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コミュニティで成長するB2Bマーケティング戦略:2024年の成果と未来

※このブログは、2枚目 コミュニティマーケティング Advent Calendar 2024 の12/25分のエントリーです。

こんにちは、アドビの松井真理子(まつい・まりこ)です。コミュニティマーケティング推進協会の事務局メンバーでもあります。
2024年、アドビのAdobe Experience Cloud事業部におけるコミュニティマーケティング活動を振り返っていきます。


ユーザーコミュニティを通じて顧客基盤を築く


私はAdobe Experience Cloud事業部のフィールドマーケティングマネージャーという役割を担っています。担当する営業組織の案件創出と受注に貢献することがミッションです。案件創出金額と受注金額の目標は四半期ごとに決められており、営業・BDR・マーケティング共通の目標として私の立場でも数字を追っています。そのような中、2024年は2023年に引き続き『Community-Led Growth』を掲げてコミュニティを通じてビジネスを拡大する戦略をとりました。
Adobe Experience Cloud の User Group は 製品特化のUser Groupと製品をまたいだUser Group という大きな2つのカテゴリが存在します。

Community-Led Growth戦略 2本柱

  • 顧客基盤を固める各製品別 User Groupを継続実行 (最低3か月に1回開催)。解約防止、アップセルを目指す。

  • 特別な体験を提供するAdobe User Group。クロスセル案件創出目的。※参考:Adobe User Group とは

私はフィールドマーケティングマネージャーとして、案件創出と売り上げ貢献が最大ミッションです。気を付けないとプロダクトアウトで売り込み一辺倒の施策になりがちです。そんなとき、いつも一呼吸して思い出すようにしているのが、コミュニティマーケティング推進協会 代表理事 小島さんが以前からおっしゃっている、“Don‘t Sell to the Community, Sell Through the Community” です。

小島さんがCMC_Meetupでお話しされている発表資料より


ベンダーの立場で、多くのUser Group 開催サポートしながら、直接的に“売り込む” ようなコンテンツに絶対ならないようコントロールしています。私はもともとアドビのユーザーだったため、お客様の気持ちは理解しているつもりです。売り込み色の多いコミュニティだなとちょっとでも感じてしまったら、次から参加したくないですよね。
フィールドマーケターであり、コミュニティマネージャーである私がUser Groupの運営で意識していることは以下2点。

User Group 運営で大切にしている2つのこと

  1. マーケター同士の横のつながりを作り、社外に相談しやすい環境づくり

  2. Japan Adobe Advocates という活躍するユーザーをロールモデルとして、“私もJapan Adobe Advocates になりたい”、という活用のモチベーション向上

こうすることで何が起きるかという一例をご紹介します。

ベンダーが介入しないお客様企業同士のコミュニティが生まれます。“社員教育はどのようなことをされているのか”、“インサイドセール部隊構築するためにはどうすればいいのか”、“貴社の事例を弊社の社員に聞かせたい” などなど、様々なテーマで勉強会が開催されるのです。アドビ社員がお客様同士をおつなぎすることもありますが、自然発生的にお客様同士の交流が生まれ、お互いが切磋琢磨しながらマーケターレベルを上げるための活動が実施されています。また、私たちはお客様が目指してほしい姿として活用度の高いJapan Adobe Advocatesの露出を高めることにリソースを投下しています。Japan Adobe Advocates には“もっと詳しく聞きたい”と声がかかることが多くなるよう促してます。

これはあくまでも一例です。ほかにも、いかにも自然発生的に機会が生まれるかのように、ひとつひとつのUser Groupでは長期的な視点で “ねらい” を仕込んで開催しています。
結果的に2024年の日本におけるAdobe Experience Cloud事業の解約率の低さは全世界の地域の中でもトップクラスの低さでした。限られた社員数で1社1社丁寧にポストセールスが伴走するということが難しい環境の中、コミュニティというエコシステムを使うことが、解約率の低さの一助となったと言えるとみています。
※製品別 User Group 活動例https://x.com/MarikoMatsui1/status/1848210973167149489

製品特化ユーザーグループのその次へ

製品特化のUser Groupを継続的に実施していくことは顧客基盤をしっかりと据えるために非常に重要と考えています。しかし、ビジネスをしている以上、拡大していかねばなりません。私のミッションもビジネスの拡大がメインです。すでにアドビ製品をご導入いただいているお客様にさらに別の製品をご導入いただくために 製品に特化しないAdobe User Groupの開催 にも注力しました。Adobe User Group に初チャレンジしたのは2023年。2023年の活動からクロスセル案件が複数生まれ、2023年~2024年にかけて、大型受注したケースが出てきています。

特に力を入れた活動 3つ

Adobe User Groupはちょっと特別な場所に仕立てることを意識しています。年間40~50回定期開催している製品特化のUser Groupにはなかなか参加されない担当者様や役職者様にご参加いただけることを狙っています。工夫の一つとして、アドビのコミュニティに慣れているお客様にはコミュニティの先輩としてAdobe User Group にも参加いただけるよう仕掛けています。話しやすい雰囲気づくりをすることで初めてご参加いただいた方でも、すぐにリラックスしてお客様同士でお話しいただけているのではないでしょうか。つまり、特別な場所は初めて参加するお客様 ”だけ” にしないようにして、私たちの一番大切なコアの部分である製品特化のUser Groupの雰囲気を醸し出すよう心がけています。

