふむ わしもその音は聞いたよ そんなことになっていたのか あの 暴れ星め そもそもスピードを出しすぎじゃというとるのに。。。まったく 何度言ってもわからんやつじゃ 

それじゃあな キツツキたちがこのもみの木マンションの8階で眠っとるで 起こして連れて行きなさい これを見せてな」

と言って手紙を持たせてくれました

みんなは 早速モミの枝を辿り キツツキを起こしました キツツキたちは寝起きで機嫌が悪くひともんちゃくありましたが 手紙に「好物食べ放題券(byふくろう)」と書いてあったので 仕方ねー と湖へやってきて 

星のマント 1

「おい みんな かかれ!」

 星の子の刺さった氷を クラッシュし始めたのです

 機銃掃射のような音が森中に響き 大きなけもの達も何事かと集まってきました

星の子くんは ようやく氷から抜けることができたのです


「おう 俺らこれで帰るぜ」

さしものキツツキも 若干脳震とう気味で フラフラと帰って行きました


さて 星の子くん 氷から抜けましたが 空を見上げて また シクシク泣いています

それを見てそばへやってきたのは 月の輪熊くん 


  月の輪くん  「おまえ もしかして迷子?』

  星の子くん  「はい 僕はまだ飛べないし とうちゃんは飛び続けることし

          かできないから もう帰れないかも 」

 星の子くんの目からは また涙がこぼれそう

星のマント

 月の輪くん   「おれのとうちゃん呼んできてやるよ 大リーガーなんだぜ」

 星の子くん   「え ほんと? 今度来たら 父ちゃんのところまで投げてく

          れる?」

 月の輪くん   「おう とうちゃんなら 絶対よ ちょっと待ってな 」


しばらくすると月の輪くんは お父ちゃんを連れてきました

冬眠中でしたが 流石に息子の頼みは 無碍にできません


ちょうどそこへ心配した暴れ星のとうちゃんが おーい おーい と 空高くから叫びながらやってきました


月の輪父     「おお あれだな あいつに向かって放ってやるから あと

          はどうにかしろ」

星の子      「うん やってみる」

月の輪父     「よし いい子だ」

星のマント 2

と星の子を掴むが早いか 大きく振りかぶりました

これはnomoくんのトルネードだ


「とうちゃん いてまえっ!」月の輪くんは叫びました。


星の子くんは ギュウーンと放物線を描き 暴れ星のお父さんと見事に合体したのです


夜の森では大歓声が上がりました

ふくろう爺さんも 水晶山も 見守る動物達も ホッとしました


それからちょうど一週間 冬至を迎えた森の上を

また暴れ星が通りかかりました


暴れ星は 「このあいだは かたじけない」と

と例の甲高い声で 言いながら キラキラと光る星達をたくさん降らせました

やがてそれは静かにゆっくり瞬きはじめました

長い冬の夜 

森の大モミの木は 光のマントを 羽織ったようになったのです

星のマント 15

森の暗い夜を おごそかに優しく照らし 

長い冬を耐えるみんなに希望を与えました


冬至の夜は毎年 流れ星がやってきて 星のマントルを着せて去っていくのです


みんなのお家のクリスマスツリーはこうして始まったのですね





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