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こみゅリポ Vol.04「競技としてのゲームの面白さをどう伝えていくか」

Tonamelのコミュニティマネジャーのさとけんと、いろいろなゲームコミュニティのイベントオーガナイザーが集まって、ゲームコミュニティの魅力や謎を、プレゼン/ディスカッションを通じて明らかにしていくイベント「こみゅリポ」

vol.04は「競技としてのゲームの面白さをどう伝えていくか」。前回、vol.03にて登壇されたエスノグラファーの神谷俊さんにより、ゲームのコミュニティを存続していく上で、このようなお話をされました。

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そこでvol.04の今回、「競技としてのゲームの面白さをどう伝えていくか」をテーマに、まさに「伝える」ことの本職であるゲーム大会のキャスター/実況として活躍される方々と議論する上で考えることとなりました。

スピーカー紹介

コミュ12

コーリー (@MasaoKoori
闘劇総合司会としてお馴染みのナレーター、ラジオDJ、リング・アナウンサー。魅力的なヴォイスと非常に安定した司会進行力に定評があり、テレビにラジオにイベントMCと幅広く活躍している。現在ゲームアナウンサーとして数々のゲーム大会やイベント、配信番組などに出演している。

Naka(@KeynNaka
海外のRTAイベントを日本語で楽しむための日本語ミラー配信チャンネル「JapaneseRestream」のOrganizer、日本の大規模RTAイベント「RTA in JAPAN」の理事、今年のRTA in JAPANでは「レーシングラグーン」の解説を担当し大きな話題を生んだ。

雪之丞(@yukinojoooo
格闘ゲームコミュニティ「Top Of 3mancell」のコミュニティリーダー。大会イベント、N先ガチ勝負、初中級者向けKOF上達グループなどの各種企業配信がTO3の主な活動です。「KOF」や「サムライスピリッツ」等のSNK系格闘ゲームにて闘劇、闘神祭、EVOJAPAN、SNK公式大会にて大会実況を担当。

また、こみゅリポの司会としてさとけんわっちも参加されました。

ゲーム実況をする時、そのゲームに対して行うアプローチ

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最初、3名に質問したテーマは「ゲーム実況をする時、そのゲームに対して行うアプローチ」はなにか?というもの。色々解釈できる質問ですが、キャスターの方々はそれぞれ全く異なる答えを用意していただけました。

まず注目されたのがNakaさんの「否定的な意見を言わない」というもの。Nakaさん自身、ゲームに対する否定的な意見をせず、「楽しいところ」を見つけることが大切だと話します。特に配信等を通じてはじめてゲームに触れる人も多いなか、その第一印象を左右するからこそゲームへの否定はしないことが大切だとNakaさんは話します。

そこで、雪之丞さんが実際に担当した『THE KING OF FIGHTERS XIII』という作品が、一時期ライデンというキャラクターが著しく強かった頃の話題へ。ライデンの”圧倒的パワー”が既にファンの間で周知だったことから、むしろライデンの繰り出す「ドロップキック」の圧倒ぶりを熱を込めて実況することで、会場を盛り上げることを出来たといいます。他にも壊れキャラをヒール(悪役)に見立てるなど、客観的には歪に見える要素も、それを踏まえて観客と盛り上がることが、キャスターの腕の見せ所といったところでしょうか。

盛り上げるために必要なものということで、話題は「観客」へ。ゲーム大会の盛り上がりは、やはりキャスターの実況や演出で広げることも大切ですが、同時に観客、特に観客の声援が大きいほど、観戦体験そのものも大きく変わると指摘。ただ日本は文化的にまだ「見る側」に留まる方も多いため、バルーンスティックを配ったり、実況側で拍手のタイミングを作る、更にはゲーム側の演出などを拾うなど、いかに観客を熱狂の中に巻き込むか、様々な工夫が必要になります。

改めて、トークは雪之丞さんの考える「ゲームをやるではなく”やり込む”」という実況アプローチに。どうして「やり込む」必要があるのか。それは繰り返すように「盛り上がる」上で、キャスターが予めゲームの「勝負所」を把握し、そこに向けて盛り上げていく必要があるから。格闘ゲームで言えば空対空を制した後の攻勢など、ゲームのセオリーを踏まえているからこそ先の展開を予測し、「勝負所」の伏線を自分でやり込んだ経験から作っていくこともできると雪之丞さんは話します。

一方でゲームへの理解が高すぎる上で懸念されるのが「ゲーム用語」。例えば「対空」のようなコミュニティ内部では当たり前な表現も、外部からは伝わらないこともあります。そこで、比喩などを用いる必要が生まれます。例えば「○○選手がギアを上げた」や、コーリーさんからは、嫌味にならない程度にサブカルのパロディネタを盛り込むなどの経験も紹介されました。

実況する時に「これは必ず伝えたい」と個人的に意識してる点

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次に、「実況する時に「これは必ず伝えたい」と個人的に意識してる点」を聞いてみました。恐らくキャスターの方に最も聞きたい王道の質問ですが、やはり皆様それぞれこだわりがあるようです。

まずコーリーさんからは目標として、「選手のフォロワーが増えるように、選手のかっこよさを伝える。ゲームが売れるように、ゲームの面白さを伝える」と提言。特に、わざとらしくない程度に自分の情熱を込めるなど、キャスターが率先して盛り上がり、楽しそうに話すことで、ゲームの内容が理解できない人でも「楽しい」と思わせることが大切だと話します。

