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不動産投資の本質とは?


はじめまして!

 みなさん、はじめまして!藤井眞と申します。
私は建築家として一級建築士事務所を営んでおりますが、同時に不動産投資家として不動産開発も行っております。築古物件から新築まで幅広く対象にしていますが、主な手法は物件に付加価値をつけて利回りを上げることを得意としています。その敷地だけではなく、地域特性をも考慮した企画設計を行うことでその地域や物件の価値向上を画策する一風変わった手法をよく行います。自分の物件だけが良ければよいのではなく、地域も考慮に入れることで地域の価値があがり、結果的に自分の物件の価値も上がるという総合的な視点で展開しています。

不動産投資を始めたきっかけ

 数ある投資の中でなぜ不動産投資を始めたかといいますと、長年建築業界に従事しているため、他の投資より業界の内情をよくわかっていることももちろんですが、なにより不動産投資は他の投資と異なり自らの努力で物件の価値を上げることが出来る点につきます。建築家である私は敷地や建物の魅力を最大限に引き出すことを得意としている職種なので不動産投資は最適だったのです。また、一級建築士として日々、建築現場で監理を行っているため施工不良などのリスク管理においても経験があり、若いころには現場監督としての経験もあったのでコスト管理にも長けている建築士であることも有利な点だと思っています。
ただ、それらの条件がそろっているからといって多額の借り入れをしてまで投資をする理由にはなりませんでした。不動産投資の本を読み漁っても不労所得を得るためのスキームや金融スキームばかりで、正直に申しますとそういった投資手法に全く魅力的を感じませんでした。
 不動産投資に興味をもったきっかけは私が建築家の下で修業をしていたころにさかのぼります。当時現場監督をしていた私は、ある出会いがきっかけで建築家のもとで修業をすることになりました。業界では有名な方です。その時間はエキサイティングな毎日をすごしてとても楽しかったです。
しかし、意外に思われる方が多いですが給料はとても安い業界です。一級建築士の資格があり、業界経験もそれなりにある私でも一般的な中小企業の新卒の初任給よりもはるかに安い月給です。所謂、アトリエ系と呼ばれる日本の建築設計事務所においては丁稚奉公的な位置づけになっています。そして超絶ブラック企業であることが特徴の業界です。そんな業界であるため所員のほぼ全員が独立前提で入社してきます。有名な先生だったので海外の超有名大学院卒業といった優秀な人たちが沢山いました。そんな人達が日々精進しているような環境は周りについてくことも大変な日々でした。そこにいることが似つかわしくない私は入社できたことを感謝しながら夢中になって働きました。友人たちには「藤井は精神と時の部屋に入ったから連絡が取れない」と言われるほどです。
 そんな充実した日々が数年が経ち、仕事にも慣れたころにある疑問が生まれました。これほど優秀な人たちが集まって、世界的にも有名な建築事務所の給料がなぜこれほどまでに安いのか?建築家の先生だけが儲かっているようにも思いましたが、自身が独立してみるとよくわかりますが設計事務所は決して儲かるような業界ではありません。一方で我々が設計した賃貸住宅は近隣の相場に比べて高い家賃で貸すことが出来ています。さらに、人気の物件のため、空きが出てもすぐ埋まり何年たっても家賃が下がることは殆どありません。
 不動産投資を行っている今だからわかることですがこれほどの付加価値があることは投資家にとってとてつもない利益を生み出します。10年間のインカムゲインと売却時のキャピタルゲインの総額は一般的なアパートを建築した場合とくらべると数千万円の差が生まれたりします。建築家の創造する付加価値に対する対価があまりに低いのが日本の現状であることを知りました。海外ではありえない状況であることも知りました。
 これほどまでの利益を得ることが出来ることを知っているデベロッパーは喜んで建築家に依頼をしてきます。一般の不動産投資家はほとんどこの事実を知らないため建築家に依頼するという人はほとんどいません。結果、利益をごっそり抜かれた状態でデベロッパーから購入するような状況です。
 また、日本における建築士は激務の割に薄給であることが世界的に知られており、一級建築士試験の受験者は年々減っています。設計を生業とする一級建築士の内、20代は5,000人程度しかいません。さらに優秀な設計者はどんどん海外へ出て行ってしまう状況も続いています。海外だと建築家は高給取りの部類に入る職種なのでなおさらです。
 実際に私も設計を請負うより、土地を自身で購入して企画から自分でやった方がはるかに儲かります。設計としては同じことをしているのにその収益の差は10倍どころではないのです。
もちろん投資家は金銭的なリスクを背負っていますから、投資家がメリットを享受するのはあたりまえですが、そのバランスがあまりにも悪い事が最大の問題なのです。
自ら付加価値を創造する事が来出て、物件の価値を上げることのできるスキルを私はほぼ無償で提供していた事実に気がつき、そのスキルがあれば他の投資よりはるかに高い確率で収益を得ることが出来ると分かったことが、不動産投資を始めた最大の理由です。

