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【読書日記4】『家康、江戸を建てる』門井慶喜

平成28年に刊行、30年に文庫化、ドラマ化もされた本だけど、たぶん当時読んでもチンプンカンプンだったに違いない。 日本史の知識は中学卒業くらいしかない私が、大河ドラマを見始めたのは数年前の「麒麟がくる」から。新しい明智光秀と織田信長像に度肝を抜かれ、それからというもの、俄然、日本史に興味が湧き、昨年の「どうする家康」ではこれまた斬新な徳川家康の姿に胸が躍った。今年の大河ドラマの吉高式部に魅了されながらも、現在家康ロス中。

直木賞作家である門井氏によるこの本では、秀吉から東へ国替えを命じられた家康が、というよりも、家康の家臣たちが江戸を整えていく様子が歴史的背景とともに描かれている。広がる荒野の水路を変えて、貨幣をつくって、白い壁のまちづくりを行なっていく。今も関東に残る公園や河川はこうやって作られていったのかと思うと感慨深い。この本を読んでいると、今から400年以上も前のことなのに、徳川家康の息遣いが感じられる。ドラマでもそうだったが、徳川家康は特別な才覚があるわけじゃない普通の人として描かれているからだ。わがままだし、感情的だけど、ほっとけない魅力がある。リーダーにはいろんなタイプがあるけど、家康のような人は、何か組織で問題が起きても、ちゃんと自分の落ち度を認めて部下に謝りそう。最近のニュースを見ながら、ますますこの本のメッセージが伝わるような気がした。

解説で、東京大学史料編纂所教授の本郷和人氏がこう書いている。
『高尚な夢や希望だけでは庶民の生活をすくいとる事はできまい。彼(=家康)の「生活への関わり」は。天守閣を築き上げながら、みごとに昇華されていく。新しい時代を「建てる」とは、まさにこういうことだろう。』白の天守閣にこだわった家康の想いを、今の時代に重ね合わせることもでき、それは、ドラマ「どうする家康」で伝えられたメッセージと同じ方向性だということが理解できた。「どうする家康」ロスの皆さんにもおすすめしたい1冊。



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