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アマチュアカテゴリー視点でシーズン移行を考える


はじめに

今回は、春秋制から秋春制へのシーズン移行について、アマチュアカテゴリー視点で書いてみたいと思います。

ここでいうアマチュアカテゴリーとは、1種社会人男子サッカーのJFL、地域リーグ、都道府県リーグのことを指します。アマチュアカテゴリー視点でシーズン移行を考えた時に、どのような課題があるのかを整理しながらも、まだ何も情報が無い状況なので、私の仮説や妄想を多く含む記事となりますので、その辺を踏まえてご一読頂けますと幸いです。

因みに、私はシーズン移行について賛成、反対のどちらの意思も持っていません。

Jリーグが何を考えているのか

現在サッカー界を賑わせているシーズン移行問題は、Jリーグ視点の話題が中心なので「今何が起きていて、Jリーグが何を考えているのか」という点については、下記のサイト「Jリーグ公式:シーズン移行の検討」と、続けて掲載する2つの動画を見ていただくと分かりやすいかと思います。

動画は座談会的な感じのものですが、視聴した個人的な感想は、うっちーの好感度がパナイ(笑)というのと、しっかりと説明してくれているので分かりやすい動画ではあるものの、とにかく長いので見るのが大変です。この動画とは別にトピックスごとに整理した短い動画を作ってくれた方が見やすいのにと思いました。シーズン移行の課題は多岐に渡っていて、それぞれにメリデメがあるので、受け手が情報を整理できるような配慮があると良いですね。

カレンダーを見比べてみる

2023シーズン日程
シーズン移行後日程(仮・未完)

シーズン移行後のスケジュールで分かっていること
Jリーグ開幕:7月最終週~8月1週頃
Jリーグ閉幕:5月最終週~6月1週頃
ウインターブレイク:12月3、4週頃~2月1週、2週頃(約1ヵ月超)

上記のスケジュールを踏まえて、シーズン移行後日程のカレンダーを作って、2023シーズンのカレンダーと並べて見ました。ひと月を4週で表現しているので、実際は5週ある月とか、大会が重なっていて表現が難しい箇所もあったので、どちらも「だいたいこの辺」くらいな感じで見ていただけたらと思います。

シーズン移行後のカレンダーは私が悩みながら作ったものですが、見て分かる通り(仮)&(未完)です(ホントウニスマン)。赤色は試合開催週(仮)くらいな感じで見てください。初雪、終雪のサイトを見ながら降雪地域は本当に試合できるのかな、、と、ドキドキしながら色塗りしたり、あーじゃねーこーじゃねーと悩みながら作っていたのですが、そもそも悩んだポイントがシーズン移行の課題とも思えたので、下記に整理してみます。

オフシーズンは凄く勿体ない期間

昇降格が絡むので、アマチュアカテゴリーもクロージングの時期を合わせないといけないのですが、シーズン移行後のオフシーズンとなる6~9月中旬は、ものすっごーーーく×3勿体ない期間ですよね。Jリーグの場合は、オフシーズンで無くなる8週の試合数を平日開催等で補うという算段のようですが、アマチュアカテゴリーの場合は、選手や関係者が平日仕事をしているので、平日の試合開催は特別なことが無い限りNGだと思います。そうなると、現在の規模感を新しいカレンダーに当てはめるのはそもそも無理なんですよね。。

主要大会の予選が入らない

国体と、そのリハ大会である全社は、開催時期を大きく動かせないことを前提として本大会だけカレンダーに記載していますが、国体地域予選と、全社の予選(地域、県)、天皇杯予選(J3、JFL、地域、県)と、それぞれの予選をどこに入れたらいいのよ!と悩みに悩んで、これ以上悩むとダークサイドに片足突っ込みそうだったので予選はカレンダーに入れていません。というか入らないです。。天皇杯もシーズン移行すれば、秋春で完結するようにスケジュールが変わると思いますが、まだ何も情報が無いので、本大会だけ「ここら辺かな」くらいな感じで入れてます。

