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見栄を張りたい同窓会


中学の同窓会。

一大イベントでもある。

だって、もうみんないいオッサンとオバサンだもん。
月日の経過により会うのが怖いような楽しみのような。
皆の変貌ぶりは如何に。

今年の春、20年振りに同窓会があったというスポーツクラブの知り合いのちえちゃんが桃子に毒を吐く。

「なに?桃チャンも中学の同窓会があるの?皆んな相当ヤバくなってるよ。男子はメタボかハゲ。女子はトドになってるって!(笑)桃チャン、絶対に可愛いカッコして行きな。私なんかわざとピチピチTシャツとピッタリタイトスカートで行ったよ。案の定、周りの女子はそんなカッコ出来ないから目立ったわ。男子から『スタイルいいじゃん!』と言われ優越感~ww」

更にスポクラ仲間のスリムでお肌が綺麗なオーちゃんも、偶然小学校の同窓会があり「私、スキニーと女っぽいひらひらシフォンのブラウスの上にライダースジャケットを羽織り腕にブルガリの時計をして行ったよ」と言ってきた。

うーむ、いいんでないかい?

足が長い彼女をさらに魅力的にみせるファッション。加えてブルガリの一点豪華主義がニクイね。

「帰りに男子が”僕が送る”という立候補者が多くてね(笑)その中で金払いがよさそうなヤツにタクシーで送らせちゃったわ」

う~ん。やるぅ。
桃子も頑張らねば!燃える闘魂。

でも何着ていこう??
決して大袈裟で派手なモノではなく、桃子の魅力(え?どこ?)を引き出すようなファッションでなくてはならない。

うう~ん。(悩)
あ、そういえば昔付き合った男どもからはミニが似合うと言われた。本当に似合うのか、ただの彼らの下心、エロ心だったのかもしれんが。

でも流石に女性陣は足は出してこないだろう。ぜったいエレガントなロングスカートだろうな~。同じことをやってもつまらん。よしっ、思い切って足出ししてやる(笑)

そして足が綺麗に見える高さのブーツを履く。
差別化を図るためあえての長袖。
涼しげな素材で通気性のいいロングシャツワンピースを引っ掛ける。
そこからの太もものチラチラした見え具合がたまらん仕組み。さらに首周りが空き鎖骨がいい感じで美しく見えるボディにフィットしたニット。

桃子の肌の色にもあうピンクゴールドのネックレスとブレスを合わせる。(桃子はどうもイエローゴールドが似合わない)

『ん~いいんじゃない?イケルよ桃子』

(ナニがイケるんだ、おいっ君はどこに行こうとしてるんだ?)

『イエィお持ち帰りオッケー!』

(え?それって持ち帰られるのか?自分が持ち帰るのか?)

ま、服装によってテンション変わるよね。女って。

わくわくしながら待ち合わせの会場の飲み屋に到着。
誰?あのオッサン?なにあの腹っ!あのメガネの女子は誰だっけ?

しばらく考える……が、思い出せない。

「俺、小川!」「私、斉藤……」とそれぞれ名乗ってくれたとたん蘇る記憶。

「きゃ~、ほんと?ほんとだ!小川クンだぁ、斉藤、あ、アヤちゃん?ぎゃ~久しぶりっ!」

と黄色い声を発し、手を取って一緒にはしゃぐ。

そこで、奥のほうから出てきた男子二人。

「もしかして桃子さん?僕、村田だよ」
「わ~っっ村田くん?小学校も一緒だったね。村田くんってば身体がだいぶ育っちゃったけど(笑)笑顔は昔のマンマだぁ!」と笑い合う。

「すいませ~ん、俺オレ……」と割り込んできたメガネを掛けたデカいオッサン。

「え~!やだぁ~!もしかして淳君?」

彼は中学の時から妙にオッサンぽかったが、いや、妙に大人びていたが、しっかり立派にオッサンなっとる。

あれ?はしゃぐウチらを一人蚊帳の外からジッと見ている男子(オッサン)がいる。

もしかして、もしかして……。

一人の女子が話しかける。

「私、A子です。え~~っと……」
(オタクはどちらさん?とは言い難いよね)

「あ、コウジです」

うわ、やっぱり!
中一の時だけ同じクラスで桃子にちょっかい?出してきた”奇特な男子”である。
なんと夏休みに遊園地に誘われ、一度だけ行ったことがある。
お母さんについた最初の嘘。当時は男子と遊びに行くなんて言えなかった。

彼の風貌はほとんど変わっていない。いたずらっ子っぽい瞳は当時のままだ。
むしろ昔よかカッコよくなっている?
頭の毛はしっかりあり身につけている服も年には見えない。今日いる男子の中ではダントツ、フッサフサ(笑)

一緒に遊園地に行ったことはここにいる誰もしらない。淡い思い出。

宴もたけなわ。

皆すごい、すごい、今まで30年近くも会っていなかったのに普通に楽しんでいる。

昔からずーっと仲良しだったような感覚で。

しかし実際は当時みんながみんな仲が良かった訳ではない。桃子だって嫌なこともたくさんあった。

クラスでもイジメやケンカ、グループの仲たがいもあった。
大人しいといじめられ、家庭環境や身体の事でも差別される。
名前のことひとつとってもバカにされる。

シカトを命令した子も、シカトされた子も、呼び出されて殴られた男子も、殴った男子も、それが今ここにいるのだ。

みんな一緒に笑って騒いでいる。いまはなんの隔たりもなく仲間になっている。

ほんとすごいわ。これぞ同窓会マジック。

時を経ていろんな経験を積んでくると
人を認めることも出来るし、
大人になると人を許すことが出来るようになるんだよね。

オッサンやオバサンになると、いろんなことを受け入れるのよ。

今はちゃんと相手のことが見れるし見抜ける。
相手のいいところもいまなら分かるのだ。

ガキだった頃より年を取った今のほうがみんな面白い。
同窓会最高じゃんか~!

後日幹事の女の子(オバサン)から連絡があった。

「桃ちゃん、男子から『アイツが一番変わったな~』って言われてたよ」

そう、お洒落も出来なかったし地味で目立たない思春期暗黒時代の桃子。
うちは貧乏で洋服も買えなかったし美容院にさえ行けなかった。なんと髪は母が切っていたのよ。

そんな桃子がいまさらながらだけど、クラスメイトをビックリさせることができたのだ。

見返し作戦成功???

「あ、それからコウジが桃ちゃんのメルアド教えてくれってうるさいの、教えていい?」

フフン。どうしよっかな~。


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