ほぼ漫画業界コラム78 【担当編集者が新人だったら?の話】
漫画家さんからの相談です。ズバリ、新人編集とどう付き合っていくべきか?分かります。この方、担当編集がついたのは良いのですが、その人がど新人。ズブの素人。でもやる気はある。そんな感じの状態らしいです。なのでこの方、逆に編集に構成を教えているのだとか。
今、新しいレーベルが爆増している影響で新人編集が沢山増えています。せっかく担当編集がついたのに、その編集者が素人で創作のお供には頼りなかった…ええ、あるでしょう。誰しも最初は新人です。ど素人です。多分、その編集からはろくなアドバイスはもらえないだろうし、描き手を混乱させる余計なアドバイスをして描き手の手を止めるでしょう。また、創作者に言ってはいけない失礼な一言であなたを激怒させるかもしれません。スケジュール調整ミス、指示出しミスで余計な仕事を増やすかもしれません。よく担当ガチャとはいいますが、それは運だとしか言いようがありません。はい、運です。
昔、大手の出版社の中堅漫画編集者が、自分がヒット作の担当編集になれたのは、沢山の新人作家を潰してきた経験値によるものだと答えて大炎上してました。その方は沢山の新人作家を「試し斬り」したとも答えました。酷いですよね。潰された方はたまったものじゃありません。ですが事実なんでしょう。そして、それが漫画業界のリアルなのでしょう。当たり前ですが、新人編集よりはベテラン編集の方が担当に付いてもらって心強いです。ですが、ベテランの数は限られています。多くの担当編集が新人です。ここは新人担当編集のメリットを考えましょう。
若い編集者だからこそ頑張れるってのもあるんですよ。前回の僕のコラム「ほぼ漫画業界コラム77」では、僕が新人編集の時に15歳の中村光先生の担当に付いたと書いたじゃないですか?その当時、僕は22歳のど新人編集でした。もし、編集5年目の中堅だったら…担当には付かなかったかもしれません。育成コストに怖気付いたかもしれません。育てるのに時間がかかるし、育てたところで他社に行かれるかもしれませんから。若いからこそ怖いもの知らずで担当をやれたのです。作家さんに真に愛情と熱情を注げるのは若い編集者なんです。編集者も年を取れば取るほど、担当する作家を選り好みするようになります。技術は付きますが、その分情熱的なエネルギーは減ります。いかに効率的に自分が手間をかけずにヒット作を出すかを考えるようになります。
以前のコラムで担当編集は作品作りにおいてお父さんのような存在だと書きました。漫画家の貴方はお母さんです。どんな人と子育てしたいでしょうか。作品は当然、子供です。経験豊かで経済的に豊かなパパはベテラン編集。でもオッサンなので気力も体力もありません。安心感はありますが、もうときめきを感じることはないでしょう。若くて元気で情熱的なパパは新人編集。未熟で失敗だらけですが、あなたをハッとさせる若い感性ゆえのアドバイスをくれるでしょう。もちろん個人差はありますよ。あと、ベテラン編集は既に忙しく、新人編集のほうが貴方の担当作に集中してくれる可能性が高いです。さあ、どっちがいいでしょうか?こう考えると若い編集者と作品を作る楽しさもありますよね?
ちなみに僕の会社も若い素人編集を沢山入れました。朝から晩まで彼らに編集という仕事を教えています。彼らは沢山ミスをしますし、作家さん対応を失敗します。言ってはならないことやってはならないことを繰り返します。僕も朝から晩まで毎日、説教をし続けて嫌になります。でも、なかなか成長せず、そのせいでうちの会社を離れてしまった作家さんもいるでしょう。力及ばず申し訳ありません。担当がついたのに、ある日一方的に連絡が途絶えたとか、暴言を吐かれたとか、許せないやり取りがあったとかあれば僕のところに直接連絡ください。誠心誠意対応させて頂きます。全ての責任は代表取締役である僕にあります。その前に編集長に対応させますが。
担当編集が合わなくてもその上に上司がいるんですよ。担当編集が合わなければ上司である編集長と話をしましょう。海外では編集者(Editor)と呼ばれるのは編集長だけです。それ以外は全て(Assistant Editor)です。編集アシスタントと合わないぐらいでそのレーベルを嫌いにはならないでください。レーベルの顔は編集長です。
新人編集者との付き合い方としては、“あまり期待しない”“新人編集にも良いところは愛情と熱情”“トラブルの際は編集長と話す”ということを心がけましょう。今日のコラムでした。
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