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「ダイキン、インドから南半球攻略 低価格で真っ向勝負」に注目!

ダイキン、インドから南半球攻略 低価格で真っ向勝負 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

空調世界首位のダイキン工業がアフリカなど「グローバルサウス」の攻略に乗り出します。省エネ技術と巧みなM&A(合併・買収)で成長してきましたが、空白地が多い南半球では、低価格機種を得意とする中国メーカーとの真っ向勝負が待ち構えています。2024年10月に創業100年を迎えるダイキンは、インドでコスト競争力を磨き、次の成長に向かいます。

「新工場の準備を進めてほしい」。十河政則社長は2023年11月、インド子会社の幹部に号令しました。その4カ月前には南部のスリシティで同国で2カ所目の工場を稼働させたばかり。30万平方メートルの広大な敷地に、約200億円を投じます。立ち上げと並行して、3カ所目の工場の立地選びを急ぎ、2027年の稼働を目指します。

インドの空調市場は急拡大しています。日本冷凍空調工業会によるとインドの家庭用エアコン市場は2022年に740万台と、2年で7割増えました。2000年に進出したダイキンは業務用で6割、住宅用で2割のシェアを持つトップメーカーです。スリシティ工場が本格稼働すると年産300万台が視野に入り、十河社長は3カ所目の工場で「500万台体制を確立する」考えです。

ダイキンがインドで能力増強を急ぐのは「グローバルサウス向けのエコシステムをつくる」(印子会社のカンワル・ジート・ジャワ社長)ためでもあり、インドで素材や部品の現地調達を進め、アフリカ向けの輸出拠点に育てます。

2023年8月にはアフリカ中部のナイジェリアの代理店の拠点で「ノックダウン」生産を始めました。インドから部品を輸送し、圧縮機や熱交換器を組み立てます。アフリカ北部でも拠点開設の準備を進めています。

ナイジェリアで生産技術を指導するのはインドで鍛えられたエンジニアで、グローバルサウスではヒトもモノも日本発ではなく、インドを核に戦略を描きます。

3月、インドのデリー近郊で新しい研究開発拠点が稼働します。2万平方メートルの拠点に60億円を投じて最新鋭の試験設備を導入します。まず取り組むのが、社内で「インディゴモデル」と呼ばれるアフリカ向け新機種の開発で、印子会社の永守朗取締役は「現状からコストを2割引き下げることが狙いだ」と明かします。機能を絞り込むことで、アフリカでは4万〜5万円程度のエアコンの販売を目指します。中国の珠海格力電器などが先行する市場ですが、価格と省エネ性能などで対抗します。

ダイキンは10年から空調機器売り上げで世界首位に立ちますが、台数ベースでは中国メーカーにかないません。格力や美的集団の生産規模は年3000万台程度とみられ、ダイキンは年1000万台ほどです。

世界170カ国以上で事業を展開しているダイキンの強みは省エネ性能を武器にした高価格帯機種で、低価格のボリュームゾーンは「正直、苦手」(十河社長)です。しかし、アフリカや南米などのグローバルサウスでは、中韓勢とボリュームゾーンで真っ向勝負します。起点となるインドには、実は関税措置などの影響で中国メーカーが入り込めていません。

中国勢の強みは年4000万台ほどある巨大な国内市場で培ったコスト競争力ですが、インドの空調市場も2030年代には中国と同規模に拡大するとの予測もあります。ダイキンの井上礼之会長は「インドを中心に世界戦略を考える時代が来た」と語ります。

ダイキンは売上高の8割以上が海外です。米国では2012年に住宅用空調のグッドマン・グローバルを買収し、欧州では、ヒートポンプ暖房の政策提言に取り組んでいます。

十河社長が苦手とコメントした低価格のボリュームゾーンの展開をどのようにスピード感を持って展開していくのか。低価格のボリュームゾーンでも、しっかりとルール作りができるのか。今後のダイキンの取り組みに期待しています。