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読書ノート「さよなら、男社会」尹雄大

 小さいころから男性に植え付けられていしばっている観念について書かれてて、どうして男たちの多くがああいう考え方になってああいう行動をしているのか、ひいては周囲を抑圧し始めるのか、を理解するヒントになってとても参考になった。

気になった・腑に落ちたワード:
「恐怖」「勇気」「同調性」「論理的」「リアリティと力感」「ホモソーシャル(男同士の絆)」「感覚よりも論理」「弱さは恥ずかしい」「克己心」「暴力」「他人の自由をコントロールしていいという自由を持っている(という思い込み)」

「恐怖」「被害者意識」「怒り」
 話をしていると、「何かがこわいから攻められる前に相手を攻め込む」同時に「自分をすごく守っている」みたいな感覚をおぼえる男性が仕事関係でいた。普通の話をしているときはいいんだけど、議論のような形になって彼が少し攻め込まれると急に体を斜めにしたり腕を組んで、いじわるそうなバカにしたような顔になって、相手に言われた倍くらいの勢いと言葉数で攻め込んで一気につぶそうとする、対話しようと思っていた相手はそれに戦意喪失して、もういいです、とあきらめのような表情で終了させる、彼は言い負かしたといった勝ち誇ったような顔で、でもどこかさびしげな表情で去っていく、みたいな場面をよく見たしきいた。
 私が知っている範囲で、彼のことを心から信用し尊敬している人はいない。
 彼は仕事の業績や彼の上司や扱いにくい部下たちにどう立ち向かうかよりも前に、自分の中に根付く被害者意識や恐怖感に気付き、向き合った方がいいんじゃないかと思う。

「勇気」「克己心」
 ・恐怖に打ち勝って勇気をもって乗り越えた、みたいなやつ、勇気が出てくる源になるのは「克己心」(松下幸之助的!)ではなく「好奇心」ではないかって。
 →ほんとそうだなあと思う。恐怖を押さえつけて何とか成し遂げたことってあんまりいい思い出とか成功体験にならないような気がする。

「同調性」「ホモソーシャル」
 ・「同性の結びつきを可能にするのは『ある価値観』を共有しているという前提」「『おとことはかくあるべし』という、身体ではなく概念に対して同調しようとするとき、それは思想になってしまっている。」「均質的な価値観を信じるものとの同調性を重んじてきた感性は、自分と異なる存在を目の前にすると、決して自分とは「同じ」にならないため不安を覚えてしまう。」
 →体や感覚を離れて概念に同調して柔らかくそれを強要される社会で、男たちは抑圧されて、その抑圧を無意識に周囲にも押し付けようとしてくる、「違う」価値観を持つものは排除する、男性優位社会の出来上がり。
 なんでこの男性優位社会、なぜ感覚的より論理的な方が、主観的より客観的な方が良いとされるのか?

「感覚より論理」「弱さは恥ずかしい」
・「その恐れも含めて深く感じることをどうして避けるのだろう。」「感じてしまっては得られないものがあるからだろう。それが強さであり、他の誰よりも強いことでもたらされる勝利だ。」「感じるよりも理解することが推奨される」「感じなさと引き換えに信念と思想のもたらす強さを手に入れら」
→不安を感じたり、弱さを感じたり、言葉にできないような豊かさを感じたりしても、社会的には評価されない(評価できない)ことが不安なんだね。
感じたことを否定して、理屈ではこう、を優先していくことで、体や感覚や直感とはずれていき、歪んでいく。

「やればできるという『精神主義』」「リアリティと力感」
・「やればできる」「強くなければならない」というトラウマを抱えた世代の持つ神話である精神主義はリアリティと力感を礎にしている。リアリティは「現実っぽさ」、力感は「あえてやっている感じ」「がんばり」。
 ・ほんとうは体にとってのリアルは、呼吸のように、全く力感のないところで生じている。”
→そういう概念の中で育ってきてしまったんだろうけど、周囲や次の世代に押し付けるのやめてね。

「暴力」
・「殴る男は自身が被害者だと錯覚している」「相手が自分を怒らせたと思い込んでいる」「入念に繰り返される『衝動的』な激情」

→他人に対する暴力と自分に対する暴力。暴力が強さの表明。クズだな。


印象に残った部分を抜粋するほど、それに対する感想を書くほど感じる、ホントに。さよなら男社会。

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