楽しく生きるための翼として。【ビブ人名鑑#15:榎村真由さん】
ビブリオバトル普及委員会で活躍中の方(ビブ人)へのインタビュー企画、「ビブ人名鑑」。
今回のゲストは、ツアービブリオの主宰で、ビブリオバトル普及委員会理事でもある榎村真由さんです!
「社会科見学×ビブリオバトル」をコンセプトに活動を続けるツアービブリオ。
そもそものビブリオバトルとの出会いは何だったんでしょうか?
そして、榎村さんの結婚のきっかけになったのもビブリオバトルとのことで…?
今年出産を経験された榎村さんに、ビブリオバトルの魅力とこれからの夢についてお聞きしました。
紹介本が初めて会う大人に刺さった
ー 榎村さんは、最近どのようにビブリオバトルと関わっていますか?
今年は出産したこともあって、対面のビブリオバトルよりもオンラインのビブリオバトルにバトラー参加させていただくことが多いです。
オンラインだと、子連れでも気楽に参加できるので有り難いですね。
主催面では、運営をしているツアービブリオでのビブリオバトルを続けています。
子どもは生後4日目でツアービブリオのビブリオバトルを初観戦しました(笑)
ー お子さん、人類最速の参加年齢かも(笑)榎村さんがビブリオバトルに出会ったきっかけは何だったんですか?
2011年の、ビブリオバトル首都決戦2011の予選出場がきっかけです。
在籍していた日本大学で予選が開かれることになり、主催者の方と関係の深いゼミに所属していたので、バトラーのお声がかかりました。
そこで紹介した『下町ロケット』(池井戸潤 著/小学館)が運良くチャンプ本に選ばれ、当時の大会はまだ地区決戦(二次予選)がなかったため、準決勝に進むことができました。
当時は失敗しちゃいけない気持ちが強くて、緊張しっぱなしの発表でした。
今振り返るとビブリオバトルの魅力に気づけてなくてもったいなかったな(笑)
結果は残念ながら準決勝敗退だったんですが、その時の楽しさが忘れられず、今日まで活動を続けています。
ー いきなりの大会出場がビブリオバトルとの出会いだったんですね!どんなところが楽しかったんですか?
準決勝敗退後に会場を出る時、観戦されていた方から
「君の発表面白かったから、その本買って帰るよ」
ってわざわざ声をかけてもらったんです。
その時、自分が面白いと思った本の話を5分間ちゃんと聴いてもらえて、その想いがまったく知らない人に伝わる、というビブリオバトルの仕組みに初めて気づきました。
チャンプ本が獲れなかったのが悔しくてビブリオバトルをやめちゃう、って人もいるかもしれないんですが、私の場合は「勝てなかったのに初めて会う大人の心に刺さった」という体験が嬉しくて、ビブリオバトルって面白い!と思いました。
そうだ、山梨に行こう
ー チャンプ本かどうかに関わらず、5分間真剣に話を聴いてもらえるのは、ビブリオバトルの魅力ですよね。その後はどのようにビブリオバトルと関わっていったんですか?
大会後の懇親会でビブリオバトル普及委員会の存在を聞いて、入会することにしました。
その頃ビブリオバトルを開催していた団体が少なかったので、もっと楽しむためには自分でビブリオバトルを開くしかない、って思ったんです。
「普及委員」と呼ばれる立場になった(※)からには、ビブリオバトルの普及がしたいと思って、山梨県の図書館に営業電話をしました。
ー どうして山梨県の図書館に?
どうせならまだビブリオバトルの開催が確認されていない県で開こう、と思ったんです(笑)
大学が東京だったので、そこから一番近かったのが山梨県でした。
何件もの図書館に電話をかけたところ、山梨県立図書館さんがリニューアルを控えていたタイミングで、そのオープン記念のイベントとしてやってもいいよ、と言っていただけました。
普及委員会中部内陸地区の地区代表をはじめ、東京のビブリオバトル好きの方たちにお声がけし、可能な人は前泊してほうとうやワインを楽しむ、という小旅行になりました。
山梨県立図書館の館長が作家の阿刀田高さんで、チャンプ本獲得者は阿刀田さん名義の賞状がもらえるということもあり、ビブリオバトルもとても盛り上がったんです。
当時はイベント開催の経験も全然ない一介の大学生だったんですが、話を聞いてくださった山梨県立図書館の担当の方をはじめ、多くの方に支えていただいて実現できました。
「ビブリオバトルは、広告と同じ」
ー 行動力がすごい!
その年に大学を卒業して広告代理店に就職したんですが、それからもバトラーとして各地に顔を出させてもらっていました。
同時に、社内でビブリオバトル部を発足して、1~2ヶ月に一度の頻度で開催していました。
ビブリオバトルって、広告と同じ仕組みなんです。
どちらもいかに興味のない人を惹きつけるか、振り向かせるかが大事になります。
ビブリオバトルをすることで、プレゼンや広告の勉強ができます。
ってビブリオバトルを知らない社内には売り込んでました(笑)
ー ビブリオバトルと広告が同じ、って考えたこともなかったです。
その後転職して、社外で新しく立ち上げたのが「ツアービブリオ」です。
ビブリオバトルを長く続けていると、どうしてもメンバーや出てくる本のジャンルが固定化してくる傾向があると感じるんです。
それも一つの魅力なのですが、私は新しい出会いを生み出しやすくする仕組みを作りたくて、「社会科見学×ビブリオバトル」というコンセプトにしました。
ビブリオバトル・ラブストーリー
ー ところで、榎村さんは旦那さんと出会ったきっかけがビブリオバトルだったと伺っているんですが、その時の様子を聞いてもいいですか…?