最も難しいのが、ご招待する”人”の選定です。ライトパーソンは誰なのでしょうか? 各Adobe User Group の“ねらい”に当てはめた時に、いま営業が対面しているお客様をご招待するべきなのか?ほかの方がライトパーソンなのでは? と、社内データとにらめっこしたり、営業BDRとも議論を重ねました。特別な場所なので、適切な方に来ていただきたい。しかし、ライトパーソンを発掘して、ご招待するのはとても工数がかかる。でも手は抜けない。2025年も引き続きの課題としてチャレンジしていきます。

2024.09.19開催 グローバル企業のデジタルマーケティング最前線 – Adobe User Group Speakers Meetup OEDO 開催の様子

ライトパーソンに来ていただければ、お客様から“アドビのコミュニティにくると持ち帰り事項が多い、また来たい” と言っていただくことができます。Customer Centric – 顧客中心 の考え方をぶらさず、Sell Through the Community の実現は簡単ではないですが、この言葉を聞くために試行錯誤の日々が続いています。

果たして、このような活動で、案件創出と、売り上げ貢献はできているのでしょうか?

私たちのマーケティング貢献の考え方の中に、以下2つがあります。
-       Influenced to Create:商談が作られる前にマーケティングの活動が関わった
-       Influence to Close:商談が作られてから受注するまでの間にマーケティング活動が関わった

2024年、結果としていずれもInfluencedは90%を超え、Influence to Close に関しては2023年に比べ12%Upしました。(目標 2023年に比べ10% up)案件創出にも受注にも貢献したと言えるのではないでしょうか。特に2024年は商談のステージをあげることにマーケティングも寄与することが求められました。これまでの考え方だと、すでに商談化している案件は営業が活動する領域なので、商談ステージをあげる活動をマーケティングとして求められたときは、何ができるのだろうとチームでディスカッションを重ねました。そこで、Community-Led Growthの戦略はぶらさず、商談中のお客様を狙ってAdobe User Group に招待しました。マーケティングとして営業と連携した活動をし始められたことは大きな進捗でした。

コミュニティを通じて複数社の先進的なお客様と触れながら、自社のマーケティングレベルの現在地を確認でき、その先の見通しが立つこと、ユーザーになったら学びの多い製品別 User Groupに参加できるという安心感は確実に商談のステージが上がっていく一助になると確信した年でした。

B2Bマーケティングの新たな方向性

2024年3月のAdobe Summit (デジタルエクスペリエンスに関するカンファレンス。年1回ラスベガスで開催)のB2Bセッションでこんな話がありました。

B2Bマーケティングはシフトしています。企業成長するためにより戦略的なアプローチへ。これまでのリードベースのアプローチは“トラディショナル”で、これからのB2Bマーケティングはレベニューマーケティングというアプローチ。マーケティングと営業の役割を分断するのではなく、すべてのファネルにマーケティング、営業、ポストセールスなどが携わります。 攻める企業を特定したら、Buying Group(販売グループ)を各役割が連携しながら見つけていき、新規・クロスセル・アップセルの機会を創出・受注へと協業していきます。

Adobe Summit - 2024 Roadmap and Innovations for B2B Customer Journeys & Marketo - S201


”今お付き合いのある企業の部門(購買グループ1)ではAという製品は導入済みで、更新並びにアップセルの決定権はある。しかし、Bという製品は別の部門(購買グループ2)にアプローチしなければならない。パスがない。” これらはエンタープライズ企業を攻めるうえで必ずぶつかる壁です。アカウントベースのマーケティングでは購買グループの特定には限界がありますが、購買グループ毎のアプローチができるようにテクノロジーが進化したという話でした。

2023年-2024年と、営業BDRやポストセールスと連携をしながらフィールドマーケティングとして案件創出と受注貢献について様々な活動を進めてきました。振り返れば、左側のファネル上部 “Generate Interest” (いわゆるマーケティング費用のほとんどを投入するリード獲得活動)はこの2年ほぼ実施していません。Summitで話されていた内容を聞いた時、私たちが実施してきたのは、B2Bマーケティングの新しい形“レベニューマーケティング”だったのか、と腑に落ちたのでした。

また、コミュニティを通じて新たな購買グループを見つける勝ち筋はありそうだと感じています。先日、User Groupによく参加いただいているお客様から、“松井さん、△△株式会社さんが、○○がすごく良いと言っていたので、営業から詳しい話が聞きたい” と声をかけてもらいました。
お客様からこういったお声がけいただけるよう、2025年も大きな戦略は変更せず、『Community-Led Growth』を掲げる予定です。

2025年も、Adobe User Group という立て付けで、様々な層に対してマーケターがわくわくする仕掛けを組み込み、新たな購買グループが見つかる Sell Through the Community を実施していきたいと考えています。

2024.9.27開催 Adobe Marketo Engage User Group Day の様子


執筆者:松井 真理子
Adobe Experience Cloud 製品のデマンドジェネレーション担当マーケターとして2020年3月アドビ入社。入社以来、フィールドマーケティングを実施しながら、コミュニティマーケティングにも従事。2022年9月CMC_Meetup初参加。2023年5月CMC_Meetup運営メンバー。これまでの歴史は、昨年のnoteに記載しています。
アドビのコミュニティマーケターの2023年は「ユーザーコミュニティ活動で企業の成長をリードする」【前編】
アドビのコミュニティマーケターの2023年は「ユーザーコミュニティ活動で企業の成長をリードする」【後編】
2024年2月コミュニティマーケティング推進協会発足とともに事務局メンバーに参画。

X 投稿:https://x.com/MarikoMatsui1

LinkdIn投稿:https://www.linkedin.com/in/mariko-matsui-3611301b1/


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