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ワクチン開発

国内でも新型コロナウイルスの感染者数が急激に増え、徐々に厳しい状況を迎えつつありますが、収束に向けた光も少しづつ見えるようになってきました。ワクチンの開発です。

WHOのまとめによれば、約50種類のワクチン候補が臨床試験を実施しているとのことですが、その中でも2021年前半の承認が見込まれるものを整理しました。


中でも、先頭を走っている米ファイザー/独ビオンテックのワクチン(BNT162b2)と、米モデルナのワクチン(mRNA-1237)は大規模なPh3試験で非常に高い有効性を示したことが報じられており、欧米では年内の承認も見込まれています。
これらは、いずれもメッセンジャーRNA(一般的にmRNAと書かれることが多い)によるワクチンになります。

ご存知の方も多いかと思いますが、これまでmRNAによるワクチンの承認例はありません。では、このmRNAワクチンがいったいどのようなものなのか、簡単に紹介したいと思います。

その前に、一般的なワクチンとは何か、ここでおさらいです。


通常、体の中の細胞でウイルスが増殖すると、免疫細胞がウイルスの表面の一部分を抗原として認識し、ウイルスの増殖を防ぐ抗体を産生したり、ウイルスに感染した細胞を死滅させることで、ウイルスを排除します。

しかし、免疫の活性化にはウイルスを認識して、体内で必要なタンパク質を作り出す時間が必要です。
そのため、体内でのウイルスの増殖に免疫が追いつかない場合に、ウイルスによる重篤な症状が出てきてしまうのです。

ワクチンは、あらかじめウイルスの一部分を体に取り入れ、体内で免疫反応を起こさせることで、ウイルスが侵入した場合にすぐにウイルスの増殖を抑えることができるようにするものなのです。

これまでのワクチンはウイルスを不活化した一部分を培養していたのですが、これは人工的に合成できるものではないため、ワクチン開発に長い時間がかかります。
そこで、mRNAワクチンというものが考え出されました。
mRNAは、DNAの一部をコピーしたものであり、体内ではDNAに記録されたたくさんの情報をこのmRNAに映し取り、タンパク質を作っていきます。すなわち、DNAがすべての人の設計図を記録した1冊の本なら、そこから一つひとつのタンパク質のレシピを抜き出したのがmRNAです。
DNAがあれば、mRNAは何度も作ることができるので、mRNAの寿命はそれほど長くありません。必要な分のタンパク質が作られれば、mRNAは体内で速やかに分解されます。

前置きが長くなりましたが、つまり、mRNAワクチンとは、ウイルスの一部分のタンパク質のレシピになります。
このワクチンは、体内でウイルスのタンパク質を作り出します。そうすると、体内ではウイルスのタンパク質が増え、それを認識して免疫反応が起こり、ウイルスのへの準備ができる、ということになります。

また、mRNAは先ほど説明したように、体内でたくさん作られ、そして分解されていきます。そのため、体内で免疫反応が起きたあとには、比較的速やかに分解されるため、ずっとウイルスのタンパク質が作られることはなく、副作用も少ないと考えられています。
それに加えて、mRNAは人工的に合成できるため、製造期間もかなり短縮できます。異なるウイルスに対するワクチンも製造方法がほとんど同じで作れることから、今回有効性及び安全性が確認されれば、今後はmRNAワクチンが主流になるかもしれません。

このように、mRNAワクチンは非常に期待されているワクチンではありますが、これまでに実績のないワクチンでもあるため、臨床試験の結果から有効性/安全性を考慮した上で承認される、というステップを踏んでいるのです。

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