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白い〇〇

光を吸収せずに全てはね返すことで白く見える。光を吸収する色素を持っていないからだ。白い花と緑の葉のコントラストは美しいけれど、白い果実はなんとも不思議な感じがする。熟す前のいちごのように、白いのに味はあるのだろうかと気になってしまう。

数年前、『白いとうもろこし』を初めて見た。北海道へ赴いた際、同行者が食べてみたかったといつの間にか手にしていた。黄色いとうもろこしよりも糖度が高くて甘いらしい。しかも生のまま食べられるという。

へえ、と思った。
また、美味いものを創るための飽くなき探究心にも敬服した。


奈良の黒滝村には『白いきゅうり』なるものがある。

江戸時代から現代まで種子が受け継がれ、もちろん現在も栽培されており、『大和の伝統野菜』として県から認定されている。奈良や神奈川を中心に、あちこちで栽培されているようだけれど、皮が薄くて傷つきやすいせいか、ほとんど市場には流通していない。

〈お取り寄せ〉という文化が発達する今日このごろ、そういった土地に赴いたものだけが体験できるような貴重なものは、その立場を貫いてほしいなんてワガママなことを思ったりする。

黒滝村のお隣、天川村の素朴なメインストリートの土産物屋で、白いきゅうりの一本漬けが冷やされているのを見かけた。その場で開封して齧っても良かったけれど、ちょうど満腹だったので土産にした。

白いきゅうりの一本漬け

『白い』とは言っても、『ピュアホワイト』と名付けられた白いとうもろこしほどは白くない。全体的には薄い黄緑色。しかし、きゅうりの特徴とも言えるあの濃いグリーンは見当たらない。

タカノツメと一緒に漬けられたその姿は、汗をたっぷりかくこの季節には大層唆られる。

お茶漬けと白きゅうりの漬物

一本はおやつとして丸かじり、もう一本はお茶漬けのお共に。

きゅうり特有の青臭さがあまりなく、爽やかな味わい。皮は薄くとも、実はしっかりと歯ごたえがあるので、きゅうりのいいとこ取りをしたような存在だった。


夏が旬で、しかも白い野菜は他にもある。

まだお目にかかったことはないけれど、『白いゴーヤ』だ。こちらは真っ白で苦味が少ないからと密かな人気があるらしい。とはいえ、ゴーヤ好きとしては苦瓜ニガウリなのに? とは思わずにはいられない。

かといって、食べてみたいという気持ちは決して否定しないのだけど。

ご覧下さりありがとうございます。書く力は灯火のようなもの。ライトに書ける時も、生みの苦しみを味わう時も。どこかで温かく見守ってくれる方がいるんだなあという実感は救済となります。