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スポーツビジネス第1世代 片桐氏が語るスポーツビジネスとは?

第5講では、東京ヴェルディeスポーツチームGMの片桐さんが登壇しました。

0から1のビジネスを創る』の仕事をされてきた片桐氏より、スポーツビジネスにおける各ステークホルダー間の権利関係理解なども含めた講義が行われました。

執筆:メディアプロモーショングループ: 高井 ろみた

講師紹介

片桐 正大

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プロ野球球団時代には、監督付き広報・マーケティング・営業など幅広く担当されました。その後、インドネシア、中国などでスポーツビジネスにも携わり、現在はeスポーツのフィールドで活動しています。

「ヴェルディカレッジは他の先生が素晴らしい。本流・王道・正道はその方々から存分に学べると思うので、ある意味異端だけど、僕しか伝えられない部分を“片桐的”スポーツビジネスとして、伝えます。今の時代、You Tubeでも学べる。」

講義冒頭、片桐さんはこのように述べました。最先端の内容をお伝えいただきます。

第1部 スポーツビジネスの起源

2002年にプロ野球ダイエーホークスに新卒社員として入り、スポーツビジネス第1世代とも呼ばれる片桐さん。学生時代もインターンという言葉も浸透していない時代にスポーツナビ・東京ヴェルディでのインターンを経験しました。『世界一ファンの多いプロスポーツチームを所有・経営すること』という夢を持っていたそうです。

そしてプロ野球界で活動する中で見聞きし、体験したその情報や師匠のお一人である故・広瀬一郎氏の教えから、スポーツビジネスの起源について、仮説を立てます。

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それは「コロッセオこそ、スポーツビジネスの起源なのではないか?」というものです。紀元前56年に、人口100万人を誇ると言われるローマに作られたコロッセオは、なんと6万人が収容可能な円形スタジアムでした。

そもそもなぜこんなものが建造されたのでしょうか?

その答えは、多くの場所に人を集めなければならなかったからです。
当時のローマ帝国は各方面に領土を広げながら成長していました。しかしその軍用費は市民からの寄付や税によって賄わなければならないため、皇帝は施政方針演説を行って市民に協力を仰ぐ必要があります。

多くの市民を動かすのは簡単なことではありません。そこで、人と人・人と猛獣の争いというエンターテインメント競技を前座で行い、そのさなかで演説を行うのです。これによって市民は「この皇帝がいるからこんな面白いものが見られる」と皇帝を支持し、寄付にも協力しました。

よってスポーツビジネスの起源とは、人を一か所に集め、集めた力を他に利用したコロッセオであり、それがスポーツビジネスの本質だという考え方を片桐さん

は語りました。

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また、サッカーの起源が世界中にある植民地の運営を担うイギリス貴族の子弟の教育機関である寄宿学校から始まっていることなどの事例をあげ、このことから、スポーツが持つ本質的な価値は集合効果、洗脳・教育効果にあると考えることができるということです。

私たち学生にとっては初めて聞く考え方も多く、非常に興味深い内容でした!

第2部 日本流の『国家×スポーツ』

第1部の内容の通り為政者、つまり国家が自らの権威を高めるためにスポーツを利用するというのは現代でも見られます。それがオリンピックです。世界各国が合法的に争い、勝ち負けをつけることで国民の愛国心・国家への支持を大きくすることができます。

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さらにオリンピックが国家にとっていいのは、為政者にとって都合のいいシーンを切り取って使用できるという点です。たとえ金メダルが獲得できなくても、「惜しくもあと一歩だった」と表現できます。メダルの数が少なくても、スポットと取り上げ方を工夫すれば国民の感情を動かせます。

しかし、オリンピックだけではありません。そのような国家とスポーツの密接な関係が、日本特有の性質で表されているのが国体です。国体とは国民体育大会のことで、競技ごとに国内で毎年1回開催される日本一を決める大会ですが、なぜそう言えるのでしょうか?

それは毎年国体のような大会を開いている国は少ないからです。多くの国はオリンピックに合わせて、4年に1回しか行いません。これによって実は日本のスポーツ界は、国民の反対なく、全国にスタジアム・アリーナのような大きな建造物を作り出すことに成功しているのです。
通常、スポーツイベントにしか使用できない建造物を税金で生み出すことは簡単ではありません。しかし、国として高頻度で各競技の最高峰の大会を開くことにすれば、建前を得られるということです。

自民党の55年体制下においてもこの関係が維持され、現在までの日本スポーツの発展に貢献してきたのです。

「事業の維持継続性を考える場合、公共投資からの支出を想定できると大変有利。スポーツも民間に頼るだけでなく、国家予算にいかに組んでもらうかが大切になる。予算に組み込んでもらうために、スポーツが国家の発展・国民生活へどう貢献できるのかを考えている。」

片桐氏は現にeスポーツの領域で、どうやって公立学校にeスポーツ部の設立を認めさせるか、そのためにどうやって企業から機材を提供してもらうかという問題を突破するなど、ビジネスマンとして活躍されている方です。そんな方から聞くこの言葉には、なるほどと感じさせられました。


上記の内容の他にも、日本での野球の発展から見るスポーツとメディアの関係や、片桐さんが中国で実践したサッカースクールビジネスの説明など、学生たちには新鮮で刺激的な講義が行われました。

課題

『新しい東京ヴェルディを人々に伝えるための動画を制作すること』

今回の課題は1ヶ月という期限で中期的に行うものです。ルールは『動画を制作する』ことと、『新しい東京ヴェルディを人々に伝えること』のみで、動画の時間やテーマなどの制限は設けられませんでした。非常に自由度の高い課題ですが、1~3人に分かれた合計10チームで挑みます。

課題の発表は7/14(火)の第10講に行われると決定しました。

まとめ

片桐さんはヴェルディ以外にも多くのeスポーツ事業を管掌されているため、なかなかこのようにまとまった講義をする機会がとれないとのことでしたが、今回はコロナ禍による外出規制の夜ということもあり、180分もの間深くお話いただけました。

その中で、まず初めにスポーツビジネスの起源について語って頂きました。このテーマについて考える機会があまり多くなかっただけでなく、古代ローマの時代まで遡ったことが意外で興味深い内容でした。

続いて国家とスポーツの関係について語って頂きました。国体があるから施設を建築しやすいという構造など、スポーツ・国家両方の持つ力を再確認しました。

次週第6講では、外部講師として帝京大学准教授の大山高氏をお迎えします。ヴェルディカレッジの元になったヴィッセルカレッジ創設者の大山氏から、どんな話を頂けるか楽しみです。

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