看護学では患者の何たるかを教えてない

退院した。
普通に『おだいじに』という退院ではなかった。
自分から勝手に出てきた形。

今は健康増進法によって院内での全面禁煙で、患者は一服も出来なくなった。

入浴の日、5分おきに安否確認で外から声掛けをされて、ささっと済ませて脱衣場に出てきた所を看護師にいきなり『タバコ吸った?』と聞かれ、ええー!?と驚いた。
吸う訳がない。
そんな悠長に過ごしてる暇も体力もない。
ただ久しぶりの湯船に少し浸かってて、ふと頭に甦った。
「嗚呼こういう隙に喫煙する人が居たよな」
その途端に疑われた。

自宅でも月に2回くらい、身体と散髪を別々の部位に分けてしか入浴なんか出来ずに、介護を受けていた私はヘルパーさんに身体介助をして貰いながら入浴をしていたほどだった。
自力で入浴を短時間でするなんて無理な身体だ。

それなのに、そういう細かい事情を何も知らない病院と看護師にそんなことを言われて、侮辱されたと感じ、なんてひどい言いがかりをするんだと憤慨と心外な気持ちがした。

「何で?」と聞き返すと、看護師は『そういう人が居るから』と言って、それでも自分がどうして疑いの対象になったのか信じられず「何でなの?」と聞き返したら、
『部屋がタバコ臭いって他の看護師から言われて』と。

「吸うわけないでしょう?吸ってないよ!」と答えた。
すると看護師は『トイレとかね、そういう所は探知機が付いてるからすぐ分かる』と、まだ続けた。
私は「いやいや、そんな所でなんか絶対しない!」と言い返したら、看護師は『ゴメン、本当に嫌な思いさせてゴメン』と謝ってきた。

謝って済む問題じゃない。

建物内でなんかもちろん、院内でも吸っていないものは吸っていない。
濡れ衣処じゃない。
でも信頼関係を大事にしないと穏やかな入院生活は送れない。
それは毎日、身体に直接触れられる行為と点滴という襲撃的行為に差し障りがあっては事故に繋がるからだ。
だから怒らずに「していない主張」を笑顔混じりにした。

そして翌日、朝の回診が終わって、天気の良い気持ちのいい朝靄の中を散歩したくて、テーブルに『考え事、散歩してきます』と書き置きをして外へ歩いていった。
ことのほか歩けて、表通りのバス停まで辿り着け、そこのベンチに座って休憩をしてた。

あ!と気が付いて、こんな離れた場所まで来ちゃったから病棟が心配する、一服して戻れば、また院内で喫煙したと疑われる!
そう思ったから、一旦は「またバカ正直にすると…」とは思ったが電話で所在を一応知らせておいた。

戻って「心配掛けるようなことして申し訳ありません」とちゃんと戻ったのをナースステーションに伝えて、その件は終わった、はずだった。

昼食のお膳が来て、さて食べようかと思ったら、9日間の入院中に一度も顔も見たことのない知らない男性看護師が突然部屋に入ってきて、『何をしてきたんだ?』と睨み顔で言ってきた。
「何がですか?何の事ですか?」と会話の脈絡の無さに訳が解らず質問したら、今朝の散歩のことだということ。

表情はニヤニヤと造り笑顔では居るが明らかに威圧的、高圧的な口調と態度だった。
穏やかにまた一から説明して、もうそれは未解決した話だと言っても、聞く耳なしで、四の五の言葉にならない言葉で要するに『勝手に病棟から出るな、喫煙するな』という事が言いたいのは聞き取れた。
でも最後に決定的な ”脅迫” の言葉を私に言った。

『明日退院だから、それまで荷物類渡して貰いましょうか!』

いくら何でもこれは穏やかではない、しかもベッドの上に座って居る患者にぐうっと押し迫り上から立ったまま接近して、4回も同じ態度をしてきた。

「いや、そこまでされなくても…」と、まだ穏便にと対処しようとしていたが、看護師は、
『そうすればねぇ』と言い、だめ押しに(取り上げられないからなのか)遂には『明日退院するまでは病棟からも部屋からも一切出ないと約束して下さい』とまで迫って来た。

私の穏便にのスイッチが切り替わった。

「いい加減にしてもらえませんか!これ以上、個人的な行動監視をしないで下さいよ!やめて下さい!」と精一杯抵抗した。

その看護師は会話の途中4回も『温かいお食事を中断させてスミマセン、どうぞ食べて下さい』と言いつつ繰り返し食事をさせずに押し問答をしてきた。

会話の最後に「これ以上そういう疑いや行動制限を強要するなら、明日まで待たずとも今直ぐに退院します!病院にとっても迷惑でしょうし、私も心外な思いをしてまでもう居たくないので」と追い払った。

ハラスメントや脅迫は、本人とその場に居合わせた人間にしか分からない。
それを逆手にやられたのだ。

怖かった。
すごく怖かった。

患者憲章がある。
それに私物を取り上げるような事は精神科病棟でもやむを得ない場合でなければしてはいけない。
それは人権や患者の尊厳で守られている立派な権利だからだ。

病棟内で火器の危険性を犯したなら仕方がない。
けれど、私はそこまで悪事を働くような、疑いを掛けられるような悪いことは何もしていない。

恐怖感でしかなかった。

だから、さっさと荷物をまとめて、直ぐにお姉ちゃんに迎えに来てくれ‼️とSOSを電話でした。
迎えに来て貰って、黙って病院を出て、お墓参りに行った。

人権侵害
男性看護師による脅迫
一方的な権利剥奪による強要

これは犯罪にも匹敵する行為であり、患者憲章を無視した立派なパワハラ、モラハラだ。
兎に角、死ぬか生きるかになった患者では多勢に無勢で、共同防衛の思想には勝ち目はない。

だから何も言わずに『脱出』した形の退院になってしまった。

分からない、その場の立場になったことのない人にしてみれば、
退院が決まったあと一日くらい、適当にやり過ごせばいいだけでしょうに、大袈裟なと思われるだろう。

でも私には、身体拘束までされるんじゃないかという恐怖感までになった。

看護学では、看護師としての業務遂行しか教えないのだろう。
自分達の業務遂行の安全と滞りなくスケジュールをするために、患者をどう誘導して、勤務時間内に終わらせるか?
それだけしか現場では考えられていない。

患者の心境なんて後回し。
辛さ、不自由さ、嫌悪感、そんなことを訴える患者は一羽ひとからげで『厄介者扱い』にされるだけだ。

だから患者は看護師に媚を売って、機嫌を損ねないように神経をすり減らして居るのなんか知りもしない。
分かっていても、いざとなれば、助ける側の自分達の優位性に傲っている。

だから、何も言わずに不良患者、今後の受け入れ拒否リスト入り患者にされるのを承知で強行した。
恐怖感を抱いて寝る、たった一日の夜が怖かった。

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