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土木技術者の備忘録。

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世界の土木遺産「シューシュタル(イラン)_18世紀前の多目的ダム」

18世紀前のダム   春先に訪れたイランのフーゼスタン(khuzestan)州シューシュタルの土木遺産のお話です。今回紹介する施設はなんと約1800年も前に建設されたダムで、治水・利水の両面の役割を担っています。  現在も現役で活躍しながら地域の収入源を担うイランを代表する観光施設にもなっています。 イランの観光事情  もちろん、私も入場!と、思ったその時、受付にとんでもない看板が、、、  英語で「チケット100万リアル」と書いていますね。これは日本円に換算すると5

    • 世界のまちづくり「ローマ(イタリア)_乗り捨て電動キックボード」

       都市内交通について、先日訪れたローマ、ナポリで面白い取り組みが根付いているようなので、備忘録までに。 1 米国、欧州で一般化しつつある電動キックボード  イタリアのいくつかの都市では、乗り捨て電動キックボードが新たな交通手段として確立されつつあるようです。2017年頃からアメリカやヨーロッパを中心に広がったもので、イタリアでは密室にならず密集も避けられるため、新型コロナウイルスの感染拡大対策の一環として一気に広がったとか。  ナポリ観光中に利用者や乗り捨てられたキック

      • 世界のまちづくり「ローマ(イタリア)_荷物預かりサービス」

        1 コインロッカーがない!?  旅行の最終日にホテルをチェックアウトした後、観光したいけれどもトランクなどの大きな荷物が邪魔になることがあります。日本なら駅のコインロッカーに荷物を預けることが多いですが、実は海外では大きな駅に必ずコインロッカーがあるとは限りません。特にイタリアやフランス等の一部のヨーロッパの国では、テロ対策の一環でコインロッカーが禁止されており、どの駅を探してもコインロッカーを見つけることができません。一方で、これら国ではコインロッカーの代替サービスも発展

        • 世界の土木遺産「ローマ(イタリア)_現代版テルマエ・ロマエ」

          1 カラカラ浴場  ヤマザキマリさんの「テルマエ・ロマエ」で一躍有名となったローマの温泉、テルメ。その中でも最も有名なテルメはカラカラ浴場(Temre di carecalla)でしょう。カラカラ浴場跡はコロッセオの南に位置し、発掘、一部復元された遺跡を見学することができます。  このテルメは西暦212年から216年にかけて当時のカラカラ帝の命を受けて建設されたとされ、その後、アウレリアヌス帝、ディオクレティアヌス帝、テオドシウス帝によって何度も修復されましたが、西暦537

        世界の土木遺産「シューシュタル(イラン)_18世紀前の多目的ダム」

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        • 世界の土木遺産
          4本
        • 世界のまちづくり
          2本

        記事

          世界の土木遺産「ヤズド(イラン)_無動力冷房」

           前稿では乾燥地帯で水を無駄なく輸送する「水路」としてのカナートの役割を紹介しました。古代ペルシャでは乾燥地帯で蒸発による水の損失を可能な限り少なくするために地下トンネルに水を通したのでした。しかし、カナートは単純な水の輸送の役割だけではなく、より機能的・文化的な側面を持っています。 古代ペルシャで活用された無動力冷房  カナートの持つ水の輸送以外の機能の代表例は「冷房機能」です。この冷房は灼熱の砂漠地帯であるペルシャの地で古代から活用されてきた技術です。もちろんその時代

          世界の土木遺産「ヤズド(イラン)_無動力冷房」

          世界の土木遺産「ヤズド(イラン)_カナート」

           ヨーロッパと東洋を繋ぐシルクロードは有名ですが、古代にヨーロッパとインドを繋いだスパイスロードを知っている人は稀かもしれません。その名と通り、主にインドからヨーロッパにスパイスを運ぶためのものでした。スパイスロードに沿って、西アジアの広大な砂漠を渡った商人がたどり着く街がヤズド(Yazd)でした。この街の玄関口であったサレ・ヤズド(Sar-e Yazd : ペルシャ語で「ヤズドの頭」の意味)には多くの商人が宿泊したと言われています。  ヤズドは、交通の要衝であり、ゾロアスタ

          世界の土木遺産「ヤズド(イラン)_カナート」