肘・前腕・手関節の役割とその背景①

タイトルにもあるように、「肘・前腕・手関節」について述べていきます。
皆さん、この部位ってどんなイメージを持っていますか?

健常者においては、対象物を持つ際や操作する際に多く関与する部位になってきます。
そして、片麻痺の方では、筋緊張を高めやすく介入に難渋する部位になるかと思います。

今回は、手との関連した役割と解剖・運動学的な背景についての解説をしていきます。

手の役割について

①対象物に合わせて手の構えを変化させられる
②身体の支持や接触による姿勢の安定
③他者とコミュニケーションを図る

今回は①に着目して進めていきます。

<手の構えを変化させられるということは?>
手の構えが出来る=
→対象物の重さや感触に合わせた操作の準備
→次の操作に繋げられる
例:ペットボトルを握るだけでなく、口元に運ぶ際の連続的な手の変化が起こるということ

手の構えについて

手の構えとは?
→対象物への接触の前準備
→全方向に対して中間位のポジションを作れること

【手の基本原則】
①Ⅰ~Ⅴ指先は、手掌内空間のどのポジションでも触れ合う事が出来る
②5本の指の長さは異なるが、屈曲するとⅡ~Ⅴ指先は同一線上に位置する
③空間で、5本の指を屈曲・伸展すると、その指先同士は平面上で構成される

手の構えとは、機能的肢位を基準として、対象物に合わせて手の形状を適宜変化させれる事に意味があります。

肘・前腕・手関節の骨・関節構造

それでは、解剖運動学的な構造はどうなっているのでしょうか?

【前腕の回内外】
前腕は、橈骨・尺骨の2本の骨で構成されます。
肘との連結部位では、腕橈関節・腕尺関節。腕橈関節は上腕骨小頭と橈骨の関節窩と連結し、球関節様の形状になっている為、肘周囲では、この関節が回旋運動を担っています。

橈骨・尺骨間の連結は、上下の橈尺関節が担っています。
この関節が主要な回内外を担っています。
そして動作の特徴として、尺骨を基本軸として橈骨がスピンし滑るように動きます。

【手関節】
手関節では、回内外の補助を担っています。
主な関節は、橈骨手根関節です。
この関節は、橈骨の関節面と手根骨間が滑りと転がり運動を起こす事で、掌背屈・橈尺屈を行っています。

そして、その関節運動が組み合わさる事で、協調された能動的な回旋運動が起こります。

前腕と手関節の協調された関節運動が手の構えの方向付けと操作に重要な役割を担っています。

肘・前腕・手関節に関連する筋

主要な筋について整理をしましょう。

【肘周辺】
上腕二頭筋、腕橈骨筋、円回内筋は隣接しています。上腕二頭筋は、腕橈骨筋と円回内筋の間に入り込み橈骨粗面に付着します。

腕橈骨筋は前腕に付着する筋の中でも特殊な筋です。
主な作用は肘の屈曲ですが、回内外にも補助的に働きます。
また、屈筋群と伸筋群の境目に位置している為、この筋の緊張は双方の筋緊張にも影響を与える事が考えられます。

【前腕】
前腕には、伸筋群と屈筋群がそれぞれ付着しています。その境目には、前述した腕橈骨筋が付着しています。
深層に目を向けてみると、橈骨と尺骨をつなぐ、前腕骨間膜があります。

この前腕骨間膜には、深指屈筋・長短母指屈筋・長短母指外転筋・示指伸筋が付着しています。

まとめ

「肘・前腕・手関節」これらの筋骨格系の協調関係によって、手の役割である、対象物に合わせた手の構えの変化を作る事が出来ます。そして、その際は能動的な筋活動の変化の幅が重要になってきます。

次回は、片麻痺者の特徴について述べていきます。

参考文献

臨床OTROM治療
作業療法における上肢機能アプローチ
カパンジーの機能解剖学 上肢
骨格筋キネシオロジー

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