見出し画像

足りないものを数える、過ぎる。

薬をうまく割れるようになったのは何歳の頃だっけか。

サーカス団も疲れ果てて眠りにつく濃紺の空。大理石を磨いて磨いて光らせたような小指の爪くらいの月がぽとんと置かれている。寂しくないのかなと私は思ったけれど、そう思うのは私が寂しいからだ。

光を見てしまったら光の全てが知りたくなるし、三次元と二次元に囚われている私は四次元のことも気になるし、気になることはどの教科にもいくらでもあるのに、どうして進路なんてすぐに決められるんだろう?でもどうせ迷うのなら好きな子と同じところに行きたいと思う私はいずれの私の首を絞めているのでしょうか。いつかは後悔の楔を打ち付けることになるのなら好きな子のせいにしたい。嘘です、好きな子のせいにしたくないから自分で決めたい、本当は。

こんなに落ち込んでいる種のひとつは進路だけれど、もうひとつは好きな子の声を初めて無視したことだ。しかも、意図的だった。

情報でパソコンが全く使いこなせず落ち込んでいたことに加え、好きな子の顔を見られず私に向かって話しかけてくれているのかわからなかったからだ。はいはい。言い訳です。そのあと好きな子は隣の子に話しかけていてはじめて自分がいつも一番に話しかけられていることに気付いたよ、ただあたしが反応しているからというのと距離が近いからだけだろうけど。

ため息をつく。よく考えなくても席が近い頃めちゃくちゃ仲良くなかった?仲良くないと思ってたけど後頭部デコピンされたし通ったら手で通せんぼされたし前髪かきあげるのも許してくれたし?これを私にはもったいない幸せだったと言わずしてなんていうんだよ〜もう無理だよ、無理じゃない、お前の頑張りだろ、と拳に爪を立てるけれどむなしい。今の気持ちはひどくむなしいです。よく胸に穴が空いたような気持ちと形容されることがあるけれど、空くものも残っていないんだよ。吹く風もなく抜け落ちた塊すら知覚出来ずそのまま埋められてしまいたい。あなたの目に殺されたい、月のない夜に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?