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「リンナイ、高齢者用ガスコンロ 絵文字や配色で安全操作」に注目!

リンナイ、高齢者用ガスコンロ 絵文字や配色で安全操作 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

リンナイが2月、高齢者向けのガスコンロを発売しました。デザインや配色を工夫して、認知能力が衰え始めても使いやすいようにしたのが特徴です。電気で加熱するIH式ではなく、なじみのあるガスコンロを使い続けてもらう狙いです。取引先からの要望をもとに開発に取り組み、商品化にこぎ着けました。

リンナイが発売した「SAFULL+(セイフルプラス)」は左右のコンロとそれぞれの点火スイッチに同じ色を使って、操作をわかりやすくしました。ゴトクを大きくして、鍋をバーナーの中央に置きやすくするなど、特徴のあるデザインです。

開発のきっかけは取引先の声でした。「今のガスコンロではまずい。どんどんIHへの切り替えが進む」。福岡市の九州支社で営業を担当する伊集院章さんは2021年、地元の都市ガス大手・西部ガスの担当者からこう言われました。高齢者の認知能力が衰え始めると、家族らが火事を恐れて電気調理器に切り替える事例が増えていました。

IHコンロが増えれば、ガス会社もガスコンロメーカーも売り上げが減ります。またIHコンロに切り替えた高齢者のなかには、操作に慣れずに料理を諦める人もいるといいます。西部ガスは、認知能力が衰え始めても使いやすいガスコンロの開発を何度も依頼。伊集院さんは名古屋市の本社にこの要望を伝えたとのことです。

「厳しいお題だ」。本社で営業企画を担当する中野一志さんは、伊集院さんの話を聞いて困惑しました。認知症が進行した高齢者を想定し、事故のリスクが気になりました。そもそも認知症の当事者だけを対象にすると、顧客が限定されるため収益もあげにくいです。

中野さんは福岡市で関係者の声を聞くことにしたそうです。市や西部ガスなどの産官学が、認知症当事者が暮らしやすい街をつくる枠組み「福岡オレンジパートナーズ」の会合に参加。市の担当者からは「当事者を1人でも救えればいい」と言われました。中野さんは認知症に限らず、高齢者全体をターゲットにすることを決め、プロジェクトが動き始めました。

厨房機器設計室の加藤定基さんも福岡市を何度も訪れました。まず、医療系コンサルティング会社のサービスを使って、認知症当事者の視覚を拡張現実(AR)ゴーグルで疑似体験しました。「視野が全体的にぼやけて距離感がつかめないうえ、色の区別がつきにくい」と気づき、コンロの設計やデザインの見直しに着手しました。

開発のカギはモニター調査でした。オレンジパートナーズの枠組みを通じて、普段から料理をする70歳代〜90歳代を中心とする認知症当事者(軽度から中等度)40人が参加。リンナイのコンロを使ってもらいました。

ただ通常のモニター調査とは違い、使った感想をうまく説明できない人が多いです。加藤さんは、操作を間違えたときの視線やしぐさを徹底的に観察。なぜ間違えたのか、どう変えればいいのか、を考え続けたそうです。

最後にデザインに落とし込むのはデザイン室の山田勇雄さんです。「いつもは美しさを追求するが、今回は情報の序列を意識した」と話します。認知能力が衰えると情報処理能力が落ちるため、コンロに表示する文字や記号の量は絞り込む必要があります。加えてピクトグラム(絵文字)よりも文字があるボタンを先に触ろうとする傾向もあります。

そこでよく使う機能だけを文字で表示し、あまり使わない機能はピクトグラムで説明しました。操作を無効にするロックボタンはもともと文字で書いていましたが、最初に触ってしまう人がいたため、鍵マークのピクトグラムにしました。火の強さを調整するレバーも「強」「弱」という文字表記から火のピクトグラムに変更しました。

通常のコンロにはない説明をあえて加えたところもあります。モニター調査では点火スイッチの戻し方がわからなくなる人がいました。そのため2つのスイッチそれぞれの隣に「ボタンの戻し方 下に押し込む」という文字とイラストを付けた。細かい工夫を重ねたことで、最終回のモニター調査では参加者全員が調理を終えることができ、商品化が決まりました。

「どこで実物を見られますか」「安全性はどうやって確保していますか」。発売を発表すると消費者から本社などに問い合わせが相次いだそうです。九州支社にも70歳代の元気な高齢者から「今は大丈夫だけど将来が心配。こういう商品を待っていた」という声が届いたそうです。

九州支社の伊集院さんは「認知症になる前にガスコンロの使い方を体で覚えておきたいというニーズがこれほどあるとは」と手応えを実感しました。リンナイは今後も利用者の声を聞きながら機能の改善を重ねる考えです。

リンナイの「SAFULL+」は間違え防止のカラーリングや大型ごとく、聞き取りやすい音声案内により、操作間違いや火の切り忘れなど、ガス火調理の不安を解消し、シニア世代が毎日の健康な暮らしを続けられるようにと開発したガスコンロです。

ボタンの色だけではなく、バーナーまわりのパーツを黒一色で統一することで、コントラストで炎が見えやすくする等の細かい部分にも気を配っていると感じました。

今後少子高齢化で火を使うことを躊躇される方も増えていくと予想されている中で、今までと変わらない調理体験を提供するリンナイの取り組みに期待しています。