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夜風

夜風がふいている。

わたしは電車に乗る。

季節はクリスマスも終わり、きっと仕事納めをして一杯飲んできたであろう人でごった返した最終電車。

いつものようにスマートフォンをいじる。

ふと開いたSNS、たくさんのアカウントを持つわたしは巡回に忙しい。

何の気なしに、元彼のアカウントを開く。きっといつものようにくだらないことが書かれているだろう。

そんな風に思ったことを後悔した。トップに上がっている写真に知らない女の子が笑っている。次に上がっている写真に写ったものが、クリスマスプレゼントであるということは容易に想像できた。

そんな場所、わたしは連れて行ってもらえなかったのにという嫉妬心と、わたしから振ったのに何を言ってるんだという自責の念とが入り混じって、帰りに買ったカフェオレみたいにほろ苦い。

幸せになって欲しいとは、思う。そう、本当に心から。

だけど少しだけ心に隙間風が吹く。

駅に着くと、外は冬の空気で冷たかった。

夜風がふいていた。

#小説 #短編小説

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