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ECサイトを勧められたけど「正直言ってちんぷんかんぷん」な人へ

先日、事業再構築補助金の申請関連で、ECサイト新設の打合せをしてきました。申請するお客様とIT事業者さんを含めた3者打合せでしたが、いろいろ気づいたことがあるので、忘れないうちに書いておこうと思います。

※本記事は、ECサイトやネットショップについて「よく分からないけど、これから検討したい人」向けです。既にネットショップを運営していて、「どうやったら売れるか?」が知りたい方は、専門の方が星の数ほど記事を書いていると思いますので、そちらをググってくださいm(_ _)m

※補助制度などの情報は、私の地元である石川県の2021年5月時点を前提に書いています。他地域の補助制度については、適宜お調べください。

1:IT事業者さんは万能ではない!

ECサイト(ネットショップ)のサイト数及び取引額は右肩上がりです。毎日のように新しいサイトがオープンしていますが、ほとんどは専門のIT事業者さんが作っているはずです。

しかし、みなさんも日常のネットショッピングで感じているとおり、あまり出来の良くないサイトも多々見受けられます。今回の案件に関していくつか同業種のECサイトを調べてみましたが、はっきり言って「もったいない」サイトが多かったです。

打合せ中に聞いた話ですが、IT事業者の中でも得意・不得意があり、1社でカンペキなECサイトを作れる会社は限られているそうです。ECサイトをオープンするとひとことで言っても、デザイン・システム設計・写真撮影・ネット広告・SNS運用など、数多くの要素が絡み合っています。「もったいないサイト」があふれる原因はここにあったのですね…。

(我々中小企業診断士も同じですが)IT事業者は少人数で経営しているところが多く、すべての要素に精通している会社はごく少数だと思います。また、筆者の過去の経験では、多くの分野に精通している企業は「規模が大きく、費用も高額になる」傾向がありました。

したがって、サイト構築を依頼する業者を選ぶ際は、見積金額だけではなく、各業者の得意分野を確認してください。そして、

①分野ごとに依頼する業者を変える(デザインはA社、写真はB社、SNS運用アドバイスはC社…といった感じ)

②2社以上が連携してサービスを提供するような業者に依頼する

など、トータルで良いサイトができるように発注すると良いでしょう。


2:公的な支援機関や補助金をフル活用する!

政府がデジタル庁の創設に向けて着々と準備をしているとおり、日本社会のIT化・デジタル化は「国策」と言ってもよいほどの大方針です。そのため、上記の取り組みが遅れている中小企業に対しては、「これでもかっ!」というほどの支援制度が準備されています。

いちばん有名なのはいわゆる「IT補助金」だと思いますが、この他にも数々の支援制度があります。正直に言うと、いろいろありすぎてどの制度が良いか迷うほどです。

我々診断士でもリアルタイムでは追いきれないほど(IT分野が特に強い方は除く)ですので、一般の方が最適な補助金を探し出して活用するのははっきり言って「無理ゲー」だと思います。

そこで、まずは公的な支援機関に相談されることをおすすめします。普段から地元の商工会議所と付き合いがあり、頼りになる相談員がいる場合はその方でも良いと思いますが、そうでない場合は都道府県単位で設置されている相談窓口をお訪ねになると良いでしょう。

例えば石川県の場合、ISICO(石川県産業創出支援機構)の中に「デジタル推進課」という専門の部署や「IT活用支援ステーション」といった相談窓口が設置されています。

補助制度の説明だけでなく、専門家派遣制度やITベンダーの紹介等もしていただけるそうです。

(以下、個人的なおすすめです。)

① 公的機関にすべてを頼らない

最初の相談窓口としてこれらの公的機関は最適ですが、相談員の皆様は多数の案件を抱えています。そのため、公的機関への相談は「基本的な情報収集」と割り切って、その後は民間事業者か我々のような診断士をパートナーにすることをオススメします。

② 補助制度は「地方自治体>国」の順で活用を検討する

事業再構築補助金やものづくり補助金が典型的な例ですが、国の補助金は一般的に競争が激しく、申請書類の作成も大変です。もし、県や市などで同様の補助制度がある場合は、優先的に活用することをおすすめします。

