見出し画像

きもの着用季節の新常識

 6月は衣替えの季節です。きものでは単衣になります。温暖化が言われて久しい昨今、きもの好きの間では4月中旬以降は「今日何着よう」と悩ましい季節でもありますよね。そこで呉服屋の親父が本音で一言。

■まずは基本のルールを知ること

 分かりやすいように下の表にきもの着用の季節をまとめてみました。
 先ずは基本を理解してください。理解してアレンジすることは粋ですが、知らずに感覚だけでやると野暮です。

NOTEきもの季節

 表はあくまで礼装、特に茶席での着用時期であり、普段着においてはもう少しあいまいな部分もありましたが、30年~40年以上前、きものに拘りを持つ奥様方は、この約束事を頑なに守られたようです。又茶席では今でもこのルールに乗っ取っています。呉服店おいてもこの時代は、礼装の販売が中心で紬や小紋等あまり売れなかった時代。きものを楽しむというより、常識としてとらえていた時代なのかもしれませんね。

画像2

 30年程前"紗袷せ(しゃあわせ)"というきものが京都大手問屋が開発し販売されました。絽の付け下げの上に紗の無地を重ねた礼装で、お仕立ても非常に手間がかかるものです(昨今二重紗として販売されているきものとは別物)。おりしもバブル全盛期であり大きなブームとなりましたが、当時は5月15日から31日までに着用するきものとされました。
 7/1~8/31の欄に絽・紗と記していますが、厳密には紗は盛夏、7月下旬からお盆まで。又絽は礼装、紗はしゃれ着とされてきました。紗の付け下げや訪問着が出てきたのもここ20年程です。
 気を付けてほしいのが単衣のきものでも夏前と夏後で、帯や帯〆等小物類が変わってくること。又帯〆は元来夏物というものが無く、その昔は三分紐を使ってました。ざっくりとした帯〆が出てきたのはこの20年程。ですので通常の帯〆でも問題ありません。ただ涼感は大切してください。ブルーや淡いグリーン・白地等寒色を。赤やオレンジの暖色系は絶対避けてください。同時に帯揚げも絽のものが絶対ではなく寒色系のものならOKです。
 暑い季節のおきものは涼感が最優先。しかも自分が涼しいのではなく、その姿を見た周りの人が「涼しそうね」って、涼感を覚えてもらうこと。帯をいつもより小さめに結ぶことも大きなポイントです。
 長襦袢も工夫の余地ありです。麻や正絹の絽を早めに取り入れてみることを勧めします。半衿はその季節のものに付け替えて。肌着もゆかた用を使うと良いでしょう。ひと工夫で涼しくなりますよ。

■現代的着用季節

NOTEきもの季節2

 わかりやすいように一覧表にまとめてみました。全体を通して言えることはお昼のお出かけと夜のお出かけでは装いも変わるという事。5月までは昼と夜の寒暖差があります。昼暑くても夜はひんやりすることも。その日の気温で装を変える事が必要です。夜15℃位しかないのに薄手のきものでは逆に寒々しく感じます。
 又8月以降絽等の夏もの着る事、10月に入っても単衣を着ることは基本的にお勧めしません。それこそ野暮です。ファッションにおいて先取りは許せますが、おしゃれを楽しむには我慢も必要ではないでしょうか。
●単衣(礼装) 
 重い席でない限り5月上旬からお召になって問題ないかと考えます。ただし帯や小物類は通常のものを。夏帯は早すぎます。
 茶席でも先生によっては許可されることがあります。しかしお点前をされるとか正客が予想される場合さけてくださいね。
 ここ10年程単衣用の生地が次々発表されています。さらっとした着心地で、袷用のきものを単衣仕立てにしたものより、涼しくお召しになる事が出来るでしょう。
●単衣(紬・小紋)
 お友達とのお出かけ観劇等をお着物でする場合、単衣の紬であれば4月下旬からOK。何を着て行くか事前に打ち合わせすると良いかもですね。あるいは「早いと思ったけど暖かいから着てきちゃったー。」と先に言ってしまうと、気が楽になると思います。“知らないわけじゃないのよ”をさりげなくアピールしましょう。ここでも帯や小物は通常のものを。半巾帯でもいいかもしれませんね。
●絽
 ここで言う絽は付け下げや訪問着のこと。気温が30℃を超えるようであれば6月中旬位から可。濃地のきもの方がよりベターでしょう。
●紗・紋紗
 お洒落着の紗や紋紗も早めでOKでしょう。おきものを楽しむことが大事です。そのためにも堂々とふるまって下さい。

画像4


■最後に披露宴でのお召し物

 この時期の披露宴に呼ばれた場合のお召し物も、皆さん悩まれるところではないでしょうか。披露宴の場合式が和式・洋式にかかわらず、両家のお母様は黒留袖をお召しになるケースが多いと思いますが、ほぼ袷のものをお召しです。又花嫁が和装の場合も同様です。冷房もかなり効いており、寒くさえ感じますよね。季節に合わせた装いでももちろん良いのですが、袷の訪問着や振袖でOKでしょう。単衣や絽は、袷のおきものと比べるとどうしても軽く感じてしまいます。主賓やその同伴者で出席される場合、ご両親の黒留袖に合わせる意味合いでも袷のおきものでも良いのではないでしょうか。


 NOTE初挑戦でかなり気を使いながら書いてみました。これからもきもののことについて色々書いて行きたいと思っています。よろしくお願いいたします。
 最後までお読みいただきありがとうございました <m(__)m>

和collection美都 #きもの #和服 #きものレンタル  



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?