[2020東大SPH入試] 私が合格するためにしたこと

2020年度 東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻 専門職学位課程(以下,東大SPH)入学試験に合格しました.この記事では,合格に向けて勉強したことをまとめます.

なお,東大SPHがどんなところか,どんな入試を課すのか,といった内容は記しません.ただの記録です.

1. 自己紹介

東京大学の健康総合科学科(以下,健総)の学部生.いわゆる「ストレート」の「内部生」.

SPH受験にむけて,健総SPH志望生の数人で勉強会をしていました.

subjectの選択問題は「疫学,医学統計,予防医学,精神保健学,公衆衛生調査方法論」の5つのうち,解けそうな4つを解くことを考えていました.

2. 勉強の目標

受かること

具体的な目標:英語でうまくいかなくても,55%は取ること.
 英語:60/180
 公衆衛生一般:25/40
 統計:20/20
 subject:65/80
 小論文:30/40
 合計:200/360(55.6%)

英語で失敗したとしてもこれくらいあれば,まあ受かるのでは?と思い,ざっくりとした目標を上のように決めました.
私は英語に不安がありました.問題を解く際に,とても読みやすいと感じる場合と「理解できないな...」と思う場合があり,得点のばらつきが大きいであろうことです.そこで,英語で失敗しても受かるように,公衆衛生一般と統計とsubjectできちんと取れるようにすることを目標としました.


3. 勉強したもの,参考にしたもの

すべての科目
過去問
すべての基本は過去問です.過去問をまずはやってみて,その上で自分に不足しているものを勉強するほうが速いと思います.

Tootsie Rollさんのブログ,解答,質問箱  <- 本当に神です...!
言わずもがなですが,東大SPH受験ブログの中では,最上級に網羅的にまとまったブログだと思います.本当にお世話になりました.ありがとうございました!!!


英語
・LancetとJAMA
commentaryやopinionを中心に.読むだけでなく問題の自作もしましたが,これらの記事を題材に作成しました.
LancetはiPadのアプリで読んでいました.JAMAはopinionだけを検索できるので,気になるトピックや苦手な分野を検索して読んでいました.JAMAのEditor's summaryというpodcastも,個人的に好きです.

・単語帳アプリ
過去問や英文を読んで知らなかった単語をまとめました."Quizlet" というアプリに単語をじゃぶじゃぶ入れて,電車やお布団で見ていました.

公衆衛生一般
・『公衆衛生がみえる』
基本的に「過去問を解く,間違えたところをまとめる,まとめを見直す,過去問を解く…(以下ループ)」といった勉強をしていました.間違えたとことをまとめるために,『公衆衛生がみえる』を辞書的に使いつつ,厚労省などのwebを見る,といった形です.
勉強会メンバーを見ていると,私の公衆衛生一般の勉強量は少ない方だったように思います.この分野はなんとなく,嫌いでした.

統計
・統計検定2級の参考書『統計学基礎』
統計量,標準化,推定,検定をある程度理解できれば,おおむね過去問を解くことができると思います.

Subject
講義資料         <- 健総生はこれをフル活用できるのが強み!
疫学,医学統計,予防医学,精神保健学,公衆衛生調査方法論の対策.
講義の復習は英語の勉強としても役立ちました.なぜなら,講義内容と英語で扱われる題材はかなりリンクしているからです.

・学部講義の期末試験
SPH試験とかぶるトピックについて.やり直してよかったと思います.

・『公衆衛生がみえる』
予防医学のスクリーニングの条件などで,参考にしました.

『ロスマンの疫学』
疫学,医学統計の対策として.医学統計の問題の背景となる理論を中心に勉強しました.試験内容とかなりオーバーラップしています.subjectをきっちりやりたい方には必須参考書ではないでしょうか.とはいえ,訳本で読みにくいとも言われています.私は表面上だけ通読して,医学統計の問題をまとめるのに使いました(まだまだ理解不足な点だらけ).

小論文
・講義資料
Paragraph writingの書き方として参考にしました.paragraph writingで構成された文章を読み,批判し,自分でもparagraph writingで文章を書く講義があり,それと同じ考え方で小論文を書くためです.Topic sentenceを読むだけでわかる文章を書くことが重要だと思います.
医学系のparagraph writingを学べる本があれば,それでよいと思います.

・「必ずアクセプトされる医学英語論文執筆のコツ」
東大SPHの臨床疫学の康長先生が講演されたセミナーの資料を,パラグラフの構成を考える上で参考にしました.書籍版は読んでいませんが,きっとそれほど大きくは変わらないと思います.

そのほか参考にしたもの
・『わかりやすいEBNと栄養疫学』
疫学の基本となる知識がまとまっていると思います.

