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【悪の陳腐さ】考えないことの怖さ

悪とは、システムを無批判に受け入れることである

エルサレムのアイヒマン/ハンナ・アーレント

実に強烈、悪とは実際に悪事を働く者ではなく「システムを批判せずに受け入れることこそが悪である」という意味の言葉です。サラリーマン講師として一企業で働く私でさえ、思考停止し漫然と日々を繰り返していると、知らずに無自覚なまま悪事を働いているかもしれないということです。いえ、既に何らかの悪事には加担しているでしょう。考えていきます。

私自身が非常に強く抱えている「問題意識」について皆さんに共有をさせていただきます。石油業界、IT業界、そして現在はビジネスパーソン講師の実績しかない私は何の専門家でもないことをお断りしたうえで、しかし「私たち一人ひとりが問題意識を持つべき」と考えていることを書き綴って参ります。

改めて指摘をすると、ハンナ・アーレントの「悪の陳腐さ」という概念を私たちが日夜営むビジネスの世界に当てはめると、非倫理的な行為が機械的な日常業務として受け入れられる可能性があるという警告となります。それは往々にして組織の目標や期待に対する個人の服従から生じます。ここからは大きく2つのポイントに問題を絞って、実際に起きた社会問題と照らしながら考えていきたいと思います。


1つ目、不正な業績報告

これは多くの場合、組織の上層部からの圧力や、株主への報告の必要性から生じると言えるでしょう。会社の財務状況を良く見せるために、業績を不適切に膨らませることがもたらす社会的影響を考えます。1つ目のポイントについては、取締役会などを含む経営層というレイヤーの視点で考えていきたいと思います。彼らは私たちと役割こそ異なるものの、私たちと同じく凡庸な人であることが少なくはありません。具体例を挙げていきます。

2015年、東芝は会計スキャンダルに巻き込まれ、数年間にわたり業績を誇張していたことが発覚しました。これにより同社は大幅な減損損失を計上し、経営陣の大幅な入れ替えが行われました。

次にコインチェックです。ちなみに私の知人も被害に遭いました。(私は暗号資産への投資は懐疑的なので行っていません)2018年に暗号通貨交換業者コインチェックは、5億ドル以上のネム(NEM)コインが盗まれるという大規模なハッキングに遭遇しました。その後の調査で、コインチェックが適切なセキュリティ対策を講じていなかったことが明らかになり、同社の経営陣は辞任に追い込まれました。

アメリカの例も見ていきます。少しだけ遡って、ジョンソン・エンド・ジョンソンのベビーパウダー問題を挙げてみたいと思います。同社は数十年にわたり、自社のベビーパウダーに発癌性のあるアスベストが含まれている可能性を知りながら、その情報を公表しないまま製品を販売し続けました。初めて広く公になったのが2000年代後半ですが、法廷での訴訟とその後の社会的影響は2010年代にかけて頂点に達しました。特に注目を集めたのは、2018年7月の判決で、22人の女性とその家族がジョンソン・エンド・ジョンソンに対して提起した訴訟でした。彼女たちは、同社のベビーパウダーの使用が彼女たちの卵巣がんを引き起こしたと主張し、この訴訟で彼女たちは4.69億ドルの賠償を勝ち取ることができたのです。その後2020年には、ジョンソン・エンド・ジョンソンはアスベスト汚染の疑惑が持たれている全てのタルクベースのベビーパウダーの販売を北米市場で停止しました。

最後のJ&J社については、長期化させて逃げ切れると考えていたのでしょうか?安易な指摘は避けますが、会社の業績報告の制度や習慣に無批判に従うことで、役員や組織の上層部が適切な評価や監視の欠如の中で不正行為を犯す可能性があることは間違いないと思います。人々がシステムや命令に従って、彼ら自身が行っていることが何であるかを十分に理解せずに反省をしないことこそが、悪しき行為を犯す問題なのではないでしょうか。


2つ目、環境や労働基準の違反

製品の製造コストを抑えるために、環境規制を無視したり、労働者の権利や安全基準を侵害すること。これはしばしば、コスト削減の圧力や競争力維持の必要性から起こります。

例えば、グローバルなファッションブランドはしばしば、製品の生産を安価な労働力を活用できる国にアウトソースしています。これにより、労働者の権利が侵害され、過酷な労働条件や児童労働の問題が生じています。特に注目されたのが、2013年にバングラデシュで発生したランプラザ工場の崩壊事故であり、この事故は労働環境の問題について全世界の注目を集めました。

この工場では、いくつものブランドの衣料品が製造されており、その中にはユニクロも含まれていたと報じられています。

この事故で約1,130人の労働者が死亡し、2,500人以上が負傷しました。ビルの安全基準についての問題が事前に指摘されていたにも関わらず、工場は運営を続け、労働者は働き続けるよう強制されました。これが最終的には大規模な人命の損失を招く事故につながりました。

