不可思議堂奇譚


このアナログ感が最高

本日は「不可思議堂奇譚」の紹介です。

作者、えんどコイチ氏はアニメ化もされた「ついでにとんちんかん」という大ヒット作をお持ちです。こちらは全編ギャグに振り切っています。大多数の人が持つ作者のイメージはギャグ作家になるでしょう。

しかし、今作の「不可思議堂奇譚」はとんちんかんとは違い、1話完結のシリアスな人間ドラマになります。(ギャグもかなり入れておられますがね。)

人間ドラマでは「死神くん」のほうが有名で、ドラマ化もされるなどヒットしましたが、ここはあえて実際に読んでほやほやの「不可思議堂奇譚」について投稿したいと思います。

「死神くん」もいずれは投稿したいと思います。

さて肝心の「不可思議堂奇譚」です。

すごくシンプルに言うとクセのある美女と店主のおばあさんが特殊な商品を
売って幸せになる。

もうこれだけです。

正直よくあるパターンです。「アウターゾーン」「笑ゥせぇるすまん」その他諸々。

でもさすがえんどコイチ氏です。すべてハッピーエンドです。筆者は39歳の今になっても漫画を読んで家族の前で平気で泣くような感動屋ですが、やはりラストはハッピーエンドに限ります。読後の安心感が違います。

そういうのでいいんだよおじさんです。

少年ジャンプでの連載でしたので、ほぼ勧善懲悪になります。アッと驚くしかけはありませんが、「死神くん」よりは少しひねっていますのでそれがちょうどいい塩梅で大人でも楽しめます。

そうそう今の少年ジャンプ読者の平均年齢はご存じですか?
なんと28歳だそうです。

少し前は14歳だったそうで、隔世の感があります。

「不可思議堂奇譚」連載時の90年代はおそらく10代でしょうから彼らからすると少し大人な雰囲気もあったでしょう。筆者は実際に連載当時リアルタイムで毎週ジャンプを読んでいましたので、大人な雰囲気を感じていた記憶があります。

1話のさわりを紹介いたしますと、児童養護施設が舞台になります。

少し老年にさしかかる男性が箱を手に思い悩みます。周りには子供たち。
100万円も支払ったこの箱は本当に意味があるのか?価値はあるのか?

お金持ちのお婆さんが崇高な目的を持つパトロンとなり、それに賛同した夫婦が運営していましたこの施設。

幾年も恵まれない子供たちを巣立ててきましたが、お婆さんも年を重ね財産相続の話がでてきました。

お婆さんの親族含めた関係者には、施設の運営を継続する意思はありません。

主人公のおやじさんは運営継続に向けて奔走します。

子供たちは子供なりに働き、おやじさん含め夫婦も寝る間も惜しんで働き、やっと100万円のお金を作り出します。

100万ごときなにするものぞ、と親族には馬鹿にされ軽く追い払われます。
絶望の中おやじさんの前に昨日まで空き地であったところに不可思議堂が突如現れます。

中には長身の眼鏡美女と道化のようなおばあさん。

自暴自棄なおやじさんは身の上話を半ば強引に聞き出され、さらに強引に100万円で幸せを呼ぶ箱を購入させられます。

施設に持ち帰りみんなを集めて事の顛末を説明します。ここで冒頭の場面にもどる。

さあ結末はいかに。

えんどコイチ氏はおせじにも絵がうまいとは言えません。昨今の漫画界はもとより80年代90年代当時の業界基準からみても、かなり下手くそです。

でもね漫画は絵ではないんですよ。これは筆者の持論ですが。

実写映画はデッサンが狂うことはありえません。実写ですから。

小説は絵がありません。

アニメは毎回、毎コマ、作画監督、アニメーターにより絵が変化します。

漫画だけが1から10まで一人の個人が作画します。(アシスタント、分業制の場合は別ですが笑)

だからこそその絵には作者の精神性が映り込むのだと思います。

えんどコイチ氏の絵には温かさがあります。優しさがあります。ホッとする安心感があります。

下手くそでもこの心に訴える絵が描けるのが漫画家なのです。そしてストーリーテラーとしての才が名作を作るのです。

「不可思議堂奇譚」は90年代の作品なので少し絵がこなれています。
でもえんどコイチ氏の絵のあたたかさは一切変化していません。

心に訴えかける絵を描ける人が絵が上手い漫画家ともいえるのかもしれませんね。


筆者の漫画論になっちゃいましたが最後に点数です。

「不可思議堂奇譚」83点!

ではまた。





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