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なぜ人を殺してはいけないのか

15歳だったら、人を殺しても死刑にならないらしい。
それを聞いてから、私は、あることをずっと図っていた。
その人のこと、殺そうと。

彼さえいなければ、こんなことにならないだろうと思っていた。
まずは、どうやって殺すのかを考えていた。

家にある包丁でそのまま刺したら、向こうは男性で、力が強そうだし、一発でうまく刺せなかったら、もう勝算がない。そこで、その人を殺そうとしていることがバレたら、私は絶対母や周りの人からの説教に耐えられないし、これからまたその人と一緒に暮らせなければならないことを思うと、楽になるために私が自殺するという手しかないかもしれない。

その人と私、生き残れるのは、一人だけ。

父が単身赴任で海外へ行っていて、母の不倫相手がうちに居座っていた。自分がこの家の父親みたいな面でしていて、何事も指図してくる。毎日うちに帰ったら何もせずに、ただ母がご飯を作ってあげるのを待つだけだった。

その人がうちに来る日、大体わかる。母が肉料理を二つ以上作った日に、その人が必ず来る。

母はその人のために料理を作ったから。いつも「その人は仕事が大変だから、栄養のあるものを食べさせなきゃ」と言い、その人が好きなものを作ってあげたり、その人のために夜遅くまで買い出しに行ったりしていた。

私たちだけの日だったら、夜ご飯は適当でもよかったけど、その人がうちに来ると言ったら、母は絶対なんらかの料理を作ってあげる。
その人が母と不倫していることへの怒りというか、その人が母に愛されていることへの嫉妬というか、私はその人のことが大嫌いだった。今でも、好きじゃない。

そこから、ずっとその人がうちから、私たちの生活から消えて欲しかった。
殺そうと思ったのも、殺しちゃいけないと思ったのも、母にもっと庇ってくれて欲しいと思っていたから。
その人がいなくなったら、母はもっと私たちのことに目を向けてくれるではないかと思った。

けど、その人のことを殺したら、母は一生私のことを憎むではないか。そこで、一生私のことに見てくれないかもしれない。
母が、本気でその人のことが愛しているから、母が悲しんでいる姿をみたくない、この家を壊したくないと思った。
その人は最低だけど、大事にしている人がいる。その周りの人を傷つけさせたくない。だから、私は殺しちゃいけないと思った。
                  text/xiao

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