フィジーと少女といかだ

マナ島という小さな島。白い砂浜、晴れた空から色が零れ落ちてきたような青い海。風はない。気温は35度くらい。照りつける日差し。木でできたパラソル。三斗笠みたい。時間がとろけているようにゆっくりと進む。やることは何もない。何もないということをする。バックパッカー宿でのんびりと過ごす人。海で泳ぐ人。日光浴をする人。いかだを作る人。午後からは宿でいかだのレースをするという。出会った少女。拾った木の棒を振り回して、辺りを探検する。枝を集める。いかだ用。ペットボトルも使う。風に乗せる。英語が分かるらしい。フィジアンという風。いかだを海に浮かべ、帆を支える風を呼ぶ。レースが始まる。少女と一緒に作ったいかだ。風に乗る。結果はびり。まっすぐ進まず斜めに行ってしまった。青い海。笑う少女。世界のどこかで国が違い、文化や言葉や、見た目も少し違う人同士がいかだを作り、笑いあう。ナディアという少女。それは僕の心にいつまでも留まり、遠い国のことを思い出させた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?