ウインターブレイク明けの空白期間

どうしたらいいのよ!全然アイディアが浮かばないんだけど!と悩んだのは、ウインターブレイク明けから3月2週くらいまでの空白になってる期間です。何かしたいけど降雪地域が動けない時期なので、全国大会的なイベントを持ってくることはできないし、降雪地域は着色以上にリーグ戦を前にすることはできないし、関東や関西は、地域独自のカップ戦をここに持ってくることができるのかもしれないけど、中断期間が地域によってばらついて良いのかな、、と悩んだ空白期間となりました。

なんでJリーグと開幕がズレてるの?について

「全カテゴリー一律8月1週からやればいいじゃん」という気持ちは分かりますが、下位カテゴリーの開始時期のズレは、下位カテゴリーならではの事情があります。

選手の契約、チームの編成は上位カテゴリーから決まる

選手は、オフシーズンに少しでも上のカテゴリーのチームと契約するために動きます。これは短いキャリアと向き合う選手の気持ちを考えれば理解できますよね。ただ、そうなると必然的に選手の所属が決まっていくのは上位カテゴリーのチームからになるので、下位カテゴリーのチームは選手の確保が遅くなり、チーム編成が固まる時期が遅くなります。これが段階的にシーズンがスタートする理由の一つです。シーズン移行後は、オフシーズンに新卒選手を獲得することができなくなるので、下位カテゴリーのチームが選手の確保やチーム編成に苦労する状況が、これまでよりも顕著になることが予想されます。

試合会場等の施設も上位カテゴリーから決まる

試合会場等の施設使用についても上位カテゴリーから決まっていくので、下位カテゴリーのチームは、残った選択肢の中で使える競技場を、他種目、他競技と調整してやりくりしながら何とかしています。東海リーグが魔日程と言われるのも、都道府県リーグのチームが夜遅くに試合をしているのも、試合会場が不足しているからです。試合会場の不足問題も、段階的にシーズンが始まる理由の一つになります。

シーズンと年度がずれる影響について

前項で「シーズン移行後は、オフシーズンに新卒選手を獲得することができなくなる」と書きましたが、シーズン移行でシーズンと年度がずれる影響については、人材と施設の視点で、Jリーグよりもアマチュアカテゴリーの方が深刻に捉えて対策する必要があると思います。

中断期間後に新卒選手を迎える

学校は4月開始、3月終了と年度で動きます。これまでは、企業が新卒社員を迎えるような感覚で、チームは新卒選手を迎えることができていましたが、シーズン移行後は、新卒選手をウインターブレイク明けの中断期間後から後期日程の最中に迎えることになります。企業チームは、就職先になるので新卒選手をこれまでと同様に迎えることができるかもしれませんが、アマチュアクラブは、新卒選手の選択肢に入るために、前半戦の成績影響や、ほぼ固まったチームへ加入することへの影響等々、これまでとは違った対策や工夫が必要になると思います。すでに選手が揃っている状態で新卒選手を迎えるためには予算編成も変わってくると思います。このタイミングじゃないと新卒選手は獲得できないので、頭を悩ませるチームは多いですよね。

シーズン終了後の移籍を円滑に

苦労して新卒選手と4月に契約したとしても、6月の昇降格状況で動く可能性があります。より良い環境を求めるのは新卒選手も同じです。そのため、6月に移籍できることを踏まえた短期契約や、移籍、登録に関してのルール整備も必要になります。クラブが選手の就職先を斡旋している場合は、雇用先企業との調整も必要となりますね。この辺はしっかり体制を整えておかないと、新卒選手の選択肢からアマチュアクラブが外れてしまうことになります。また、契約、移籍、登録のルールについては、変に厳しく縛ると、新しい人材(選手)が増えないことにつながるので、サッカー界のコモンセンスを踏まえたルール作りを行う必要があると思います。

新シーズンの選手確保をどうするか

シーズン移行後も、すでに活動している選手については、移籍交渉をして獲得するという従来の形になると思いますが、新しい人材確保に向けては、アマチュアカテゴリー視点で新しい方法を模索していかないといけません。前述した契約、移籍、登録のルール整備もそうですが、例えば、アマチュアクラブであっても、〇〇指定選手のような形で卒業前の学生選手が所属できるようなルールを作ったり、Jリーグが主体となって行っているセレクションのような場を作る取り組みを、JFLや各地域リーグが主体となって行ってみても良いかもしれません。ここはたくさんのアイディアを出しては試行錯誤しながら進んでいくことになりそうですね。