・相対的に競争が少ない

・国の補助金より補助率が良いケースが結構ある

・ほとんどの場合、申請書類は国の補助金より簡素

といった傾向がありますので、ご参考にしていただければ幸いです。

ちなみに、石川県の中小企業や小規模事業者の方は、2021年5月現在こちらの補助金が穴場かもしれません。事業再構築補助金やIT補助金に気を取られて、私を含め(汗)見逃していた方が多いようです。この補助金はECサイトやホームページ単体では使えませんが、顧客管理や生産管理のシステム導入と連動させることで採択される可能性がありそうです。

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3:リアルで売る場合と比較する

「ITが苦手」という方に特にお知らせしたい内容です。ネットやITという言葉が出た途端に拒絶反応を示し、「よくわからないから無理」「ブログやSNSなんてできる気がしない」という方は多いです。特に個人事業主や家族経営のお店の方に多いような気がします。

私もはっきり言ってブログは苦手です!安定した記事投稿ができていないのが何よりの証拠です…。

それでも、「リアルで営業活動をする難易度」と比べて、こちらのほうが相対的に良いだろうと思ってこんな記事を書いているわけです。

今更ながらですが、自分が実感しているネットの良さは下記のとおりです。

① 飛び込み営業をしなくても、初めての人と繋がれる

筆者が主催しているMG研修でも、こくちーずやSNSにイベント情報をアップしていることによって新規の受講者にお会いできています。アクセス数もフォロワー数も無いに等しいくらいですが、ありがたいことに毎回新規のお申し込みをいただいています。(こくちーずやTwitterの投稿は下記リンク先のような感じ)

② ページ情報や投稿内容が残るので、積み重ねが効く

チラシやパンフレットは、お客様が捨ててしまえば何も残りません。しかし、ネット上の情報は残りますので、投稿や商品のアップを続ければ、ページがどんどん充実していきます。リアルの店舗営業ではなかなか難しいことですが、ネットであれば可能です。

③ リアルの広告宣伝より、費用がかからない

中小企業のほとんどは、チラシやDM、CMなどの広告宣伝に費用をかける余裕がありません。また、供給能力に限りがあるので、広告費を回収するだけの商品販売も大変です。そうすると、広告に関する経験が積めませんのでますます広告投資をためらうようになります。

ネットであれば無料or少額から広報活動を始められますので、うまくいかなくてもダメージが少ないと思います。特に、今まで広報活動をしてこなかった企業は「最初は失敗して当たり前」くらいに思ったほうが良いので、数回は失敗することを前提にやってみることをオススメします。


以上が筆者がパッと思い浮かぶネットのメリットです。IT専門の方はもっといろいろ出るでしょうが、専門分野でなくてもこれくらいは経験則として書くことができます。

もちろん、お客様や営業スタイルによってはリアルのほうが効果的な場面も多々あります。大事なのは「最終的に必要な利益を確保する」ことですので、そのためにネットが良いのかリアルが良いのか、常に比較して見ると良いでしょう。

「ネットはよく分からない」「SNSは苦手」「ブログはめんどくさい」という方は、まずリアルだけで今後も十分な売上・利益が確保できるか?を検討してください。これで事足りるのであれば、無理になじみのないネット販売をする必要は無いでしょう。

しかしほとんどの場合、従来どおりのアナログ営業では将来が不安だと思ってこのページを読まれていると思います。

この一年、コロナの影響で対面型のビジネスは大ダメージを受けています。一方でデジタル関連のビジネスは伸びているものも多く、先述したとおり補助制度も充実しています。ECサイトの関連で言えば、専門家による開店後の技術指導まで補助対象になるようなご時世ですので、利用しない手はない!と個人的には思います。

1年位は「補助金の助けを借りながら、失敗しながら」でチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

なお、IT事業者さんと直接話をするのに抵抗がある、専門用語が呪文のようだ、IT事業者が自分のビジネスを理解してくれないので話が噛み合わない、という方は、「通訳代わり」として我々のような診断士を活用いただければ幸いです。(手前味噌で恐縮ですが、これまで関与させていただいたお客様は、数は少ないですが案外お役に立てていると思っています。)


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