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レーウェンフックの顕微鏡

ここにひとつの器具がある。

 500円玉2枚分くらいの大きさの金属板にネジを数本組み合わせた部品がついている。
 金属板は2枚を貼り合わせていて、一か所に小さな穴が開いている。小さな穴の中には極小のレンズが挟み込まれている。

 手の中にすっぽりと収まるティースプーンくらいの大きさのこの器具が、顕微鏡だといわれても、にわかにはうなずきがたい人が多いだろう。

 しかしこの器具は17~18世紀にオランダのデルフトで微小な世界を観察し続けたレーウェンフックAntonie van Leeuwenhoek 1632~1723が自ら開発した顕微鏡なのだ。

 レーウェンフックの顕微鏡は、ネジを組み合わせた部品の先に観察したい試料をつけ、金属板の反対側から小さな穴に目を当てて覗くように観ると、驚くほどの高倍率で観察できる。




 レーウェンフックは専門の科学者ではなく、織物商人を営みながら生涯にわたって自作の顕微鏡でさまざまな微小なものを観察し続けた。その観察記録は随時イギリスの王立学会(Royal Society)に手紙で報告され、学会誌に掲載された。
 レーウェンフックはアマチュア科学者としては異例の王立学会正会員に選ばれた。その証明書を机に広げた誇らしげなレーウェンフックの肖像画がいまに伝わっている。

 同時代にはその功績が高く評価されていたレーウェンフックとその顕微鏡が、現在では(忘れられた、とは言わないまでも)あまり注目されず、知名度も低いのはなぜか?先行研究を紹介しつつ考察してみたい。

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