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ほぼ漫画業界コラム57【成功した漫画家とお金】

昨晩は大成功した漫画家さんとお酒を飲んだ。そしてお金の話になった。だからお金について考える。そして何を持って大成功なのかも考える。とりあえず僕が知っている漫画家の多くは、成功しても変わらない。ちょっと住むところが高いマンションになっているぐらいだ。たまにブランドものにハマる人はいる。男性は時計、女性はブランドバック。数百万の時計やブランドバックを買うためにお店に通い、顔馴染みになり、それらを手に入れる。お金だけでは買えないらしい。信用を作っていかないと買えないらしい。

僕はそれらに本当に興味がない。ブランド側が作った戦略にまんまとハマっているようで僕は辟易する。もちろん時計が投資だというのならわかる。しっかり通って時計を手に入れよう。僕なら倉庫に入れたまま、一度もつけずに高値で売り払うだろう。なら時計である必要はない。投資商品でいいだろう。もちろん僕など成功したとはまだ言えないが、自分が書いた作品の印税を僕の年収とするならば少なくともサラリーマンの時よりは、数倍には跳ね上がった。もちろん、これは会社を回す資金にしているし、育成中の社員の人件費に消える。ただ、それも僕がやりたいからやっているので、以前よりも自由にお金が使えるようになったということは間違いない。

だが、僕はブランドものもいらないし、住むところも今で十分。飯もその辺の居酒屋で十分。すべて以前のままで十分賄えている。で、よく言われる。「お前はお金っていらないんじゃないの?別に欲しいものなんかないのだから。」

あるわ!買いたいものだらけじゃ!ただ高い時計も服もバッグもいらんのじゃ。車も乗ればなんでもいい。ただ家は欲しい。都内に欲しい。山手線の中に欲しい。広い庭付きの一戸建てが欲しい。家事が苦手なので常駐のお手伝いさんがいて欲しい。運転も怖いので運転手さんも常駐して欲しい。あと休暇を過ごす島が買いたい! そこに建てる建物が買いたい。移動するためのヘリが買いたい。ジェット機も欲しい!船も買いたい。会社だって買いたい。Xを買いたい。映画だって作りたい。あとロバが買いたい。僕はロバが好きだ。ヨルダンのペトラ遺跡で乗ったロバが忘れられない。いつかリタイアしたらロバを一頭買ってリヤカーでアイスクリームを売る老人になるのが僕の夢だ。家にサウナが欲しい。プールも欲しい。トレーニングルームも欲しい。共有ではなく自分のためだけの。そしてそんなものを買う金はない!ロバは買えても、それを維持する金はない!

みんなそうなんじゃないか?僕の周りの【成功したけど変わらない漫画家さん】もそうなんじゃないの?経験上、それなりに成功した漫画家さん。まあヒット作家と呼ばれる人たちは大体年収1億くらいだ。すごく売れて2億。すごくすごく売れて4億ぐらい。10億行く人なんて日本に10人いないはずだ。仮に5年平均値だとしても、10年平均だともっと下がる人がほとんどだ。病気になったり、怪我したり、描かなくなったり、次回作が当たらなかったり。だから10年間・・・いや生涯平均ベースで年収1億を確保している人は本当に少ないと思う。日本に何人いるのだろう。毎日毎日長時間、机に向かって、締切と戦って目と肩と腰を酷使し。アシスタントを使い管理し・・・・うーん。これで年収1億が多分最高値。・・・これが一般的な大ヒット作家のレベルだと思う。(もちろん尾田先生とか例外はいる。何事にも例外はある。)

年収1億が高いか低いか、それはその人の価値観次第だ。だが、僕は高くないんじゃないかと思う。漫画家はアスリートと同じだ。いつ、描けなくなるかわからないリスクがあるのに、ちょっといい大企業の役員と同じくらいの年収だ。いやアスリートより大変だ。漫画家は沢山のアシスタントを雇って労務管理し、出版社に営業する。経営者としてのスキルも必要。それで年収1億が成功者っていうと何だか寂しい。投資家や経営者でその何百倍も稼いでいる人を見ているとなんだかなぁと思う。

ちなみに漫画は、いや、漫画だけではない。アニメも映画も。商業エンタメのほとんどの場で一番稼いでいるのはクリエイターではない。製作費を出した人だ。皆、それはリスクをとっているのだからしょうがないという。本当にそうか。ならばなぜ最近アニメ制作会社は自前で製作費を出して、他社の出資を拒む事例が増えてきたのだろう。漫画家もだ。同人作家さんの割合が増えてきた。なぜ彼らは出版社から原稿料をもらわず、同人誌や直接配信に切り替えたのだろう。ちなみに最近、同人作家さんの年収で億越えの人が急増している。その事実を皆知っているだろうか。もちろん今の所、成人向け作品ばかりだが一つの指標となるだろう。

ってことで僕は欲しいものが何一つ買えないので、もっともっと稼いでいつかロバ屋のアイスクリーム屋さんを開きます。今日のコラムでした。ハブアナイスデー!


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