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シナリオの書き方 ~基礎編~ Part1「シナリオに必要な9つの要素 」

この記事は「TRPGシナリオを書いてみたいが、何を書けばいいかわからない」というような悩みを抱えた人々を助けるためのものだ。シナリオライターを目指している方々の第一歩を手助けすることができれば私も嬉しく思う。そしていつか私にも書き上げたシナリオをプレイさせて欲しい。

まずは基礎編として「シナリオとは一体何か」「シナリオとしての最低条件とは」といったところから、始めたいと思う。

なお、私が主に遊んでいるシステム『新クトゥルフ神話TRPG(以下CoC)』のシナリオであることを前提に話をしていくこと。

まずは既成のシナリオを見てみよう

CoCを遊ぶ場合、シナリオはほぼ必須だろう。「シナリオ」とは具体的にどんなものなのか……それを知るためには実物を見るのが一番早い。
ただし、参考にするのはルールブックやソースブックに書かれている"公式シナリオ"でなくてはならない。アマチュアのライターによって書かれたシナリオはネットスラングや非公式な用語が使われていることや、書かれている章立てが特殊なものであることがある。そのため、これらのシナリオを参考にすると、必要最低限の記述が無かったり、CoCで使われている体裁で書かれていない……といったことにもなりかねない。これは他のシステムでシナリオを書く場合でも同様である。
無料で公開されているクイックスタート・ルールのpp.21-35にはシナリオが1本、ルールブックのpp.346-383にもシナリオが2本掲載されている。その他のソースブックにも数多くのシナリオが記載されている。まずはこれらに目を通そう。

シナリオとは

では本題に戻り、シナリオとはなにか?
それは「キーパーがゲームを進める上で参考にする資料」だ。
クイックスタート・ルールによればキーパーの役割は以下の通りである。

「キーパーの役割は、ほかのプレイヤーのためにゲームを進行させることである。キーパーは物語の筋書きや今の状況をほかのプレイヤーに説明する。そしてルールとダイスを使って、キャラクターの行動の成否を判定し、探索者を劇的で危険な状況へと駆り立てるのである」(p.4)

物語の筋書きをすべてキーパーが暗記するのは大変だ。だからシナリオという形で事前に用意しておき、何かあった時にそれを読めばわかるようにしておくわけである。
ようするに、シナリオはキーパーにとってのカンニングペーパーみたいなものだ。インターネットや同人誌での公開をしないのであればそれほど細かく書く必要はない
まずは自分だけが見るためのカンニングペーパーを書くつもりでかいてみよう。

シナリオに必要なもの

さて、シナリオには何が必要になるだろうか。
個人差はあると思うが、シナリオによく書かれている項目を挙げてみる。

・舞台となる場所
・NPCの名前
・クリーチャーのデータ
・事件の原因(キーパー情報)
・探索者の導入
・事件の解決方法
・情報源
・探索者が遭遇する事件
・事件を解決したときの正気度回復

これくらいの項目があれば、自分用のシナリオとして遊べるだろう。
では参考としてクイックスタート・ルール記載「悪霊の家」を例に以上の要素を抜き出してみる。

※注意※
都合上、「悪霊の家」の内容に触れることになる。"ネタバレ"を気にするのであればこの記事はここで一旦閉じよう。

・舞台となる場所
1920年代、アメリカ。ボストン。
・NPCの名前
スティーブン・ノット
コービット屋敷の家主。探索者に屋敷の調査を依頼する。

ヴィットリオ・マカリオ
屋敷に住んでいた主人。正気ではない。コービットを倒す手段についてヒントを話す。

ガブリエラ・マカリオ
ヴィットリオの細君。屋敷で起きたことを教えるが狂気のため段々と取り乱す。
・クリーチャーのデータ
ここではデータを作成する必要があるクリーチャーのリストを示す。詳細なデータについてはシナリオを確認して欲しい。
1.ネズミの群れ
2.ウォルター・コービット、アンデッドの悪霊
・事件の原因(キーパー情報)
ウォルター・コービットはクトゥルフ神話の魔術によって不死の吸血鬼へと変化した。彼の体はコービット屋敷と呼ばれるかつての自宅の地下に眠っており、屋敷の住人を追い払ったり、自分の秘密を知ったものを殺している。
・探索者の導入
探索者はスティーブン・ノットという人物から、彼が相続したコービット屋敷で起きた不可解な現象についての調査を依頼される。
・事件の解決方法
コービットの耐久力を0にすれば、彼は死亡する。また、コービットが操る魔法のダガーを奪って彼に刺せば耐久力に関わらず彼は倒れる。
・情報源
「ボストン・グローブ」紙
過去に起きた事件や、前の住人のコービットについて書かれている。
最初の住人、二回目の住人は病気で死んでいる。そのあとコービットという人物が屋敷を購入した。
その後、コービットは周りの人から「怪しげな儀式をしている」ことについて裁判を起こされた。
裁判はコービットが勝訴した。しかし、コービットが死後、自宅の地下に埋葬されるように遺言を書いたことにより再度訴訟を起こされている。この裁判の結果はわからない。

公文書館
コービットの遺言執行人が「黙想チャペル」カルトの関係者だということがわかる。チャペルは警察の手入れで閉鎖されている。

裁判所や警察署
「黙想チャペル」の手入れについての情報がある。かなり激しく争ったらしい。報告書はあいまいでありしっかりとした調査がされてない内容に思われる。どうやら上層部からの介入があったようだ。コービットの遺言執行人は逮捕後に脱走して逃亡している。

コービット屋敷の近くでの聞き込み
近所の人に話を聞けばマカリオ夫妻が引っ越してから事故にあって狂気に陥り、今ではサナトリウムで暮らしてることがわかる。

サナトリウム
ヴィットリオ・マカリオがコービットを倒すためのヒントをつぶやく。

黙想チャペル跡地
『エイボンの書』の不完全な版がある。魔術を行っていたのは間違いなさそうだ。
・探索者が遭遇する事件
屋敷に入るとポルターガイストが起きて怖い思いをする。
ベッドが飛んできて大怪我を負う。
地下に入るとナイフが飛んできたり、ネズミに襲われたりする。
コービットの死体を見つけると起き上がって襲いかかってくる。
・事件を解決したときの正気度回復
コービットを倒したら1D6の正気度ポイントを回復する。

クイックスタート・ルール記載のシナリオと比べるとだいぶあっさりした印象を受けるかも知れない。しかし、実際にプレイする時に必要な要素はこれくらいである。しかし、これらの項目にこだわらず「これは忘れてはいけない」と言った部分があれば追加するべきだ。
また、書き方も人それぞれだと思う。フローチャートのように書く人もいれば、物語調に書く人もいる。
重要なこととして、プレイヤーに資料として渡す文書はしっかりと書いておくことが重要だ。
まずは上に示したような箇条書きでかまわないので書いてみよう。

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