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きょうの画材「13:墨運堂『青龍胎』」



初心を思い起こして

リストには何度も登場したのですが、改まって紹介するのは初めて。
なんとも長いお付き合いのある墨です。
私が画材として固形墨を多用し始めたのは最近で、手持ち品の殆どは
最近になって研究も兼ねて買い揃えたものなのですが
これは10年以上前、美大生の頃に初めて自費で購入した墨です。

当時、日本画にたいそう影響されて
「画墨」とあるこれを一つお迎えしたのですが、
大学卒業とともに一旦アナログ手描きから離れてしまいました。

その後に病を得て、在宅で療養しながらアナログ絵を描き
発表していこうと思った時に、しまいこまれていたこの墨と再会します。
保存が悪く3つに割れてしまっていたのを墨用の糊で繋ぎなおして、
またこの青龍胎とのそのそと歩きだす事にしたのです。

ほのかな藍の色

松煙墨は元々マットな青みの色が多いのですが、
「青墨」とあるように本藍を加えて更に青みを立ててあります。

古い物ですが、まだ磨るとほのかに甘い墨の香りが立ちます。
固形墨に混ぜてある香料は墨屋さん毎に結構違いがあり、
私はこの墨運堂さんの甘めの香りが一番好きかもしれません。

紙はマルマンさんの、ヴィフアール水彩紙の細目にしました。
日本画の画材を使う時は、透明水彩の時より紙目滑らかな
パルプの紙を選ぶ事が多いです。和紙を思い出させるからかも?

墨の重なりを楽しむ

最初は淡墨で、徐々に濃墨を織り交ぜて。
マットな風合いの墨なので、墨色の濃い部分もテカテカせず
きれいに黒の重なりが出来ていきます。

墨液のグラデーションを省スペースで作るには梅皿が便利。
私は真ん中に一番濃い墨液を入れ、それを周りの仕切りに
筆で少しとって、必要な濃さまで水を加えて使っています。

金でポイントに彩色

金の色は吉祥顔彩の赤金、青金、パール金から一つ選んで
使う事が多いです。今回は赤金を選んでみました。
墨一色と差し色一色だけで描くこのタッチ、
どの顔彩を使おうかと毎回考えるのも楽しいです。

干し魚。

エボニーペンシルで線起こし

「エボニーペンシル」で細かな部分を描きこみ、塗りこみ。
黒光りする艶のあるパンチのある線が引けます。
鉛筆型の画材なのですが、一般的なデッサン鉛筆に比べて
消しゴムで消えにくい所があるので気をつけて!

墨のいまとこれから

実は、日本の固形墨のメーカーは平成以降
需要減による廃業が相次いでいるそう…
存続の為に職人さん達も大変尽力されています。

「墨」は画材としても大変素晴らしいものなので、
私もそれを伝えるお手伝いが少しでも出来たらいいな、
などとささやかな夢をもって、発信しております…


今回使った画材

・マルマン ヴィフアール水彩紙(細目)
・三菱 ポリカラー(ねずみいろ)
・墨運堂 青龍胎
・吉祥顔彩 赤金
・エボニーペンシル

今回もご覧頂きありがとうございました。楽しい画材ライフを!

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