柔らかい彼のことを、想う日
以前、彼に会ったとき、『夏目友人帳』を一緒に観て、その帰り道、彼がポツリと言いました。
「夏目友人帳って、ああいう、淡々とした、優しい世界観なんだね」
エレベーターを降りて、マンションから出て、歩いているその間、彼はひとりで『夏目友人帳』について考えていたみたいでした。
私は、彼のひとりで考えて、心の芯に灯をともして、受け容れていくそういう感じが、とても好きです。
彼の心の奥の奥に、『夏目友人帳』が届いて、彼がページを開こうとしている瞬間に立ち会えた、ということが、私にはとても嬉しかったのです。
彼は詩が好きだったり、絵を描いたりするひとで、とても心が柔らかくて、美しいものに敏感です。
ある歌を贈ったときも、「自分もこういう歌詞、好きです。胸を打たれました」と返信をしてくれて、素直な心を伝えてくれる彼に、私のほうが胸打たれました。
また、私が好きな椿を、「この子たち、好きなんだ」と伝えたときも、「わぁ、綺麗だね」と応えてくれました。
「ふ〜ん」とか「へぇ〜」とか、どこか他人事で一線を引いたような無関心な返事を、彼は一回もしたことがありません。
いつも、「うん、そうだね」と、心を開き、寄り添ってくれます。
その共感性の高さが、彼の優しさの原点で、彼がたくさんのひとに囲まれている理由なんだな、と思っています。
「夏、また花を見に行きましょう」と次回の次回かの予定を、私と一緒に花を見ることを楽しみに思ってくれている彼の気持ちが嬉しくて、私はなんだか涙が溢れてしまうのです。
私はいつも、彼に護られています。
電車に乗っている際も、座れるときは並んで座りますが、混んでいて立っているときは、私をドア付近の隅に置いて、自分が盾になって、私が他のお客さんと接触しないようにガードしてくれます。
また、ベッドに入っていて、私が布団から肩や腕を出していると、そこに触れて、「ああ、冷たくなっちゃった。温めなきゃ」と言って、私の身体を両腕で包み込み、体温を移そうとしてくれます。
心のなかの芯から、大切に扱ってもらっているのを感じます。とても嬉しくて、感謝の気持ちでいっぱいになります。
以前は、私はお寿司が食べられませんでした。
どんなに新鮮でも、食べた後、戻してしまうのです。
まだ築地市場だった頃、場外のお寿司屋さんで食べたときも、そのときは美味しく感じるのだけど、30分も経つと、嘔吐してしまっていました。
でも、不思議なことに、彼とデートでお寿司屋さんに通うようになってから、私は吐いてしまうこともなくなり、お寿司が大好きになりました。
これも、たぶん、彼の持っているエネルギーが、私を『大丈夫』にさせてくれたのだと思います。
「彼と結婚しないの?」と友だちに尋ねられたりするのですが、たぶん、私たちは結婚というかたちには向かわないだろうな、と思っています。
彼はA型さんで割と几帳面で、綺麗好きさんです。
もし、結婚したら、私はかなりの無理をして(無意識に)、彼のためとはいえ、たぶん相当に動き、消耗してしまうと思います。
彼はおそらく、私に無理をさせないように、してくれているような気がします。
私の病気のことを、先回りして、考えてくれているのだと思います。
夢は、描けるのです。
彼のためにお買い物に行き、献立を考え、調理をする。彼が居心地が良いように、家を清潔に保ち、仕事から帰った彼をお迎えする。
毎晩彼の隣で眠って、同じ朝日を浴びる。
そんなふうに暮らしていけたら、どんなにか素敵だろう。
でも、それは夢。
私のなかでは、とてもとても遠い夢。
見ていれば、いつか叶う日が来るかもしれないんだけど。
私と彼は月イチのペースが、きっとちょうどいい。
それが、私と彼の、暗黙の共通認識で、距離感なんだろうな。
このままで良いな。
ずっと、二人で、寄り添っていたい。
彼に愛を注げる存在でいたいし、彼のために笑顔でいたい。
ずっと、これからも。
読んでくださって、ありがとうございました。
また明日。
おやすみなさい。
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