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考えてみるとおかしな話

 都市伝説が昔から好きだ。それも、大好きと言っていい。どこに惹かれるのかを説明するのは難しいけれど、都市伝説や怪談には人間の潜在意識みたいなものがうかがえるのが好きなんだろう。そんなわけで、自分で書いている小説にもなにかしらの怪奇現象を盛り込んだりする。

 初めて都市伝説を意識したのは、1997年のことだ。あの年には、神戸連続児童殺傷事件があった。当時の自分は中学校2年生で、犯人は自分より1学年上の少年、自称・酒鬼薔薇聖斗(今回の記事は別に少年Aについてのものじゃないけど、酒鬼薔薇聖斗って名前、まったくセンスを感じないよね……)。なかなか衝撃的な事件だけれど、自分が注目したのは少年犯罪ではなく、14歳の少年が逮捕される以前の報道だ。

 覚えている人も多いと思うが、この事件は少年Aが逮捕されるそのときまで、「黒いバンに乗った体格のいい男」が犯人だと盛んに言われていた。しかし真犯人が中学生という衝撃のため、この「黒いバンに乗った体格のいい男」の話はまったくなかったことにされた。当時、「私も体格のいい男を見た」という証言まで出たのが嘘のようだった。自分はここに、一種の集団ヒステリーの奇妙を見出した。それ以来、噂話が持つ人間の不思議に魅了されている。この「体格のいい男」の話は友達に話したりXに投稿したり自分の小説に登場させたりもした。

 そしてここからが本題。それは、人間は誰しも「体格のいい男を見た」という一種の記憶の錯誤や、「よくよく考えると変だな」という体験があるのではないかということだ。そこで今回は、自分の中の「あれ、この話はなんか不思議だな」を書いてみようと思う。

祖父が説明してくれたお化け煙突

 東京都足立区千住桜木町にあった千住火力発電所の4本の煙突は、見る角度によって煙突が重なり合うため2本、3本に見えたりする。自分はそのお化け煙突が3本になり、2本になるところを電車から見て、祖父から「これはお化け煙突って言うんだぞ」と説明された記憶があった。これは祖父とのもっとも古い思い出なのだが、この記憶は変なところしかない。
 まずなにより、千住火力発電所は自分が生まれるよりはるか以前の1964年までしか存在していない。さらに、祖父が自分を連れて電車に乗っているというのもおかしい。自分の記憶ではお化け煙突の説明をされたときは祖父と2人きりだったのだが、祖父と会うのはいつだって祖父母が住む団地だった。祖父と自分が2人で外出をしているというのは、こがわ家ではちょっとありえない。
 祖父が亡くなった際、自分はこのお化け煙突の思い出話を父親にした。そこで父親に「お化け煙突はゆうじろうが生まれるより前になくなったぞ」と言われて、自分はようやくこの記憶が変だということに気付いた。あの記憶は、なんだったのだろう。

東日本大震災があった日の自分

 東日本大震災があったのは2011年3月11日の金曜日の午後だ。これは今でも謎なのだが、自分はあの地震が起こった際、自分の部屋で『小島慶子のキラキラ』というラジオ番組を聴いていた。しかし当時の自分は会社員、そして勤めていた会社は金曜日にいろいろとやらなきゃいけないことがあるので、有給休暇はいつも月曜日に使っていた。土・日・月の3連休のために有給休暇を使っていたはずなのに、なんで自分はあの金曜日に自宅にいたのだろうか。これは自分にとってはかなり不自然なことなので、本当に今でも「なんでだろう?」と思っている。

 長くなるのでここまでにするが、本当は他にも宮崎勤が逮捕された際の記憶とか、テレビを持っていない頃だったのになぜか手に汗握って野茂英雄の2度目のノーヒットノーランを観た記憶とかいろいろある。
 自分はこういう経緯のわからない体験が本当に好きだ。だからこそH・P・ラヴクラフトや京極夏彦を読むし、他人のそういう話を聞くのも大好きである。

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