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「工場の省エネ、高効率モーターから 日立系や三菱電機系」に注目!

日立製作所系や三菱電機系の工場、省エネへ高効率モーター開発 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

工場で動く産業機器向けモーターの効率を高めて省エネにつなげようという動きが出ています。昨年、欧州でモーターの効率性に対する規制が始まったことで切り替えの機運が高まり、日立製作所や三菱電機傘下の企業が高効率モーターの開発に力を入れています。今夏以降は電力料金の高騰も予想されるなか、高効率モーターの需要は高まりそうです。

日立製作所子会社、日立産機システム(東京・千代田)ドライブシステム事業部の開發慶一郎氏は「工場の省エネの課題に向け、顧客企業も高効率モーターへの置き換えを考え始めている」と話します。

モーターは電気エネルギーを機械エネルギーに変換する機器で、洗濯機や扇風機といった家電だけではなく、工場で使用するポンプ、コンプレッサーといった産業機械にも使用されています。産業機器向けは国内では日立産機システムや三菱電機と東芝が出資するTMEIC(旧・東芝三菱電機産業システム)、明電舎、富士電機などが製造します。

産業機器向けモーターは普段目にする機会の少ない部品ですが、消費電力量は大きいです。日本電機工業会(JEMA)によると産業用モーターの年間消費電力は、産業部門の消費電力量の約75%を占めます。また、ライフサイクル全体のコストのうち、電気代が97%を占めます。効率の良いモーターへ置き換えれば、消費電力や二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えることにもつながります。

モーターは供給した電力のうち、有効に使用した割合を「効率性」として数値で表します。汎用的な機械に使用するモーターでも9割を超えるものもありますが、熱の発生や回転により効率性が減ってしまいます。日立産機はモーターの中心部分に使う材料を工夫し、損失を2割程度削減できるよう工夫します。「顧客の要望を聞き取りながら、省エネルギーを実現する取り組みが欠かせない」と開發氏は言います。

高効率モーターの普及をさらに後押しするのが、CO2の削減量を減らそうと、欧州で2023年7月に始まった「EUエコデザイン規則」です。75キロワットから200キロワットの出力のモーターを使用した設備を購入する際、最高効率を達成する「IE4」と呼ばれる基準を達成したモーターを選ぶよう義務付けられました。

1世代前の基準の「IE3」とIE4で比べた際、モーターの効率性は1%ほどしか変わりません。しかし1台あたりの稼働時間で換算すると、年間20万円の電力代金の低減につながり、CO2の削減量は4トンにのぼるとの試算もあります。

国際電気標準会議(IEC)の2021年のデータによると、IE4のモーターは世界でわずか2%。IE1やIE2など古い基準に対応したモーターが世界の6割を占めます。

TMEICの回転機システム事業部の酒井浩氏は「モーターの初期投資はかかるが、中長期で見れば脱炭素経営につながる」と話します。同社は2024年2月から「省エネメリット計算アプリ」の配信を開始しました。最新の高効率モーターを導入した場合の電気代やCO2の削減量、社内炭素税を入れたケースでのコストなどを簡単に計測できるサービスを始めました。規制について、欧州に続き米国や台湾でもIE4の導入に向けた議論が進んでいます。モーターの動向に詳しいJEMAの技術戦略部の小川晋氏は「中小企業ではモーターを最新の製品へ置き換える資金的な体力がない。補助金などの議論も必要になるだろう」と指摘します。日本では規制の導入時期について明確にはなっていませんが、企業側が今後対応を求められるのは間違いありません。

モーターをはじめ、産業機器では電力消費を抑える製品の開発が進みます。今後、製造業全体で消費電力や二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えるためには、どういった施策が必要になるのか。エネルギー政策に詳しい日本総合研究所の瀧口信一郎シニアスペシャリストに聞いた記事です。

工場の電力消費やCO2削減の取り組みについては、「エネルギー価格の高騰を抑える取り組みから、企業側はサプライチェーン全体でCO2排出量を算出する『スコープ3』を気にするようになった。排出量の削減に向け小水力や太陽光発電といった再生可能エネルギーを活用するなど、グリーントランスフォーメーション(GX)経営が当たり前になってきた」
「従来は統合報告書のアピールのため工場の電力量の削減が語られてきた。今ではより実用的で、いかに利益を生み出せるかといったビジネスとしての視点が加わった。これは1年間で大きく転換した点だ」と日本企業の取り組みを評価しています。
世界の機器別消費電力量のうち、モーターの割合は5割を占めます。今後、どういった取り組みがメーカーには必要かについては、「モーターは空調、電気系など工場内のあらゆるところに使われている。高効率モーターの製品も相次ぎ、さらに消費電力を削減するにはモーターの稼働や制御での新技術も求められるだろう。例えば、太陽光発電の価格を考えながら、細かにモーターを制御する技術なども考えられる」とのことです。
今後、電力消費やCO2排出の削減に向けて工場が主体的に取り組むべき施策については、「現状、多くの企業や工場では排出量をいかに減らすかに目が向いているものの、それだけでは遠い未来のつまらない議論に終始してしまう。CO2を再利用する『カーボンリサイクル』を考えた前向きな産業育成も必要だ。プラスチックの製造をCO2由来にする、再生航空燃料(SAF)にCO2を使うなどが挙げられるだろう」
「ただ、再エネの導入や環境に配慮した燃料への転換は組織間の壁がある。工場を運営する現場にとっては排出量の削減より、安定した操業が優先される。マネジメントが方針を決めて強い指示を出すなど、企業内の構造的な問題にも目を向ける必要がある」とコメントしました。

日立産機システムはサーキュラーエコノミーの実現に向けて、グリーン x デジタル x イノベーションを成長ドライバーとして掲げています。特に工場などでの省エネルギーに貢献する「省エネ・高効率型」製品群と、環境への負荷軽減に貢献する「環境配慮型」製品群を総じてグリーンプロダクトとして取り組みを行っています。一例として、約20年前のインバータスクリュー圧縮機と比較して、最新の高性能な圧縮機では29%のCO2排出量を削減できるそうです。

より付加価値の高い製品で省エネを追求する日立に今後も期待しています。

※文中に記載の内容は特定銘柄の売買などの推奨、または価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。