最初の物件は築古フルリノベーション 

築50年、旧耐震、風呂なし物件

最初は半信半疑で小さな物件からやってみることにしました。築50年の旧耐震でお風呂もない物件、しかも前面道路に給水本管がないため、給水の引き直しには数百万円の出費を覚悟する必要がある物件です。しかし23区内、山手線の駅から8分程度の割には安い物件でした。一戸建てではそれほど利回りは出ませんが、長屋へ用途変更することが出来ればかなり良い利回りになりそうでした。長屋に変更すると戸数が増えるため現状の給水管では給水量が不足します。給水管の引直しが必須になるのですが、私は水道局が給水本管を引くための前提条件を知っており、この敷地がその条件をクリアする可能性が高いことがわかっていたので購入に踏み切りました。構造的にも腐食や傾きなどはなかったので建物的な不安はありませんでした。こういった診断を建築事務所は普通にやってくれますので皆さんも購入検討の際には建築士と物件を見学することをお勧めします!
近隣相場を調べたり、ニーズを検討してコンセプトを立案しそれを設計に纏めます。築古なのに新築の近隣相場より高く貸せたとしたら、改修費用は新築よりも安い費用であるため、当然に利回りは高くなります。もちろん住む人が安心して楽しく暮らせるような付加価値を提供できなければそれは実現しません。
この物件は上下階で住戸を分けるのでなく、建物を真ん中で半分にしてメゾネットタイプを2戸にしました。それは木造であることで音の問題が発生しやすいことを軽減できると共に、1階に土間スペースを設けることでアトリエ利用したり、自転車を部屋でメンテナンスしたりしてアクティビティを楽しめる賃貸をコンセプトにしていたためです。ガシガシ使ってもらえるように内装を簡単に交換可能な仕様にしています。また、その素材がエイジングする材料を選択することであまり交換も必要の無いデザインにしました。建物のロゴマークも自分でデザインしました。もちろん耐震補強も行いました。
 ソフトとハードの両方でさまざまな工夫と試験的な試みができたのも自分の物件だからですが、借り手がつくまではものすごく心配でした。。。
結果的には近隣の新築の家賃相場に比べて1万円ほど高く貸すことが出来ました。
築古戸建てとしてそのまま貸していた場合は10万円前後、この物件は長屋にしていますのでほぼ倍の収益になっています。結果的に利回りは9%弱になり、4年後に売却ををしました。インカムゲインとキャピタルゲインの合計で2,000万円弱の利益を得ることが出来ました。この物件のおかげで自信とキャッシュを得て不動産投資へ本格的に参入することになったのです。

アクティビティが楽しめる賃貸

後日談

この物件は新築当時、建売だったらしく隣に全く同じ建物がありました。お隣はすでに不動産会社が購入しており、早々に解体して新築工事がものすごいスピードで行われていました。しかし、パワービルダーが早く安く建てる手法ですので、近隣相場より安く貸出す結果になっています。賃料を安くするために安く作るというお決まりのパターンです。(私からすると、付加価値がないから安くしか貸せない建物という最悪の投資手法です。)
さらに後日談ですが、私が売却したころにお隣も売却に出されてました。価格はほぼ一緒でしたが。利回りは4%弱だったので売れ残っていました。私が前面道路に給水本管を通すことが出来たため数百万円予算が浮いたはずなのになんでこんなに利回りが低く販売されているかはご想像におまかせします。新築という意味では金融機関から融資は受けやすいとは思います。
でも付加価値がなくただ賃料が安いだけの4%弱のこの物件をあなたは購入しますか?