大丈夫です(笑)
時間が前後するんですが、夫(以降ビブ男)と出会ったのは、私が初めて出場した翌年の、ビブリオバトル首都決戦2012の予選でした。
ー うんうん。
その予選では『江戸の恋』(田中優子 著/集英社)という新書でビブ男がチャンプ本を獲得し、地区決戦(2012年から導入)も突破して、準決勝に進みました。
そのときはまだお互い敬語で。
ー ほうほう。
その後、年末の紀伊國屋書店のビブリオバトルで再会して、ゲーム後の懇親会で大学生メンバー同士がぐっと仲良くなったんです。
年末ということもあり、みんなでクリスマスのイルミネーションを見に行く約束をしました。
でも、私とビブ男以外のメンバーが、体調不良で来れなくなってしまったんですよ。
ー 面白くなってきましたね!
私もビブ男もその日のために予定を空けていたので、もったいないし行きましょうということになりまして。
ー それはそうでしょう。
そこがきっかけでちょっと距離が縮んで、そうこうして、今に至ります(笑)
ー ビブリオバトルって、こんなに青春を感じるものだっけ?
実は大会タイトルホルダー
ー 榎村さんにとって、特に印象に残っているビブリオバトルは何でしょうか?
出会い以外でのビブリオバトルで言うと(笑)、2014年5月にTokyoBiblioさんが主催した、ビブリオバトル社会人大会ですね。
私が紹介した『パパがも一度恋をした』(阿部潤 著/小学館)がグランドチャンプ本を獲得することができたので、とても印象深いです。
でもそれだけでなく、大会自体が著名人をゲストに招いた大規模なもので、「ビブリオバトルも収益を得られるようなイベントとして成立するんだ」と感動しました。
あとは、ビブ男との結婚式の二次会ですね。
式自体は親族のみだったので、これまでお世話になった方々にご挨拶をしようと40名弱お招きしてビブリオバトルをする場を設けたんです。
5~6名にバトラーになっていただけたら、と思って募ってみたら、ほぼ全員が発表希望で手を挙げてくださって(笑)
まさかのトーナメント戦になり、こちらがおもてなしする側だったのですが逆に皆さまに盛り上げていただきました。
改めてご縁を感じる会となり、感謝しています。
子どもがいる立場になって
ー エピソードの一つ一つが熱い…!榎村さんがこれからビブリオバトルを通してやってみたいことはありますか?
出産したこともあって、子連れでも参加できるビブリオバトルの開催の仕方について、模索したいと考えています。
観戦、出場、主催と、どの立場で参加するかによって方法は異なると思うんですが、私の周りでも、出産を機にビブリオバトルから遠のいてしまっている方も何人かいるので。
我が子に関しては、いつか一緒にビブリオバトルすることができたら素敵ですが(笑)、その前に本のことは好きになってほしいと思ってますね。
今はバトラー友だちからいただいた、たくさんの絵本を読み聞かせています。
ー 榎村さんはビブリオバトル・シンポジウム2020に登壇されますが、どんな方に観てほしいですか?
ビブリオバトルの原点である、コミュニティ型(小規模の決まったメンバーで繰り返し行う形式)について振り返る、というのが今年のコンセプトなんです。
なので、特に中高生の方など、ビブリオバトルにイベント型(少数のバトラーと、大規模の聴衆でその場限りの催しとして行う形式)のイメージが強い方に、ぜひ観てもらいたいと思っています。
登壇者の6名は、それぞれバックグラウンドが異なり、ビブリオバトルを通してそれぞれのコミュニティを作ってきました。
私もビブリオバトルとの出会いは大会で、「緊張の中、発表や質疑応答を頑張るもの」という印象を最初は持っていたんですが、それだけでないビブリオバトルの魅力をお伝えできるのでは、と考えています。
ー 榎村さんにとって、ビブリオバトルとはなんでしょうか?
人生を豊かにしてくれている一翼、かなと思います。
ビブリオバトルがなければ、夫や子どもとも出会えていないと思うと、本当に大きな存在ですね。
ビブリオバトルとの出会いは先ほど言った通り大学生の時だったんですが、当時バイト代で学費をやりくりしていて、サークルなどに入る余裕がなかった私にとって、お金をかけずにこんなに楽しい経験ができたのはとても有り難かったんです。
そういう意味でも、翼となって世界を広げてくれたな、と感じます。
ー ありがとうございました!
ありがとうございました。
「ビブ人名鑑」シリーズでは、ビブリオバトル普及委員会で活躍されている方々のインタビュー記事を不定期に掲載していきます。
どうぞお楽しみに!
お読みいただきありがとうございました。
インタビュー・執筆:益井博史
取材日・場所:2020年10月13日(火)Zoomにて
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