そこで、視聴者が少しでも観戦に没頭するために、キャスターの個性が注目されます。口癖や決り文句など、聞いているだけでキャスターをパーソナリティが把握できれば、共感しやすい。併せて、雪之丞さんからは、細かな駆け引きと、体力が大きく削られるなど大きな戦況の変化を、緩急とアクセントをつけて話すこともポイントになるようです。

とはいえ、実際にはゲームの細かなメカニクスについて解説したい欲もあり、タイミングとの兼ね合いで迷うことも多い様子。逆に昇龍拳、波動拳などゲームの固有名(技名)は理解を促しながら盛り上がるリズムも刻めていいとこづくしという認識が共有されます。

実況者の視点で見たとき良いと思う(思った)コミュニティの特徴

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次は「実況者の視点で見たとき良いと思う(思った)コミュニティの特徴」という質問が。ゲームコミュニティも千差万別ですが、キャスターの視点でコミュニティはどう映るのでしょうか?

まず、Nakaさんの「スキップすることなくチャットに反応ができる」という特徴が注目。配信サイトなどでは基本的に配信される映像に対し、視聴者が自由にコメントすることができますが、そのようなコメントに対してキャスターがどう拾えるか、両者がコール&レスポンスで配信を共有できるコミュニティが楽しいというお話がありました。

次に、雪之丞さんから「所属しているプレイヤーに目標をもってプレイしてもらえる理念がある」というものが。自身が格闘ゲームコミュニティー「Top Of 3mancell」を運営される経験上、コミュニティの中でプレイヤーが長く遊んでもらうには、目標に向かってプレイする理念が必要だと話します。

一方、コーリーさんからは「攻略情報がオープン」など初心者をどう誘い込むかが大切だとお話が。例えば、格闘ゲーム『エアガイツ』において、長年精力的にコミュニティの発展に尽くしたあ~る・滝さんの姿勢を見たエアガイツ仮面さんは、他の格闘ゲーム大会で優勝を果たし、そのインタビューに際して『エアガイツ』を布教するというパフォーマンスを実行し、脚光を浴びた例もあるそうです。

3名のお話を受け、ここでスマブラDXコミュニティのわっちさんから、自分なりにコミュニティに求める原点が、いわば友達の家で遊ぶ感覚であり、やはりコミュニティ内での人間関係が大切だったことが振り返られました。そこでNakaさんから、RTA in Japanもそれぞれのゲームコミュニティから人が集まる以上、最初なかなか打ち解けられなかったものの、Nakaさんご本人が気後れ無く話していくうちに次第に慣れていったと話されます。

中でも、RTA in Japanは同時接続者数18万人と日本屈指の規模のコミュニティイベントですが、わっちさんの言う「友達の家」に近い、一度は皆やり込もうとしたゲームを徹底的にやり込む姿を皆で共有する体験、それが多種多様なゲームで実現することも、RTA in Japanの魅力だと言えます。

公式/非公式問わず、大会の実況としてお呼ばれする時に、ぶっちゃけこういう準備をしてくれると嬉しいなっていうこと

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最後に、キャスターの皆様に「公式/非公式問わず、大会の実況としてお呼ばれする時に、ぶっちゃけこういう準備をしてくれると嬉しいなっていうこと」という、直球の質問が。

さっそく、雪之丞さんからは「水を…水をください」という切実なお願いが。大会で実況席にはドリンクが置かれていますが、利尿作用のある成分が含まれるものであると、トイレが近くなってしまうため水にしていただけるとありがたいとお話されました。この他、キャスターの心情を察していただくのは現場で運営される方々。コーリーさんの経験ではそれぞれの台本に現場ディレクターから出演者へのメッセージが添えられていたことがあり、とても感激したとか。

次にコーリーさんからは「過剰なデータ、正しいよみがな、優しい解説、寛大なメーカー担当、前向きなコメント」という諸々要望が。特にわっちさんからも提案されたのが、プレイヤーネーム。特に世界各国の言語ごとにあるプレイヤーネームは、「どう呼べばいいのか?」と困惑することもあるそう。雪之丞さんは運営の方が読み方のカンペを出してもらって助かった、という経験もあったと付記します。主催をすることもあるNakaさんからは、「土台がしっかりできているとやりやすい」とも捕捉。

また話題は大会のパンフレットへ。一部の大会では選手の写真やインタビューが掲載された大会のパンフレットが頒布されることがありますが、やはり形に残る記録は嬉しいとのこと。選手や参加者にとってもパンフレットは喜ばれそうです。

最後に一言

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最後にキャスターの方々と司会のわっちさんから、本日を振り返った感想をいただきました。

コーリーさん:「だってゲームですよ、みんなで面白いことをやってますから、その面白さを伝えていきたいと思います」

Nakaさん:「大変有意義な時間でした。RTAはハードルの高いものから低いものまでありますから、ぜひ色々な方に挑戦してほしいです」

雪之丞さん:「最近の格闘ゲームは対戦だけじゃない楽しみ方も模索してます。今回は色々なイベントがあることが勉強できたのでよかったと思います」

わっちさん:「キャスターの方たちは選手やゲームの魅力を伝える上で、本当にすごいことをされている。今回を踏まえ、改めてリスペクトできる方たちだなと思えました」

とそれぞれコメントをいただけました。

トークの内容をより詳しく知りたい方は、こちらのリンクから当日の「こみゅリポ」のアーカイブのご視聴とチャンネルのフォローをお願いします!


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