見出し画像

ゲーム翻訳者を目指す基礎講座っぽいみたいなアレ(2)

実は私は専門的なゲーム翻訳理論(あるんか?)を学んだわけではない。あくまでも先輩や仕事仲間から教わったことをここでキュレーション(横文字使うとそれっぽく見える)してるだけなので、今回以降はひょっとしたら私見が入っている可能性もなくはないので、まあこういう人もいるというレベルで読み進めてください。とりあえず「でぃすくれいみゃー」を書いて、訴訟リスクを回避しておこう。
※個人の感想です

直訳と意訳

ゲーム翻訳のトライアルでモヤモヤとするのがこれ。原文を直訳すればいいのかそれとも意訳すればいいのか。SNSでも時々話に上がって来ますよね。で、実際どうなんでしょう?

結論

結論。わかりません。以上。

あああ、座布団を投げないでっ!とりあえず落ち着きましょう、ね、落ち着きましょう。で、ちょっと考えてみましょう。そもそも直訳、意訳ってなんなのでしょうか?ちょっと定義を紐解いてみましょう。

直訳:[名](スル)外国語の文章を、原文に忠実に一語一語をたどるように訳すこと。
意訳:[名](スル)原文の一語一語にとらわれず、全体の意味やニュアンスをくみとって翻訳すること。

Weblio国語事典

ではゲーム翻訳においてはどちらが向いているのでしょう?この定義だけを見てみると、意訳が向いている感じがしますよね。そう!自分のクリエイティビティをフルに発揮してバンバン意訳をすればいいんだ!なんだ、ゲーム翻訳ってめっちゃ簡単じゃないか。トライアルなんか楽勝楽勝!ふふん、AI英語ライター講座に大金払っただけあるよね!今夜は前祝いのトンカツね♪ワインも開けちゃおう♪

昭和か。そもそも勝利を祈ってトンカツを食べるという風習はまだ続いているのだろうか。だがやはりこの意識高い系になろう系の誰かさんは自己中心的な考えをたたき直した方がいいな。クリエイティビティは否定しないし、むしろ推奨。推奨ではあるのだけれど、そこには一定の配慮が必要になる。

一人で仕事をしている訳ではない

翻訳はチームワークのお仕事。そして翻訳者は無双ではない。かのチョムスキー先生でさえ過ちは起こすのだ。なので翻訳された文書は別の人が確認を取ることがほとんど。それが理由かどうかは判らないが(そう主張する人も一定数存在する)、明確な意図のある一部例外を除いて、基本的には訳文は原文との語順をできるだけ変えてはいけない。どういうこと?まあこの例を見てみてちょうだい。

例文(イベントでのアイテム取得条件)
Get 100 EXP points to claim this reward.

和訳をする場合は大抵は以下のように和訳するかも。

この報酬を手に入れるために100EXPを稼ごう。

ちなみに、EXPはすべて大文字なので用語として使用されている可能性が高いので「経験値」とかに勝手に変えない方がいいかも(クライアントさんの確認が必要)。この和訳のどこがいけないのか。いけないわけじゃないのだろうけど、一般的にはこうは書かない。たいていの場合はこう書いている。

100EXPを稼いで、この報酬を手に入れよう。

なぜか。チェックする人(プルーフリーダーとかプルーフとか校正者とか呼ばれる)がチェックをしやすいからだ(と、私はある人から聞いた)。プルーフリーダーは前から順に原文と訳文を付き合わせて訳文の正しさを確認する。訳文の内容があっちゃこっちゃ前後してたら時間がかかってしようがない。
とゆか、きっともっと深い理由がある。そもそも原文を読む人は前から読んで理解しているはず。その理解の順番を変えてしまうのは翻訳の役割からズレてしまうんじゃないだろうか?
わかりやすい例を出してみましょう。たとえばジョーク。前振り→オチという構成になっている原文で、英文和訳のような文章にしてしまった時に、オチが先に来て前振りがあとに行ってしまうと、そもそもジョークとして成立しなくなってしまう。

翻訳は恋人の距離感

最近たどり着いた結論がこれ。そう、原文と訳文の距離感は恋人どうしの距離感に似ているのだ。近すぎるとぎこちなくなるし、遠すぎると疎遠になる。青年、付かず離れずの微妙な距離感を学ばなくてはならないのだぞ。
原文をそのまま逐語訳すると自然な日本語にはならない(近すぎ)。でも原文とかけ離れたチンドン屋みたいな和訳になると意味がわからなくなる(遠すぎ)。原文と構成はできるだけ変えない。ただし、その中での表現はクリエイティブに。翻訳してると感じさせない自然な日本語として読んで楽しめるようにする。それがエンターテイメントの王様であるゲームの翻訳者に求められるスキルなのです、きっと。

あー、そーゆーことね、完全に理解した

なんだそういうことか。簡単なことじゃないか。じゃあ今夜はトンカツでいいよね♪幸い今日は◯◯ダイで豚ロースがグラム98円の特売だ。早速出撃しよう。業◯◯ー◯ーではタマゴもLサイズ1パック171円だ。

でも、ちょっと待って欲しい。実は話はこれで終わらない。直訳がいいのか意訳がいいのか、そもそも結論すら出ていないんじゃなくって、奥様?その右手に持った薄紫色の買い物カゴをいったん置いて話を聞いて欲しいんだけど、今回はちょっと長くなりそうなので、続きはまた次回に。

つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?