奥が私の物件、手前が不動産会社が買った物件
完成後:奥がお隣の新築、手前が私の物件

不動産投資の本質を理解する

 初めての物件で購入、設計、施工、賃貸、売却をすべてを行ったことで頭の中では理解していたつもりのものが確信に変わっていくのがわかりました。不動産投資は他の投資とは異なり、自分で付加価値を創造する事ができる唯一の投資です。それはつまり単なる投資ではなく事業といった方がよいかと思います。もちろんそれは頭ではわかっていました。金融機関も投資ではなく事業であるから融資するわけで。。
 我々建築家はクライアントに依頼されてその付加価値をハードの面でお手伝いをする仕事です。そのスキルは建築学科を卒業すれば身につくものでもなく、一級建築士だからできるものでもないのです。建築学科を卒業している方ならわかるかと思いますが、建築学科卒業で設計の仕事をしている人がどれほど少ないか。努力もして、才能があっても金銭的な理由であきらめた人もいる世界です。なぜなら給料が極端に安いからです。前述の物件を例にご説明すると、あの物件を単にクライアントから依頼されて設計とデザインをしただけだと私の受け取る金額は200万円ほどです。これは利益でありません。受け取ることのできる額面です。ここから構造事務所への外注費で50万円ほど引かれ、残りの150万円で事務所の経費、人件費などの諸費用を差引いた額が利益になります。ほとんど残らないどころか赤字です。なぜならリノベーションは調査費用などで新築よりも手間がかかるわりには設計費は驚くほど安いからです。設計開始から竣工まで約1年ほどかかるため年間で150万円しか額面で稼げない報酬では明らかに赤字です。設計事務所の所員の給料が安いのもあたりまえの話です。しかし一般的に1,000万円程度の改修費用に対する設計費として200万円を支払う人は少ないでしょう。払う側は高く感じるのに、もらう側は全く儲かっていない。これが設計時事務所の実情です。
 そういった経緯から私の設計事務所では設計だけを請負うということは、すでに止めています。不動産仲介、企画開発、設計を含めたコンサルタントフィーをご納得の上でお支払いいただける方のみと仕事をさせていただいている状況です。クライアント自身が受け取ることのできる収益が普通の施工会社やデベロッパーに依頼するのと比べてはるかに高く、しかも安全に高確率で得ることが理解できる方にとってはかなり安い費用だからです。それを理解できない人にとってはかなり高い設計費だと思うかと思います。実際に他社と比較して価格だけでお断りされたことも何度もあります。インスタントラーメンと特注ラーメンの差がわからずに同じ金額で買おうとする人にとっては私は無用の長物です。
 しかし、先も書いた通り、不動産投資の最大のメリットは物件の価値をオーナーの裁量で上げることが可能なことにつきます。それを一般的なスキームで大量生産の既製品を購入するなんて、最大のメリットを最初から捨てていることになります。あげくに、ハウスメーカーやデベロッパー、アパマン業者、工務店などの建設工事で利益を上げている会社に依頼をして、その下請けの設計事務所に建設会社任せでお願いするなんて愚の骨頂以外の何物でもありません。なぜならオーナーと建設会社は利益相反の関係にあるからです。専門的な知識が必要な分野では利益相反するプロを相手に素人がぼったくられる可能性は飛躍的に上がります。税理士や弁護士に依頼するようにまずは自分の味方に建築士を引き入れるべきであるはずなのに、「建築士に依頼すると設計費が高い」と思い込み、業者任せにした結果、様々なデメリットを被っていることを理解できていないのです。
 かぼちゃの馬車事件しかり、レオパレス21事件しかり、業者に騙されている根本原因の一つは利益相反しているプロにまかせっきりだからです。問題が発覚してから建築士を呼んでもすでに遅いのです。計画の最初に味方につけておくべきでした。。業者から出た少し安い設計費に目がくらんで多大なリスクと数千万の損失を被っていることを気づいてもいないわけです。
 もっと具体的な数字でお話をします。都内でRC造の新築の利回りと聞いてどのくらいをイメージされますか?仮に一般的に5%の利回りだとします。一方で同じ敷地で付加価値があることで6.5%になったとしたら、その収益の差が5年間でどれくらいになるか検討してみます。

物件価格1億円で購入した場合、5%の利回りなら年間家賃収入は500万円です。6.5%なら年間650万円です。

 一般的な物件は年間平均1%ほど家賃下落がありますので、5年後の家賃は475万円です。同で市況で売った場合475万円/5%=9,500万円で売れます。ざっくり5年間の家賃合計は2,450万円なので、売上合計は11,950万円になります。そこから購入価格の1億円を差し引くと1,950万円になります。(※金利とか自己資本とかは分かりやすくするため無視します)
一方で、付加価値のある物件は5年くらいで家賃は下がりません。650万円のまま5年間運用して5年後は5%で売却すると、650万円/5%=13,000万円で売れます。5年間の合計家賃は3,250万円になります。
なので、合計売上は16,250万円です。そこから同じく開発費の1億円を引くと6,250万円になります。超ざっくりとした計算ですが同じ敷地でもこれほどの違いがあります。
 不動産投資の特徴として最初に計画した数字以上に売上になることはほぼあり得ないです。勘の良い方はお気づきかと思いますが、前述の例のように周辺相場より高い利回りを確保できれば建物が出来てすぐに売却をしても3000万円の収益が得られます。かなり乱暴な計算ですがざっくりと計算しただけでもこれだけの差が出るのです。それでもまだ工務店、デベロッパー任せにしますか?
 ちなみにどちらの計画を選んでも現在の日本では設計費用は殆ど変わらないという衝撃のおまけつきです。少なくとも付加価値分の費用は日本においてはほぼ0円です。。
 一般的に経営において利益とは付加価値のことを指します。ファイナンス的なことは経営にとって重要なことではありますが、経営者がどのような付加価値を消費者へ提供するかを考えることの方が重要です。消費税還付スキームとか多法人スキームとか世間ではいろいろな手法が現れては消えていますがそれは経営戦略ではありません。そして不動産投資では世界で一つしかないその土地にどのような計画をするかで収益が決まってしまうのです。そんなあたりまえのことが行われていない一般的な不動産投資には全く興味がありません。一方でそんな感じの業界なので、きちんと時間をかけて企画を練ることでその勝率は飛躍的に上がるということも言えます。競争の激しい他の業界と比べると比較的、差別化が容易な業界です。以上の理由から不動産投資へ参入したわけです。
 そんな私が不動産投資をはじめて様々な経験をし、発見と驚きがありました。このブログでは経験を踏まえて、感じたことを感じたままに書いていこうかと思っています。おそらく普通の不動産投資の本とは異なる視点でお届けできるかと思います。たぶん。。


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