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「おいしい減塩食、うま味を活用 高齢者完食で活力維持に」に注目!

おいしい減塩食、うま味を活用 高齢者完食で活力維持に - 日本経済新聞 (nikkei.com)

塩の代わりにアミノ酸といった「うま味」成分を料理に使い、高血圧対策につなげる動きが広がってきました。「おいしく減塩」を可能にする手法に、大学など研究機関では効果の研究が進みます。介護現場だけでなく家庭でも取り入れられる商品やサービスが登場しています。

「塩が減っても効いていない感じがしない」。静岡県磐田市の介護老人保健施設「さくらの苑」に入所する青野幸江さん(97)は昼食を残さず平らげました。腎疾患を患い、入所した2年前は収縮期血圧(上の血圧)が160以上で高血圧症の基準の140を上回り、体調が優れない日が続いたそうですが、現在は140前後まで低下し、食欲も回復したそうです。

この日の献立は太刀魚の塩焼きにわかめご飯、しいたけの味噌汁など主菜副菜6品。しょうゆなど調味料を7割減塩しながら、うま味のもとになるアミノ酸をほぼ100%残す「脱塩機」を使っています。献立中の食塩摂取量は1日5.5グラムで、国が目標とする7グラムを下回ります。

施設を運営する医療法人理事長の鈴木勝樹医師は「食が細り体が弱る人が多い。残さず食べることで活力を保ち、血圧を下げる効果も表れている」と実感しています。

脱塩機は電極と触媒、特殊フィルターで調味料から塩を除く装置。触媒を通じ食塩を除去する一方、特殊フィルターはアミノ酸を通さないためほぼ残ります。開発した配食業のウェルビーフードシステム(静岡市)は「おいしさも求める減塩の需要は医療・介護の現場で確実に増える」(川口尚宜専務)とみています。

NPO法人うま味インフォメーションセンターによると、主なうま味成分はアミノ酸の一種で昆布や野菜、肉、魚などに含まれるグルタミン酸のほか、核酸の一種でカツオ節などのイノシン酸、干したキノコに多いグアニル酸があります。減塩への活用は2000年代に研究が活発化しました。

福岡女子大学の早渕仁美名誉教授は全国の20〜80歳代の約650人に、濃度の異なる3種類の食塩水と、それぞれグルタミン酸を加えた計6種類の食塩水を味見する実験を実施。グルタミン酸を添加した方が塩味やおいしさを感じる結果が得られたとのことです。

東京大学の野村周平特任助教は「うま味への置き換えで国内の1日平均食塩摂取量を22.3%削減も可能」とする研究を2023年に発表しました。

食品メーカーもうま味を活用した減塩商品を充実させます。味の素は2020年に「スマート塩(スマ塩)」プロジェクトを立ち上げアミノ酸を使った調味料や活用法をインターネットで発信しています。

なお、日本高血圧学会は高血圧の有病者を4300万人と推計し、脳卒中や心臓病、腎臓病予防として対策の重要性を訴えています。高血圧治療ガイドラインなどを通じて低塩調味料や香辛料の活用をはじめ、生活習慣の改善を呼びかけています。

国は健康づくり運動の指針「健康日本21」で、目標とする20歳以上の1日あたり平均食塩摂取量を2012年度までは10グラムとしていましたが、2013年度に8グラムに引き下げました。2024年度からはさらに7グラム未満に引き下げます。

味の素グループは「妥協なき栄養」を提唱しています。近年、生活習慣病、不足栄養、過剰栄養といった人々食とライフスタイルに起因する健康課題、中でも「不足栄養」と「過剰栄養」の問題が混在する「栄養不良の二重負荷」が世界中で増大していることが背景にあり、その課題解決のために、たんぱく質摂取を上昇させ、おいしい減塩や減糖、減脂で塩分等の過剰摂取を減らす取り組みを推進しています。

特に日本を含むアジアではWHOの推奨している1日5グラム未満の2倍以上の国が多く、リスクが高いことが問題となっています。さらに、減塩は難しいと感じることがあり、うま味を活かしておいしさをアップすることで「おいしい減塩」を実現させようと研究に取り組んでいます。

味の素の「妥協なき栄養」で多くの人の健康寿命の延伸の取り組みに期待しています。