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パンダの涙にもらい泣き

テレビを観てはじめて泣いたときのことを、憶えている。

ただし、レナウン娘のCMをこわがって泣いたのは除外する。わたしはかなり小さい頃、当時のアパレル大手・レナウンのCMを観て大泣きした。おしゃれなお姉さんたちが踊る画面はなんとなく得体の知れない感じがした。そして、孫を溺愛する祖父はテレビ局に苦情の電話を入れようとして父に全力で止められたそうだ。

そういう「泣いた」ではなく、ここでは感動によって涙した経験を語りたい。

わたしを泣かせたはじめての映像作品は、パンダが主人公のアニメだった。

保育園児の頃だったと思う。日本にやってきたパンダが日本で死を迎えるときに、故郷を思い出してか「おかあさん……」とつぶやくシーンがあった。

もうパンダがかわいそうでせつなくてたまらなくて、涙がポロポロこぼれた。和室でごろんと横になって観ていたのだけれど、低い位置からテレビを見上げていた角度、視線を近くに戻したときにくっきり浮かび上がった畳の目を記憶している。畳って、交互に編んであるんやなあ、みたいなことを思った。

なにかを観て感動のために泣くという、最初の経験だった。泣いているところを母が冷やかすのが恥ずかしく、逆に父が「おー、よしよし」と頭を撫でてくれるのは心地よかった。

心動かされる快感を知ったアニメだったなあ、と懐かしく思う。あのときの感動を追いかけて本を読み、映画を観てきた。パンダの涙は、わたしにセンチメンタルの種を植えてくれた。

あれは『パンダ物語』というタイトルだったような気がするのだけれど、今調べてみるとアニメではない作品にしか辿り着けない。もう一度観てみたいのに。

1980年代に放送されたパンダのアニメ、どなたかご存じありませんか。


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