4. 勉強したこと

過去問+Tootsieさんの解答
2周 + subjectを中心に,間違えた問題や難しい問題をもう1周
1周目では,過去問の横にTootsieさんの解答を添えて勉強し,理解できない点をまとめました.この時点では,Tootsieさんの解答をかなり鵜呑みにしていました.
2周目に解くときは,「鵜呑みにしちゃダメだ.自分の理解を確かめないと.その上,どうやらTootsieさんでも説明不足であったり,間違っていることがあるらしい」と気付き,Tootsieさんの解答に対して批判的に考えながら問題を解きました.批判的に考えるには,英語では緻密に精読すること,subjectでは理論の学習が必須でした.そこで,上記の「勉強したもの」を使いました.
3周目では,subjectの自分なりの完璧な答案を作ってみたり,自分に説明することを意識しながら解きました.

勉強会の質問と教え合い
健総のSPH志望者で勉強会を週1回ほどで開き,疑問点を質問し,教え合っていました.他人の疑問点を知ることで,自分の気付かなかったポイントに目が向きますし,自分の理解の不足点もたくさん知ることができました.
みなさん,本当にありがとうございました.

英語の問題の自作
英語に不安があったため,英語試験のような形式で問題を自作しました.
いざ自作をすると,「簡単な問題しか作れない...」という状況になりました.そこで「何が私にとって難しい問題になるのか?」という問いを投げかけて,文章全体を網羅的にまとめるような問題や,抽象的な問題を作ることを心がけるようにしました.
問題の自作をすることで,自分にとって「難しい問題とはなにか?」を意識できるようになり,問題を解く上でも役に立ったと思います.「この問題難しいな...」と感じた際に,何をすればいいのかを冷静に考えることができるようになったように思います.ただの自己満足かもしれません.

講義資料の復習とまとめ
SPH入試では,健総の講義で扱ったことがほぼそのまま出題される場合があります.そこで,関連する講義内容を復習し,まとめました.


5. 感想

試験勉強に関して,感想を3点.

はじめに,Tootsieさんは偉大だと強く感じました.「批判的に」なんて大口を叩いて大変恐縮ですが,Tootsieさんがいるからこそ批判的に考えることが可能になるんだと思います.また,内部生であっても知り得ない情報がまとまっていますし,心強いなんて言葉では言い表せません.質問箱でも何度も質問し,数回ほど議論させていただきました.あれほど勉強している方に自分の意見を申し上げるのは,とても貴重な体験でした.本当にありがとうございました

2つ目に,勉強会の存在は非常に大きいものでした.単純に質問し,質問されることで,自分の着眼点が広がりますし,教え合うことで自分の理解を深めることができます.また,モチベーションを維持し,高める上でもとても助けられました.ありがとうございました.

最後に,subjectを対策する上で疫学・生物統計学の理論の学習は重要だと思いました.私は理論を学ぶことで,出題者の意図の把握に役立つと考えます.ただ解いているときには理解できなかった問題について,問題の背景理論を学ぶことで,出題者の意図を初めて理解できたことが多々ありました.しかしながら,理論の学習には時間がかかる割にそれほどpayされないので,万人にはおすすめしません.私は健康総合科学科生なので,「疫学・生物統計学の基礎知識をある程度は把握している」という状態から試験勉強を始められました.もし,この前提知識がなければ,理論を学ぼうとは思えなかったでしょう.subjectに対してどれくらい時間を割けるか,どのくらいの基礎知識を有しているかで,理論の学習の価値は変わってくると思います.


6. 最後に

大変長い記事を読んでいただき,ありがとうございました.

今回の内容は「健総生」である私がどう勉強したかをまとめたもので,いわゆる「外部生」の方にはあまり参考になるものではないかもしれません.例えば,講義資料は大事だと私は思いますが,外部の方は資料をそもそも持っていません.その他にも,『ロスマンの疫学』は疫学の基礎知識が無い方にとってはおそらく難しく,オススメできない本です.「外部生」とひとくくりにすることはできませんが,私の記録には参考にできないこともたくさんあると思います.

講義資料に代替するような本やwebサイトがあれば,外部の方にとって役に立つだろうと思いますが,健総の教授陣(そして東大SPHの教授陣でもある方も多数)の講義に代替できるものは無いだろうとも思います.講義で体験したことは,私にはかなり強く残っています.この辺はとても難しい線すね....内部生である私には,東大SPHを外部から受験することの難しさを「とてつもなく大変なんだろう」と想像することが精一杯で,それ以上正確に想像がつきません.

とはいえ,英語の得点の期待できる範囲を明らかにし,公衆衛生,疫学,統計の知識のレベルを整理し,その上で勉強方針を組むことは全員にとって重要なことだと思います.もし参考にできることがあれば,私の記録もご活用ください.

長々とした文章にお付き合いいただき,大変ありがとうございました.
来年度以降受験する方を心より応援しております.

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