社会人サッカーの規模は年々縮小しています。新しい人材(選手)がどんどん参加できる状況を作らないと、日本サッカーのヒエラルキー構造が破綻しかねないので、人材確保についてしっかりと考えていきたいところです。

学生チームにある問題

1種社会人リーグに参加している学生チームは、卒業、入学、進級があるので、年度でごっそりメンバーが変わります。シーズン開始時の編成と合わせて、1シーズンに2度編成タイミングがあるので、半年ごとに違うチームで戦うみたいな感じになりそうですが、大学リーグとの登録の関係や、卒業選手が別の社会人チームに入る場合の取り扱い(移籍?新入団?)とか、学生チームはシーズン中に選手の出入りが激しくなることがあらかじめ想定されるので、この辺もルール整備が必要なところですね。

施設について自治体との調整が遅れる

自治体も年度で動きます。アマチュアカテゴリーで使用している試合会場等の施設は、自治体の施設を利用している場合が殆どなので、昇降格後の状況を踏まえて6,7月から申請して通るのかというのは疑問です。「ある程度予測して年間通して押さえたらいいんじゃないの?」と、酒の席で軽く言われたことがある(笑)のですが、昇降格タイミングで使用施設が大きく変わる可能性や、そもそも押さえられる施設が限られている上に、前項でも書きましたが「残った選択肢の中で使える競技場を、他種目、他競技と調整してやりくりしながら何とかしている」現状では、自治体への申請が遅れること自体がリスクになります。また、殆どが自治体の施設を利用しているとはいえ、企業チームや学生チームが所有している施設を使用している場合は、これらのチームが昇降格で動いた時に、当てにしていた施設が利用できなくなるので、新シーズン開始のタイミングであらためて会場確保ができるのか?という大きな問題もあります。

降雪地、寒冷地の問題について

実際にカレンダーを見比べてみると、Jリーグの場合は、寒い時期にサッカーをやっているのはシーズン移行後も変わらないので、よくある降雪時や寒冷時のサッカー環境の不満については、このタイミングで既出の問題が表面化した状況なのかなと思っています。シーズン移行で説明されているのは、降雪時や寒冷時にアウェイで試合をすることや連戦になる場合には試合開催ができる場所の近くでキャンプを行うのための費用補助を行う、みたいなところですよね。

JFLはどうなるの?

この「降雪時や寒冷時にアウェイで試合をすることや連戦になる場合には試合開催ができる場所の近くでキャンプを行うのための費用補助」についてですが、これを聞いた時の私の率直な感想は「同じ全国リーグであるJFLはどうなるの?」でした。降雪量が多い青森県のラインメール青森は、JFL開幕からホーム開幕戦までアウェイ5連戦となっています。シーズン移行するとウインターブレイク開けの2月2週から、現在より3週間、3節ほどアウェイ連戦が増えることが想定されるので、JFLが何もしなければ、降雪地帯のクラブは負担が増えるだけになってしまいます。

地域リーグは別の地域にアウェイに出れない

地域リーグは、全国リーグでは無いので、降雪の無い地域にアウェイで出ることができません。地域内で降雪量の差がある地域では、やりくりできることもあるかもしれないですが、北海道や東北、北信越はリーグの試合開催時期を大きく動かすのは無理ですよね。

地域リーグの主要大会を考える

地域リーグのリーグ戦を除く主要大会は、地域CL、全社、天皇杯、国体と4つあります。試合開催可能週の減少から、取捨選択や規模縮小が考えられると思いますが、ここからは4つの主要大会について考えてみたいと思います。

全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)

地域CLは、地域リーグの年間王者を決める大会ですが、JFLへの昇格大会を兼ねているので開催時期が5月にずれると思います。問題は、シーズン移行後日程(仮・未完)を見ても分かるように、大会前の日程を十分に取れない「ぶっつけ地域CL」感のあるリーグをどうするのか。現在、北海道リーグは5月2、3週からスタートしますが、これは降雪、寒冷の影響があるからだと思います。私は北海道の札幌付近に年度またぎで半年ほど住んでいたことがあったり、岩手県の一関や福井県の福井にも住んでいた経験もあり、新潟県の佐渡島は母の故郷で帰省で長期滞在したこともあるので、その時のことを思い出しながら、北海道は4月前半なら行けるところもあるかもだけど、4月後半まで普通に雪が降るしなぁ、、みたいな感じで各地の状況を考えながら頭を抱えつつ、恐る恐るカレンダーの色を少し前に伸ばしてみました。北海道、東北、北信越に限らず降雪地帯の皆様は、5月に地域CLがあるのは想像しづらいんじゃないかなと思いますし、こればかりは地域CLの規模を縮小したとしても解決される問題ではありません。前項の「JFLはどうなるの?」に書いたように、降雪、寒冷地への負担問題をJFLが何とかしないと、負担増の将来を見据えて、地域CLを出場辞退するチームが増えそうな懸念はありますね。