この事故は、世界の衣料品ブランドがどのようにして製品を安価に製造しているのか?という問題を浮き彫りにしました。工場労働者たちは極度に低い賃金で長時間働かされ、さらには安全基準が無視されるという状況下で働いていました。これは、アーレントが指摘する「悪の陳腐さ」の一例と考えることができます。つまり、企業の個々の従業員が、組織全体の不適切な行動(この場合は、安全基準の無視)を継続することにより、大規模な人間の苦しみを引き起こすという例です。

1つ目の不正な業績報告も、2つ目、環境や労働基準の違反も、これらはすべて「悪の凡庸性」がビジネスの世界でどのように現れるかの例で、個々のビジネスパーソンが組織の期待や圧力に従うことで、彼らが自身の行為が他者や社会全体にどのような影響を及ぼすかを認識せずに、不適切な行動をとってしまうという可能性を示しています。


エルサレムのアイヒマン

英語版のWikipediaを参照して書き進めて参ります。とてつもなく難解ですし、私も複数回にわたって通読したものの、全てを理解するには至っておりません。ただ、Wikipediaを読むだけでも胸が締め付けられるということだけは言い切ることができます。(何もわかっていないに等しいコメントです)

「エルサレムのアイヒマン - 悪の陳腐さについての報告」は、歴史家、政治哲学者であるハンナ・アーレントによって書かれ、1963年に初めて出版された書籍です。同著はアーレントがニューヨーカー誌のために行った、ホロコーストの主要な組織者であるアドルフ・アイヒマンの裁判の報告から生まれた歴史分析と哲学的な作品です。アイヒマンの裁判は1961年にエルサレムで行われました。

「エルサレムのアイヒマン」の主要な貢献は、アーレントが「悪の陳腐さ」と表現したことの明解化にあります。悪人を悪意あるあるいは悪魔的な個体とする従来の概念に反して、アーレントは、歴史上最大の悪行は狂信者や反社会的な人々によってではなく、むしろ自身の国家の前提を受け入れ、自分たちの行動が正常であると考えながら参加する一般的な個人たちによって行われたと主張しました。

アーレントによると、アイヒマンは特に注目すべき点のない役人で、彼の行動の道徳的な意味合いよりも職務の秩序立った実行と、組織内での昇進を気にしていました。つまり、アイヒマンのように怪物でも本質的に悪い人間でもない私たちのような一般的な人間が、私たち自身が一部となったシステムに疑問を呈さず無批判のままに行う仕事や作業によって、残虐且つ怪物のような行為を犯すという指摘をしているのです。

この概念は、悪の性質と個人の責任についての従来の概念に挑戦し、ホロコーストのような虐殺が少数の悪人の行動だけでなく、多くの一般的な個人の不作為と無関心によっても可能となることを示唆しています。システム的な悪や官僚的な圧力に直面しても、個々の道徳的な判断と個人的な責任の重要性を主張しているのです。


コミュリーマンの例

  1. 現在の職へ転職した約3年ほど前、私の部署ではマウンティングやパワーハラスメントなどによるイジメが横行していました。私自身も晒されることになりましたが、ミスなく作業をこなし、誰よりも実績を上げることで1年半でトップに立ったことで、誰からも嫌がらせを受けることがなくなりました。そして「おかしいものはおかしい」と声に出し続けたことで、今日ではとんでもなく明るく和気藹々とした職場となりました。(ここ1ヵ月はめちゃくちゃラディカルかつドラスティックに追い込をかけましたよ!本当、ここまでくるのに時間かかったー!)

  2. 他部署の離職率低下にコミットし彼らと伴奏しています。やることは端的です。①現行のシステムをクリティカルに批判し問題点を炙り出す。②現れた問題点を解決するために必要なリソースについてのアイデアを、ブレインストーミングでとにかく出しまくる。③トライ&エラーでとにかく試す。④アイデアを少数の候補に絞り、最小人数3名のキーパーソンにプロジェクト入りをしてもらう。(3名いなければ面にならないため。2名だと線、1名ではただの点)⑤リソースを活用してプロジェクト開始。⑥あとはOODAサイクルとPDCAサイクルというマクロとミクロのプロジェクトサイクルで回してもらう。(すみません!カタカナいっぱい使いました!ググって!)

  3. 2023年7月4日、とある部署で数十名が一日5分間の無賃就業をしていることが発覚。今はこの問題の解消に努めだしました。(え?あなたの仕事は講師だよね?←できる奴がやりゃあ良いよ、今は。問題発見、課題解決、よりよい改善ができたら次!)




僕の武器になった哲学/コミュリーマン

ステップ1.現状認識:この世界を「なにかおかしい」「なにか理不尽だ」と感じ、それを変えたいと思っている人へ

キーコンセプト④.悪の陳腐さ

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