小満;第24候・麦秋至(むぎのときいたる)
麦は自給率も低いし、稲に比べると馴染みが薄い。金色の麦畑を見たことも数えるほどしかない。でも見かけた時はやっぱり美しくて記憶に残っている。
パンは好きだし、ケーキも好き。コーヒーとケーキはやっぱり合う。パスタもクラフトビールも好きだ。ユーラシアの行事を繙いていると稲と麦という東西の主食の違いが目に見えるものの差を生んでいるのがわかるから興味深い。
中国から伝わった七夕(しちせき)の行事ではかつては麦で作った「索餅」が、いつしか日本の七夕祭りでは五色の素麺がお供えされる。
素麺は織姫が織る絹糸の見立てでもある。
織姫の星である琴座のベガと彦星である鷲座のアルタイルがこの時期、天の川を挟んで両岸に輝く。
星合の祭りの要素も習合してわかりにくいが、季節ごとの行事の基本は、五穀豊穣を願い、地水火風四大、四季の巡りが滞りないことを祈り、それが実りをもたらす。実りは陰陽の和合が叶えるからそれも願った。その時に旬のもの、あるいはそれに相応しいものが見立てられ、供される。
5月は「穂麦のマリア」を思い出す。うら若きマリアの星は乙女座のスピカとされる。スピカは穂麦でもあり、穂麦がデザインされた文様があしらわれたローブを穂麦のマリアは身に着ける。
若きマリアは純潔のシンボルであり、この後イエスを孕み、この世に光をもたらすとされるため、5月はマリアの月とされ儀礼や祭りが行われたようだ。
3月25日「マリヤ受胎告知」の祭の日。春分で、春蒔きの麦を蒔く目安の 日、「春の始まり」。
5月はマリヤの月、麦の穂が受粉する大切な季節。
8月15日マリヤ昇天の祭の日、薬草の潔めと麦の刈り入れなどの祈願感謝祭。
12月8日(神の子の宿りの日)、ロラーテ(浸し)のミサといって、夜明け前に教会に行き、蝋燭を点し、麦を水に浸して新しい生命の目覚めを祈る行事がある。
これはキリスト誕生と麦を同じと見倣す古い農耕の作法。
『聖母マリア』(岩波新書 植田重雄著)より
若いマリアに太陽の光が降り注ぐ。深い青のローブをまとうマリア。その青は夜や海のようでもある。大気は植物が生み出した海でもある。
洋の東西を問わず、この季節の風と光と水は、穀物にとって命を育んでいく大事なもの。
大気の息吹である雲
宇宙と地球の呼吸は 植物を通し、相互に往還し、あらゆる命を育てる。
それにひきかえ戦闘機の出す雲の弱さ。ウィルスは敵ではないのだが。。。
五月は命をはぐくむマリアの月。まずは植物たちが喜んでいる。
写真はいずれもgreen patrol時の物。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?