全国社会人サッカー選手権大会(全社)

カレンダーを作っていて最も悩んだ大会です。個人的に大好きな大会なので今後も開催してほしいですが、大きな課題が2点あると思います。
1点目は予選日程の問題で、国体のリハ大会である以上、国体の時期と大きくずれるとリハにならないので、現在と同様に10月中旬開催が想定されます。地域によっては予選に3週間必要(都道府県含めるともっと必要)だけど入らない。。例えば、全社を地域リーグ、クラ選を都道府県リーグ、と完全な棲み分けを行って、16チームで行う大会にすれば予選期間を短縮することができるかもですが、普段見ることができないチームが一堂に会する「お祭り感」も全社の魅力の一つだと思うので、規模の縮小でその魅力が下がるのは、ファン目線では切ないですよね。
2点目は大会の付加価値設定で、地域CLの出場枠が無かった時代は「負け抜けした方が良い」と言われることもあった大会なので、仮に地域CLの出場枠が無くなった場合に「名誉」以外に何を付加価値とするのかは重要なことです。参加チームを減らしてコンパクトな大会にするとしても、参加チームの費用負担は変わらないので、分かりやすくそれなりの額の賞金を設定するとか、付加価値が無いと出場すること自体に腰が引けるチームが多くなりますよね。全社を前期日程の盛り上がりポイントとして活かせるように、良いアイディアがあるといいなと思います。

天皇杯

予選をどこに入れるかを悩んだ天皇杯。下位カテゴリーのチームにとっては、スポンサーや親会社に喜んでもらえる「全国的な知名度を得られる貴重な大会」なので、アマチュアカテゴリー視点では、本大会の1回戦、2回戦までは当事者の気持ちで考えたいですね。天皇杯予選は、J3、JFL、地域リーグ、都道府県リーグと幅広いカテゴリーのチームが参加します。当年の本大会開催中に都道府県リーグは翌年の予選を戦っています。シーズン移行の影響が大きい、規模の大きな大会なので、このタイミングであたらめて予選を含めた大会設計をしっかりと行ってほしいですね。

国民体育大会(国体)

国体は、1946年から開催されている歴史ある大会ですし、国体が開催されるタイミングに合わせて施設が整備されるなどの目に見える効果もあるので、天皇杯同様に意義のある大会だと理解しています。現在は、JFL、地域リーグのチームが単独で出場したり、選抜編成されたりと各県で参加の仕方が様々なのですが、これだけスケジュールがきつくなると単独チームでの参加が難しくなるように思うので、シーズン移行後は各チームから数名セレクトして選抜チームを組むような感じが主流になるのかなと思います。

まとめ

シーズン移行については、昇降格で全体がつながっている以上、アマチュアカテゴリーを含めた日本サッカー全体が影響を受けます。

課題を整理してみて分かるように、Jリーグとアマチュアカテゴリーでは向き合う課題が違います。JリーグにはJリーグの事情があるように、アマチュアカテゴリーにはアマチュアカテゴリーの事情があります。現在行われているJリーグ視点の議論だけでは、アマチュアカテゴリーの課題とは向き合えないので、Jリーグと同じように、アマチュアカテゴリー視点の議論も行って、情報を公開していって欲しいと思います。

日本サッカー全体のことを考えるのは日本サッカー協会の役割だと思うので、各所管団体を取りまとめながら、関係者全員が迷い苦しまないように、しっかりとした制度設計を行ってほしいです。

最後に、大変長い文章となってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。仮説、妄想を多く含む記事となってしまいましたが、アマチュアカテゴリーがより良い方向へ進むための議論のきっかけになってくれたら嬉しいです。

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