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Hさんという男

はじめに

おはようございます。Kです。

今回はふと思い出した、私が前職で一緒に仕事をしたHさんという人について書いてみようと思います。

私が前にいた会社

私の前にいた会社はいわゆる日系大手企業で、年功序列で昇進し、何も問題なければ大卒社員は50代で課長クラス以上の役職になる仕組みでした。

また、私が最初に配属された職場は設備を管理する部署で、はじめこそ大変ですが、慣れてしまえばルーティーンワークしかない「ホワイト」なところでした。(暇な時期は遠くの設備を2,3か所巡視し、夕方に事務所に帰ってきて定時に退社ということもざらにありました。月の残業時間も一部を除き10時間以下です。)

Hさんという男

Hさんは私が会社に入って最初に配属された部署にいた58歳の大卒社員でした。

入社当時は特に気に留めていませんでしたが、この会社で定年間際になっても担当ポジションのHさんは明らかに「窓際」社員でした。

「仕事を手伝ってくれ」と言われて現場に行ったら、すべての作業を私に押し付けられたり、Hさんが作るはずの資料なのに、「これも勉強のためにやってみてよ」といって作らされたことも何度もありました。純粋だった新入社員の私はHさんを疑うことなく、「そういうもんか」とその仕事をやっていました。

ある日のこと

私が入社2年目のある日、Hさんと二人で現場に向かうことがありました。道中の車内で不意にHさんが「みんな僕のことをばかにしている。あなたもどうせそうなんだろう?」と言ってきました。私は咄嗟に「そんなことないですよ。どうしてそういわれるんですか?」と言いました。Hさんは答えず、車の中では微妙な空気が流れ続けました。

1年間一緒に勤務した様子や周りに人からの評判から、Hさんがお世辞にも仕事ができるとはいえないと感じていた私は、「そんな働きぶりではそう思われて当然だろう。何を言ってるんだこの人は?」と思いながらその日を過ごしました。自分がHさん側の人間になることもあるなんて思いもしなかったからです。

仕事内容の変化→転職活動

私も社会人8年目に入ったころ、業務内容が変わり、当時の係長とどうしてもうまく仕事ができず、来る日も来る日も怒られる時期がありました。私にも至らぬところはあったので、それについてどうこう言うつもりはありません。ただ、あの頃は本当に会社に行きたくなかったし、業務内容も自分の性に合わないと思うようになりました。

そう思うようになってから軽い気持ちで転職活動をはじめ、幸運にも好条件を提示してくれた今の会社に内定をいただいたのですが、留まるか、転職するかで非常に悩みました。

留まるか、出ていくか

留まる選択をした場合、前の会社は業種的にもつぶれることはほぼなく、出世を完全にあきらめたとしても、Hさんのようにクビにならずに暮らしてはいけるんだろうな、ということはおぼろげながらわかっていました。

一方で転職した場合は、また一からの積み上げになるので、会社にフィットできるのかわからなかったことと、新卒からいる人たちに比べて出世もできないだろうなという懸念がありました。

ただ、残留を選択し、出世をあきらめた際には、数年後には同期入社の人や後輩に抜かれ、どうしようもない差をつけられたまま、鬱屈とした気持ちで会社生活を過ごすことになります。かといってこの会社でバリバリ仕事をして出世していく姿をどうしてもイメージできませんでした。頑張るモチベーションを完全に失ってしまったのです。

結局、「あの会社でHさんみたいになるくらいだったら、転職したほうがいい!待遇もいいし!」と決意し、転職しました。今は前職とは遠く離れた地で別業種の会社で働いています。

心境の変化

転職をして私自身の心境も変化し、前職ほど出世や仕事に執心することはなくなりました。他にも決め手はありましたが、心情的には「Hさんみたいになるくらいなら」ということで転職しました。しかし、結局のところは転職先でHさんのようになる可能性が前より上がっているという間抜けな話です。中途入社のため、比べられる同期もそんなにいないので、その点で精神的にはかなり楽ですが・・・

おわりに

業務も多様化し、様々なことに気を配り続けないといけない今の会社生活では、順風満帆にキャリアを積むということは非常に難易度が高いのかもしれません。どこに地雷があるかわからない中、誰しもが「できない」レッテルを張られ、道が閉ざされてしまう恐れはあるのでしょう。Hさんもそうだったのかもしれません。
HさんもHさんなりの苦しみや葛藤があり、日々を生きているのだというそんな当たり前のことさえ気づかずにいました。

同じような立場に立たされた時、自分自身をどう納得させていくか、ということを前職をはなれてから考えるようになりました。

会社から与えられる評価がその人のすべてではない、そう肝に銘じながら楽しく毎日過ごしていけたらと思います。


以上、Kでした。

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