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ホタルっていう漢字は、『蛍』よりも『螢』のほうが好きなんです、昔から。なんか螢のほうが光を感じられませんか?(私だけかな)

実際に、自分の目で螢を見たのは、小学校の低学年の頃だったと記憶しています。
おばあちゃん家に遊びに行った夜、少し離れた所に、叔父ちゃんが連れていってくれました。
真っ暗だったので、周囲の風景はあまりよく分からなかったけど、小川(小さな流れの用水路だったかもしれません)と、草が一面に生えていました。ただの草ではなくて、生育した稲で、そこは田んぼのように思えました。
あれは、夏の夜だったのかしら。

気がつくと、周りには、淡い緑のような黄色のような光がゆっくりと点滅していました。
ふうっと光って、その光が少し流れていって、すうっと消えていきました。
歩き回ったり、捕まえようとしたりもせずに、私はそこに佇んで、その光景をずっと見ていました。
とても美しい、幻想的な景色でした。

おばあちゃん家に戻って、寝るとき、蚊帳を吊りました。
いつ捕まえたのか、蚊帳の中には螢が放たれていて、ほんのりと光っては消える螢を目で追いながら、眠りに就きました。
朝起きると、蚊帳はもう取り払われていて、螢もいませんでした。
「螢、どこ行ったの?」と聞いたけど、親類は誰もそのことに言及しませんでした。

大人になって、まだ実家にいた頃ですが、仕事から帰ってきて、物置に自転車をしまおうとした時、庭の蓮池のほとりを綺麗な光が尾を引くのが見えました。
「え?螢?まさか」と思いました。
螢の生態のことはよく知らないけれど、確か、きれいな川とかで生まれ育つんじゃなかったっけ?と思いました。こんな蓮池にいるわけない。
でも、よく見てみると、やっぱり螢でした。ナニ螢かは分かりません。
どこから来たんだろう。
ちゃんとした水辺に辿り着いてね。
そう思いながら、しばらく螢の光を見ていました。


後年、ある映画に出会いました。邦画です。
姉妹が夏のお祭りの夜、川辺で螢の光に包まれる描写があって、それがとても綺麗でした。
私にとっては、何十年ぶりかの螢の光景でした。
ストーリーも心に沁みてくるものがあって、何回も映画館に足を運びました。
DVDが発売されると、購入して、美しい物語に静かに身を浸しました。

数年後、また別の映画で偶然、螢を見る機会がありました。いつ見ても、映像で見ても、螢って綺麗。

いつかまた、自分の目で、実物の螢を見てみたいです。そういうツアーがあるかな。
無くても、自分で調べて、計画を立てようと思っています。想像するだけでも、楽しみです。


子どもの頃に螢を見た辺りは、もう住宅街に変わっていて、螢がいた面影もありません。

あの儚い光をこの目で見ることができて、包まれることができて、ほんとうに良かった。


では、また明日。
読んでくださって、ありがとうございました。
おやすみなさい。

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