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連載 ひのたにの森から~救護の日々

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#仕事について話そう

連載 ひのたにの森から~救護の日々⑨キュウゴの夜

       御代田太一(社会福祉法人グロー)

静まる園内、夜が来る。<18:45>
 ひのたに園の夜が始まる。夕食が終わり、日勤(9:30~18:15)の職員も帰りはじめる時間。利用者も多くが部屋に戻り、昼間とはうって変わった静けさだ。

 残る職員は3名。男性・女性1人ずつの宿直職員(9:00~翌朝9:30)と介護・洗濯を担当するパート職員(18:00~)1名だ。男性は僕だけ。

今晩、僕の

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連載 ひのたにの森から~救護の日々⑪現場に渦巻いているもの

連載 ひのたにの森から~救護の日々⑪現場に渦巻いているもの

       御代田太一(社会福祉法人グロー)

「不公平に思う人はいないでしょうか?」
福祉の業界には「全国○○協議会」とか「〇〇エリア連絡会」といった、事業種別や地域ごとに決められた、事業者同士のネットワークがある。

一般企業とは違って、同業者は利用者を奪い合う競争相手ではなく、積極的に協力・連携していくパートナーであるという前提のもと、全国に様々なネットワークが作られ、定期的な情報交換や合

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連載 ひのたにの森から~救護の日々⑩人生は出会いとタイミング

連載 ひのたにの森から~救護の日々⑩人生は出会いとタイミング

御代田太一(社会福祉法人グロー)

遅れてやってきた思春期
高校を卒業した時、福祉のことはこれっぽっちも知らなかった。関心もなかった。

胸を張れるほどの充実した中高時代を過ごしたと思うし、現役で東大に合格できた。身体は丈夫だし、自分の能力次第でこれからどこまでも勝ち上がることができる、そんな自信と上昇志向に満ちていた。

福祉の側に身を置くと多くの人が「いつ自分が障害者になるかなんて誰にも分らな

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連載 ひのたにの森から~救護の日々⑫救護施設の50年

連載 ひのたにの森から~救護の日々⑫救護施設の50年

御代田太一(社会福祉法人グロー)

チイキとシセツの間にあるもの
アパートのある近江八幡から、ひのたに園へは車で40分ほどかかる。近江八幡の市街を抜けると、畑や田んぼに囲まれた道が続く。車は少なくて、運転しやすい。20分ほど運転すると「ひのたに園」の名前の由来でもある日野町へと入る。

日野町は滋賀県の南東にある、人口2万人ほどの町だ。近江商人ゆかりの地として知られ、3月のひなまつりでは、商店街を

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